働き方改革が進むなか、新型コロナウイルスの感染拡大によって社会が目まぐるしく変化しています。転換期が訪れようとしている女性の働き方について、テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターと一緒に考えてみましょう! BAILA読者のみんなは どう働いている? 本音は?
1.withコロナ時代、アラサー女子はどう働いている?
BAILA読者のみんなはどう働いている? 本音は? 【137人にアンケート】
在宅勤務が定着して、結婚後も家庭と仕事を両立できるかもと考えが変わってきた(30歳・人材)
もっと自由に働き方を自分の意思で選択したい(39歳・金融)
負担のない範囲で今自分ができることを最大限にやりたい(31歳・サービス)
今の会社を辞めざるを得なくなったら何をしようか考えるようになった(34歳・メーカー)
コロナ禍で収入ダウンしたけど、副業していたおかげで助かった(31歳・食品)
どんな業界でも絶対はないのだなと。生き抜く力をつける必要があると感じた(34歳・金融)
目まぐるしく変化する世の中でこれから長い人生、自分が幸せに働き続けられるのか漠然と不安(32歳・建設)
(※アンケートは2020年11月に集計したものです)
Q 2020年働き方に変化がありましたか?
Q その変化によって、仕事の満足度はどう変わりましたか?
Q 現在はテレワークをどのくらいしていますか?
Q 副業をしていますか?
Q今後、働き続けていくうえで不安はありますか?
Q 今の勤務先でこれからもずっと働きたいですか?
Q スキルアップのために何か実践していますか?
2.大江麻理子キャスターも変わった!withコロナ時代の女性の働き方
大江麻理子(おおえ まりこ)
テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。
【大江さんが選ぶ】振り返るべき働き方のニュース
2015年6月
政府が、2020年に男性の育児休業取得率を13%にするという目標を掲げる
「日本再興戦略2015」にて閣議決定されたが、2020年7月に発表された2019年度の男性育児休業取得率は7.48%。過去最高とはいえ目標達成は厳しい結果に
2016年4月
安倍政権のもとで、女性活躍推進法が施行
「女性が輝く社会」を目指した安倍政権。国や地方公共団体、民間企業に、女性が働きやすい環境づくりを求める法律が10年間の時限立法として施行された
2019年4月
働き方改革関連法が施行
働く人が多様な働き方を自分で選択できる社会の実現のために働き方改革が始まり、長時間労働の是正などの制度が大企業で導入。中小企業は’20年4月~
2020年4月
「同一労働同一賃金」本格スタート
正社員や非正規などの雇用形態に関係なく、業務内容に応じて賃金を決めることで不合理な待遇差を解消する制度が大企業で導入。中小企業は’21年4月~
コロナ拡大で緊急事態宣言発令。テレワークが一気に普及
「コロナ禍で、結果的に働き方の選択肢は増えています」
働き方改革が進むなかで起こった新型コロナウイルスの感染拡大。今、女性の働き方にはどんな変化が?
「まず、働き方改革の一環として同一労働同一賃金制度が導入されたことが大きな変化ですね。正社員と非正規雇用労働者の不合理な待遇差をなくす制度です。人手不足の深刻化から、優秀な非正規の人材を正規雇用に切り替える企業が増えています。その対象に女性がなっていることも多いですね。ただ、雇用環境が上向くいい変化のなかでコロナ禍となってしまったため、業種によっては雇用が大幅に減少しています。需要が減った業種で働いていた人が、ニーズのあるほかの業種に移動できるかが、今後の雇用の課題と言えます」
アンケートでは、テレワークを働き方の変化に挙げた読者が多数。
「コロナ禍でのテレワークの拡大は、まさに大きな変化です。家事と仕事のバランスがとりやすくなった読者の声が多くありましたね。場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の選択肢が、仕事や生活の質を上げる一助になっている人もいるでしょう。また副業が増えている傾向もあります。もともとの職業での収入減を補填するためや在宅勤務によって生まれた時間を有効活用したいためなど、さまざまな理由があるようです」
コロナをきっかけに、働き方の多様化が加速したのでしょうか?
「『感染を防ぎながら持続可能な働き方をするには、事業を継続していくには、どうすれば』と世の中が必要に迫られて働き方を多様化していった部分はあると思います。それによりいろいろな事情を抱えている人が労働市場に参加しやすくなったという意味では、結果的にコロナは労働市場の間口を広げることになったと言えます。働き方改革の流れとともに、働き手にとっては働き方の選択肢が増えて、仕事がしやすい社会になりつつあるのではないでしょうか。大きな変革を受けて、より自分らしい働き方を追求できる環境になっていくといいなと思っています」
「変化の激しい時代でも自分次第で心地よく働ける」
激動の時代において、変化に柔軟に対応するため大江さんが心がけていることとは?
