コロナ禍で生活ががらりと変わったことや、30代という心身がゆらぎやすい年齢も重なり、最近、気分の落ち込みを感じている人が多数。落ち込みやすさの原因を公認心理師にお聞きし、5つのメンタル回復法をレクチャー!
バイラ世代に聞いた心の落ち込みに関するアンケート
最近、落ち込みやすくなったかどうかや、落ち込む理由、コロナ禍で増えた感情などをアンケート調査。その結果をご紹介。
【2021年5月17日〜24日、BAILAメルマガ会員にアンケート。206人が回答】
Q.最近、落ち込みやすくなったと感じますか?
最近、今までよりも落ち込みやすくなったと「とても感じる」という人と、「どちらかといえば感じる」という人を合わせると、69%と全体の7割近くに。かなり多くの人が、多かれ少なかれ落ち込みを感じていることが判明。
Q.どんなことで落ち込むことが多いですか?
(複数回答)
落ち込む理由は、仕事についてが1位。在宅ワークで、今までにはなかった問題が増えたことも関係しているかも!? 続く、自分の容姿、お金のこともバイラ世代にはつきものの悩み。コロナ禍の影響か、病気や体のことで落ち込む人も多数。
Q.コロナ以前よりも感じることが増えた感情は?
(複数回答)
コロナ以前より増えたのは、やはりネガティブな感情ばかり。最も多いのが不安で、コロナ禍で先行きが見えず、仕事の不安や、人とつながれなくなった不安など、様々な理由で不安を抱え、それにより落ち込みを感じる人も多いようだ。
最近どんなことで落ち込みましたか?
「コロナで、これまで軌道に乗っていた業務がすべてストップ。明るい未来が見えていたはずなのに、何も見えなくなって、仕事をするのがしんどくなりました」(39歳・事務職員)
「否が応にも人間関係が整理されてしまい、今までわりと仲いいと思っていた人と疎遠になってしまったこと」(29歳・私大職員)
「以前は週2でパートナーと会っていたが、コロナ禍になって月1以下の頻度に。久しぶりに会うと、嫌な面ばかり目につくようになったり、せっかくのデートでもダラダラされてしまって特別感がなくなって、なんでつきあっているんだろう? と思ってしまうことも」(30歳・マーケティング)
「これまでのように友達と会うことができなくなり、家で価値観の合わない家族とともにいる時間が増えてつらい」(34歳・フリーランス)
「リモートワークが増えて、上司や同僚とうまくコミュニケーションがとれず仕事が進まないこと」(36歳・不動産)
「仕事量が増えキャパオーバーしているけれど在宅勤務が多く、自分の忙しさが伝わらない。コロナ禍でも計画超えの売り上げを出したが、さらに上積みした目標値を提示され、もう頑張れない・退職しようと思った」(30歳・事務)
「ちょっとした仕事のミスや忙しくてどうしようもないとき、今までは同期や先輩に話して気持ちを浮上させていたのに、リモートになり、そういった会話ができないこと」(29歳・会社員)
「もともと自分から友達に連絡をするほうではなかったけれど、新型コロナウイルスの流行でますます遠ざかってしまい『私は一人だなあ』と感じることが増えた」(30歳・事務)
「仕事において、口頭で聞けばすぐにすむ内容を、文章にして確認しなければいけなくて、イライラ。うまく伝わらなかったり、あらためて聞くという作業が負担。また、定時が何時かわからず、オンオフなく働いてしまい携帯のバイブ音もストレスに」(27歳・ITコンサルタント)
《30代という年齢、自粛・マスク生活》今は心が落ち込みやすい時期
30代という年齢や、自粛・マスク生活は、心を落ち込ませる理由がたくさんあるそう。その理由や、落ちたメンタルを回復する方法を、公認心理師の山名裕子さんに伺いました。
他者との比較や、人と話す機会の減少、生活リズムの変化などが心を不安定に
20代の頃は何も考えなくても楽しくやっていたのに、30代になってから急に落ち込みやすくなったという人が多数。
