働く30代にとって、どうして歯のケアが大事なの? そんな疑問について医学、健康経営、それぞれのプロが解説。毎日のオーラルケア、たかが歯みがきと軽視している人は、まずその認識をリセットして。
働く30代、どうして歯のケアが大事なの?
医学の視点から
歯科医・歯学博士
照山裕子先生
歯科クリニックにて診療を続ける傍ら、口腔ケアの伝道師としてメディア出演も多数。近著は『“食べる力”を落とさない! 新しい「歯」のトリセツ』(日経BP)。
30代は“将来のお口の健康”の分かれ道!人生100年時代、自分の歯を残すためのケアを
30代は“将来自分の歯をどれだけ残せるか”の大事なとき。子どもの頃から虫歯にならないように気をつけている人は多いと思いますが、実は年齢を重ねるごとに上がってくるのは歯周病のリスクです。歯周病はほうっておくと歯を支える骨が溶け、最悪の場合、歯が抜けてしまう怖い病気なのですが、虫歯と違って痛みなどの症状が出にくいのがやっかいな点。
働き盛りの30代は、忙しさのせいでお口のケアが疎かになりがちで、その一方で、加齢とともに体の抵抗力は下がっていくので歯周病になりやすくなります。気づかないうちにじわじわと歯周病が進行すると40〜50代で歯を失うという事態にもなりかねません。
また、歯周病は、糖尿病や心疾患など様々な全身の病気のリスクを高めることもわかっています。さらに、特にバイラ世代の女性に知っておいてほしいのが、妊娠中に歯周病になると早産や低体重児出産のリスクが高まること。そのリスクは喫煙や飲酒よりも高いと言われています。
そんな歯周病を予防するためにも大事なのが毎日のオーラルケア。きちんと行うかそうでないかで、自分の歯を一生残せるか、また自身の健康状態が大きく変わってきます。やっているつもりでも間違った方法で行っていたら意味がないので、正しい方法を知ることも大切。
また合わせて定期的にクリニックに行って検診やクリーニングを受けることも欠かせません。“人生100年時代”と言われる現代、一生健康に、自分の歯で美味しくものを食べるためにも、30代の今こそ、オーラルケアを見直しましょう。
健康経営の視点から
株式会社イブキ代表取締役 健康経営アドバイザー
平井孝幸先生
2015年からIT企業にて働く人のパフォーマンスアップやウェルビーイングをテーマに健康経営を開始。現在、健康経営に関するコンサルティングなどを行う。
口の中の違和感はワークパフォーマンスの低下を招く。“歯”がその人の印象や出世にも響くといわれます
健康経営とは「社員が健康であれば仕事のパフォーマンスが上がり、会社の業績にもつながる」という考えのもと、企業が従業員の健康向上のために投資をする取り組みです。
この健康経営において重視していることのひとつにオーラルケアがあります。たとえば歯の治療のために会社を休むことは労働損失につながりますし、虫歯などで痛みがあると仕事への集中力が下がります。実際、企業各社に調査をしたところ、口の中の違和感や痛みによって労働損失が起きていると感じている人は全体の3〜6割もいるという結果が出ました。
また、口臭がある人が身近にいたらコミュニケーションが減り、職場の人間関係悪化にもつながります。さらにアメリカでは歯がキレイでないと出世できないとも言われています。このように歯や口の問題が仕事に与える影響は非常に大きく、働くバイラ世代には“健康のため”という以上に、オーラルケアを大切なものだととらえていただきたい。
何より歯のトラブルは自分で防げるのがよい点。オーラルケアが面倒だと感じる人は、まずは“気持ちがいい行為”ととらえ方を変えてみてください。たとえばオフィスで眠気を感じたときに歯磨きをすると、目が覚めて気分もリフレッシュできますよね。私自身は色々な歯ブラシや歯磨き剤を目的に合わせて使い分けることでオーラルケアが楽しくなり、口の中への意識が自然と高まりました。
そして、歯がキレイになると自分に自信もつくんです。ビジネスパーソンとして、ぜひ丁寧なオーラルケアを習慣にしてほしいです。
イラスト/澤村花菜 取材・原文/和田美穂 ※BAILA2024年6月号掲載