「『無理かもしれない』『怖い』といったネガティブな感情から入らないようにしています。『どうすればできるか』とポジティブな言葉に置き換えて想像すると、そのイメージに近づいていく気がするんです。先の見えない時代ですので自分が思ってもみなかった境遇に身を置かれることもあるかもしれませんが、そんななかで環境を自分にとって心地のよいものに近づけられるかは、自分の考え方や行動で変わってくると思います。私の場合、脳内のポジティブなイメージが自分を支えてくれていますね」
多くの読者から先の見えない社会で働き続けることに不安を感じるという声が。
「この状況ですから誰でも不安をお持ちだと思います。ただ感情に揺さぶられているだけでは事態が打開できないので、冷静に情報を収集することを心がけてみるとよいと思うんですね。自分の収入や会社への不安を埋めるために副業という選択をしたり、転職を真剣に考える人も増えています。コロナによって業績が落ち込む業種や企業がある一方で伸びているところもあるので、時流をきちんと把握することがまず重要です」
世の中を知ることに加えて、自分を知ることも必要と語る大江さん。
「目の前のことに丁寧に取り組む。それを積み重ねていくことを私は大切にしています。目標が遠すぎたり大きすぎたりすると、たどり着くのが大変。でも近くの小さい目標なら一つひとつクリアしていくことができます。それは自信につながり、経験を通して自分との対話を繰り返すことで、『自分に向いていること』や『自分はこういうものが好き』といった自己分析ができていくと思うんですね。働き方の選択肢が増えた今、自分がどういう生き方をしたいのかを見つめて選択するために『自分をよく知る』ことがこの激動の時代には必要だと思います」
大江さんにとっての「小さな目標」は毎日の『WBS』のオンエア。
「その日のオンエアに全力で集中して、みんなで作り上げる喜びを共有し、前向きに次につなげていく。そういったところが楽しくてここまで続けてこられた気がします。働くことをお金を得るための手段としてだけ考えたら苦痛かもしれませんが、自己実現の手段、大切な人間関係、知的好奇心、誰かの役に立つ喜びなど、仕事を通じて得られることがきっといろんなシーンであると思うんですね。そういう楽しみを見つけながら私は日々を積み重ねています」
大江さんの働き方は変わりましたか?
3.自分らしい働き方を選ぶための5つの心得って?
ゲスト講師
キャリアカウンセラー
藤井佐和子さん
(株)キャリエーラ代表。延べ13000人以上の女性向けキャリアカウンセリングを行う一方、企業へのダイバーシティ研修やスキームづくりの支援、講演など幅広く活躍。
これからは…選択肢が増えて主体性が問われる時代に!
「今後は働き方の選択肢が増えていくので、そのなかで『自分がどう働くか』を自分で決めていかないといけません。主体性がないと選択肢がありすぎて決められず困ってしまいます。正解がひとつではない時代だからこそ、自分の軸を持って自分を信じられることが大事。自分軸をつくるためには、考えすぎずに多くの経験を積むことです。
人材の流動性がますます高まるので、職務経歴書に何社も書いてあるのが必ずしもマイナス評価にはなりません。何かのスペシャリストになる以外にも、専門性の異なるさまざまな仕事を経験することでオンリーワンの人材になるというのも強いと思います。転職をせずとも、今働いている会社でできることを増やすのもよし。ライフステージに合わせて働き方を自分で選び取れる時代になっていくと思います。
主体性を持って自分らしい働き方を選ぶための心得は大きく5つあります。人生を幸せにする行動。それは、自分で決めて、自分で一歩踏み出すことから始まります!」
【持っておくべき心得1】引き出しを増やして自分なりの軸をつくるのが30代!
【持っておくべき心得2】変化の激しい時代に対応できる、柔軟な自分でいる!
「自分の気持ちや体力、ライフステージ、世の中の価値観、職場での期待の変化を見ながら、仕事とのつきあい方を変えていくのが長く働き続けるための秘訣。社会情勢も、勤め先の会社の方向性もどんどん変わっていき、企業の吸収合併も盛んな中で、いつまでも過去の価値観や働き方、仕事のペースにしがみついていては取り残されてしまいます。これだけは譲れないという自分の軸とバランスをとって、時代とともに自分をアップテートしながら、しなやかに働いていきましょう」
【持っておくべき心得3】完璧じゃなくても、希望を口に出すようにする!
【持っておくべき心得4】セルフマネジメント力を身につけておく!
