仕事を頑張るバイラ世代に多い生理まわりの悩みをピックアップするなら、PMSもその代表のひとつ。人それぞれの症状について、医師に相談する隔月連載、今月は気分の変動のお話です。
今月のお悩み
毎月、自分じゃないと思うほどに気分が落ち込むときがあります。
ちょっとした仕事の失敗でも涙が出て「自分なんかだめだ」と責めたり……。かと思えば攻撃的にもなって、会社でほかの人の雑談がうるさく感じてイライラしたり、 パートナーに当たってしまったりもします。気分の波が激しく、自分でも疲れてしまいます。(34歳・商社営業)
産婦人科医
尾西芳子先生
女性のヘルスケアを専門とし、都内クリニック院長を歴任。現在は二人の子どもを育てながら都内クリニックにて勤務中。すべての女性のかかりつけ医でありたいとの思いで診察を行い、わかりやすい解説で雑誌、テレビのコメンテーター、ドラマの医療監修などとしても活躍中。
先生からのお答え
生理前はセロトニンなどの物質が減り、気分のアップダウンが激しくなります
PMSについて正しく認識し、不安を解消していきましょう
「毎月生理前になると気分が落ち込んだり、涙もろくなったり、イライラしたりするのはPMS(月経前症候群)の症状のひとつです。このように気持ちが不安定になる理由には様々な説がありますが、ひとつは、女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)と関係があると考えられています。子宮内膜を維持して妊娠しやすい状態に整える女性ホルモンのプロゲステロンは、排卵後に増加し、生理開始の1週間ほど前から減少。実はこのプロゲステロンが減少することで、気持ちを落ち着ける作用があるGABAやセロトニンといった神経伝達物質の量も低下してしまうのです。よって同時期に気分の変動が起こると考えられています。そのほかにも性格や環境因子も影響しています。
対策方法についてですが、まずは『生理前に気分のアップダウンが起こるのは、女性ホルモンの影響によるもの』と認識することが大切。イライラして周りの人に当たってしまったとき、原因がわからないと自己嫌悪に陥ってさらにネガティブな気持ちになり、負のスパイラルを招いてしまいます。あとは、生理前には人と会う予定を避けるなど、予定を調整することもできます。月経管理アプリなどをうまく活用して、自分が毎月PMSが出やすい時期を把握しておくといいですね。
また、セロトニンやGABAを増やすには原料となるたんぱく質や産生に関わるビタミンB6などを積極的にとるようにしましょう」
つらい症状をやわらげるためにできること
1. 家族やパートナーなどにはPMSのことを伝えておこう
「PMSでイライラして人に当たってしまいがちな人は、家族やパートナー、同僚など身近な人にはPMSのことを伝えて、症状が出やすい時期を知っておいてもらうのが理想的。理解しておいてもらえばトラブルが避けられますし、自分の気持ちも軽くなると思いますよ」
2. 深呼吸や入浴などリラックスできることを取り入れて
「自律神経が整うことをすることでも、セロトニンやGABAは増やせます。たとえば、大きく深呼吸をしたり、ぬるめのお風呂にゆっくりつかったり、好きな音楽を聴いたりと、リラックスモードになれることが効果的です。生理前に意識して取り入れましょう」
もっと知りたい方はこちら
PMS(月経前症候群)ラボ―大塚製薬
基礎知識から症状のチェックシートをはじめ、必要な栄養素や自分でできる予防・対策方法などPMSに関する情報が満載。また、むくみとイライラには関連が。気になる方は専門医の受診も検討して。
女性の健康推進プロジェクト―大塚製薬
ホルモンの影響を受けやすい女性の心と体についてのヘルスリテラシーの向上を目指し、情報を発信するサイト。婦人科の専門医からの解説など参考にしてください。
大塚製薬は、科学的根拠に基づく製品や情報提供を通じて女性の健康をサポートしています
イラスト/Kaho Iwaya〈opnner〉 取材・文/和田美穂 監修/尾西芳子