「30代になると、結婚する人、出産する人、仕事で活躍する人など周りの人と道が分かれていくため、焦りを感じる人が多いようです。特に、“人からどう見られるか”が自分のモチベーションになっている人は、“友達が結婚したから自分も早くしなきゃ”などと常に人と比べてしまうため、自分の生き方が正しいか見失い、心が不安定になりがち。また、30代半ばを過ぎると、女性ホルモンの分泌量が減り始めたり、体力が衰え始めて老化を感じ、それによって落ち込む人もいます」
そんな年齢的な落ち込みに拍車をかけているのが先行きの見えないコロナ禍。
「人と話すことには浄化作用や、思考の整理などの効果があるのですが、自粛生活で人と話す機会が激減し、悩みを一人で抱えて孤独感を感じ、落ち込む人が増えています。また、在宅ワークによって生活リズムが今までと変わりましたが、生活の変化は心身に大きなストレスとなるので、それも落ち込みの原因に。自宅にいてSNSを見る時間が増え、他人が楽しそうにしていることをうらやんだりと、余計なストレスを増やしている場合も。さらに、マスク生活で、メイクが楽しめないことや、肌荒れや息苦しさを感じたりといったことも落ち込みの要因です」
落ち込みを減らすには、電話などで人と話す機会をもつ、生活リズムを整える、そして他者と比べず、自分の本当の気持ちに目を向けることだと山名さん。以下の5つの方法も実践して、心を前向きに。
今からできる5つのメンタル回復法
泣く時間をつくる
泣くことにはストレスの発散効果が。翌日は笑顔をつくって
「大人になるとあまり泣かなくなりますが、泣くことはストレス発散になります。つらいことがあったら“今日は泣く日”と決めて、思い切り泣く時間をつくりましょう。泣ける曲を聴きながら泣くのもいいと思います。そして翌日は、口角を上げて笑顔をつくると、気持ちが切り替えられて前向きになれますよ」
悩みや考えを紙に書き出す
書き出すと脳が整理され、書いた紙を捨てればスッキリ!
「悩みや不安、愚痴、不満など、自分の心の中のネガティブなことをすべて紙に書き出してみましょう。これは心理学用語で“ジャーナリング”と言い、書く作業は脳と連動していて、書き出すことで脳が整理されていきます。そして書き終わったら、紙を丸めてゴミ箱に捨てます。これだけで心がスッキリ!」
マインドフルネスで思考を手放す
体に意識を向けて“今ここ”に集中すれば不安感を減らせる
「不安があると、まだ起こってもいない未来に思いを巡らせ、さらに不安になるという悪循環に陥ります。これを防ぐため、“今ここ”に集中するマインドフルネスで思考を手放して。歩くときにキレイに歩くよう意識したり、利き手と反対の手で食事をしたりするだけでOK。意識が体に向き、思考を手放せます」
疑似体験で環境に変化をつける
映画などを見て別世界に入り込むと心のリフレッシュに
「旅行に行くと気分がリフレッシュするように、環境を変えることは心の状態を変えられる手軽な方法。ただ、現在は旅行にも行きづらい状態なので、おすすめは、家で映画や海外ドラマなどを見ること。別世界に入り込んで擬似体験をすることで、自分の悩みが小さく思えたりして、リフレッシュできるはず」
自分ではない誰かにりきって考える
ポジティブ思考の人になりきると思考の幅が広がる
「一人で悩んでいて煮詰まったら、自分でない誰かになりきって考えてみましょう。できるだけポジティブ思考の人になりきるのがおすすめ。“あの女優さんならこんなときどう考えるかな?”“友達のA子ならどう対処するかな?”などと考えてみて。思考の幅が広がって、落ち込みから脱出しやすくなります」
公認心理師
山名裕子さん
東京に、自身のメンタルケアオフィス「やまな mental care office」を開設。心の専門家としてメディア出演をはじめ幅広く活動中。
イラスト/真吏奈(marina) 取材・原文/和田美穂 構成/田畑紫陽子〈BAILA〉 ※BAILA2021年8月号掲載