「テレワークが普及しフリーランスや副業も増え、セルフマネジメント力が不可欠に。自己管理にはタイムマネジメント、健康管理、やる気や感情のコントロールがあります。特に自分なりのモチベーションスイッチや感情のクセを見つけておくことが大切。自分の変化に気づくために、たとえば『毎日5分でもいいからお風呂につかる』など、自分と向き合うルーティンを持つといいですよ」
【持っておくべき心得5】仮でいいから、具体的な目標を常に持っておく!
4.withコロナ時代の働き方、大江麻理子さんと藤井佐和子さんがアンサー!
大江さん&藤井さんがみんなのお悩みにアンサー
【悩み1】
転職したいのですが、求人数が少なくて悩んでいます(32歳・不動産営業事務)
【藤井】
今は求人数が少ない職種とそうでない職種には大きな差があります。多くの企業がデジタルシフトを見据えているので、事務職の求人は少なめです。今の仕事の延長線だけでなく、ステップアップできる職種にチャレンジするのもいいかもしれません。
【大江】
不安を解消するためにもまずは情報収集を! おすすめは、景気ウォッチャー調査。内閣府のHPで誰でも見られて、地域別にさまざまな業種の人がどんな景気の肌感覚を持っているかがわかり、参考になるはず。
【悩み2】
若いころは目標を持って働けたのに、30代になり、コロナ禍もあって何のために頑張るのかわからなくなりました。「いい企業」とは、出世の意味とは……。最近わかりません(34歳・メーカー)
【悩み3】
自分の仕事がAIに奪われていく仕事といわれているので、将来心配です(33歳・商社事務)
【大江】
AIに奪われない仕事といわれる、感性を使った仕事を自分がしたいのかどうかを考えてみるのが第一。したいと思うのであれば、そのために自分の興味がある分野について勉強したり、自分の引き出しを増やす作業をコツコツ続けておけば、いざというときにほかに選択肢がある自分になれるかもしれないですね。
【藤井】
心配なら、勤め先が急にデジタル化を進める前に、今のうちにキャリアチェンジを視野に入れましょう。転職のほか、社内での部署異動や職種転換でかなえるという選択肢もありますよ。
【悩み4】
人生100年時代などといわれ、いつまでも働かなくてはならない世の中になっていきそうで怖いです(34歳・小売)
【藤井】
おっしゃるとおり、先は長いので健康に気をつけないといけませんね。長く働くうえでは、「年を取ってから世の中に必要とされるか」がすごく大切。周囲から必要とされる素敵なおばあちゃんになるために、今から自分ができることを増やしていく、自分に投資するといった行動が必要ですね。
【大江】
これからそうなっていくのではなくて、「いつまでも働かなくてもいい人がいた世の中だった」ということでしょう。これまでも自営業の方など生涯働き続けている人はいましたし、日本の歴史のなかでも、多くの人が定年後に退職金と年金で暮らしていける時代が長くあったわけじゃない。少子高齢化が進む中、状況が変化するのも自然の摂理です。いつまでも働きたくなければ老後までにお金を残す選択肢もありますし、すべて自分の行動にかかっているんだと思います。
【悩み5】
これから出産・育児をしていきたいのですが、そうすると管理職にはなれないのではと悩んでいます(37歳・広告)
【藤井】
まずは今の自分の状況でどう両立できるか考えてみましょう。そこで大切なのは、100%一人で頑張ろうとしないこと!今のうちから子どもがいる同僚の力になるよう積極的に動くことで、将来お互いがサポートし合える体制を職場で築いておくのも手です。
【大江】
自分のキャリアの選択肢に管理職を入れていない人も多い中で、あなたは管理職を視野に入れている時点で、チャンスが大いにあると思います!育児をしながら働くことに不安を抱く女性が多いというのは、本来社会が解決すべき課題。社会全体でどんなサポートが必要かを真剣に考えていかないといけませんね。
【悩み6】
何かスキルアップしたいのですが、これからはAIによって語学力は必要なくなるという記事を読んで、英語学習のモチベーションが下がっています。何から始めたらよいですか(37歳・メーカー)
【藤井】
「何かスキルアップしたい」から始めず、自分が純粋に興味のある分野や、仕事をしていてこの知識が足りないなと思ったことを学ぶといいんじゃないでしょうか。スキルアップ=勉強でなく、必要なのは経験かもしれません。目の前の仕事ができるようになることも立派なスキルアップです!
【大江】
英語はあくまでツールですので、英語で誰とどんな話がしたいのか、自分のどんな仕事に生かしたいのかを考えれば、モチベーションにつながると思います。
撮影/中田陽子〈MAETTICO〉 イラスト/小迎裕美子 取材・原文/佐久間知子 構成/松井友里〈BAILA〉 ※BAILA2021年2月号掲載
【BAILA 2月号はこちらから!】