最近、歯の矯正を始める人が増え、私も…と考えている人、多いのでは? でも、方法や費用、期間などわからないことが多いと不安も。そこで、矯正の体験談から素朴な疑問Q&Aまでをお届け。正しい知識をもってキレイな歯並びに!
アトラスタワー デンタルクリニック
藤田博紀先生
広島大学歯科学部卒業。日本では数少ない世界舌側矯正学会認定医。裏側矯正の患者数は日本でトップクラス。的確でスピーディな歯列矯正にファンが多く、芸能人の顧客も多数。
大人の矯正みんなのホント
矯正は、実際にやった人の感想を聞くのがいちばん! そこで、大人になって矯正をしたバイラ世代5人の体験談を公開。よかったことから失敗談まで、リアルなコメントが参考になる!
【CASE 1】Yさん(33歳)インビザライン➡表側ワイヤー矯正中
矯正履歴書
社会人
前歯2本が出っ歯だったが、両親はチャームポイントと。社会人になり自分のお金で矯正をしようと貯金をし、インビザライン開始
BUT!
仕事が忙しくなるにつれ、一日の装着時間が守れなくなりあえなく2〜3年で断念…
NOW!
10年ほど経て、コロナ禍でマスク生活になり、表側ワイヤー矯正で再トライ
「子どもの頃から前歯2本が口を閉じられないほどの出っ歯なのが気になっていて、自分でお金を払えるようになったら絶対に矯正をしようと思い、社会人になって1年間貯金。そして始めたのがインビザライン。最初は装着時間を守っていたので、口がなんとか閉じられるほどには治ってきたのですが、社会人2年目頃から忙しくなって会食も増え、マウスピースの着脱が面倒になり装着しなくなってしまい……。でもその後、コロナ禍でマスク生活になったのを機に、思い切って表側のワイヤー矯正に変えることに。最初は痛みがあったけれどすぐに慣れました。ワイヤーのほうが歯が並ぶのが早く、口が閉じられるようになってドライマウスも改善。虫歯も減りました!」
【CASE 2】Oさん(34歳) 10年継続中 インビザライン矯正中
矯正履歴書
大学生
歯並びはいいがすきっ歯。しかし上京したら周りの子の歯並びがキレイで、興味がわく
社会人
社会人になり自身のお金でやろうと決意。自分なりにリサーチしてインビザラインを選択
NOW!
2〜3年で整ったが、歯は常に動いているのでマウスピースは継続し歯並びを維持。正直、一生続けたい気持ち
「昔からすきっ歯で、でも特に矯正を考えてはいなかったんですが、大学に入って上京したら周りの子の歯のキレイさにびっくり。それで社会人になって自分で費用が払えるようになったとき矯正を決意。表側の矯正には抵抗があったので、マウスピース矯正をしたいと思い、インビザラインの実績が全国でトップの歯科医院で行うことに。矯正を始めて2〜3年ですきっ歯が目立たなくなったのですが、もう少し整えたいので10年たつ今でも続けています。診察が丁寧な歯科医院を選んだので安心して続けられ、病院選びって大事だなと感じています。矯正をしたら小顔になったのも嬉しい効果。歯は見た目の印象に大きく影響を与えるから、矯正は一生続けたいです!」
【CASE 3】Hさん(38歳)20代前半に一度目の矯正➡表側ワイヤー矯正中
矯正履歴書
20代
20代前半に2年ほど表側矯正ずみ。若い頃のなので見た目が気になり早く終え、リテイナーもサボりがち
30代
30代後半になり肩こりや頭痛、腰痛が。産後の不調かと思っていたら嚙み合わせの悪さが原因と…。矯正を再スタート
NOW!
2年経て終了間近。性格的にこまめにリテイナーのマウスピースの着脱をできる気がしないので、裏側からつけっぱなしで装着できるものを選択
「歯並びが悪く、20代で表側矯正をしたのですが、見た目が気になって歯医者さんに早めに矯正を終わらせてもらい、リテイナーの装着もサボってしまい……。その後、30代後半で肩こりや頭痛、腰痛、歯ぎしりが起き、産後の不調かと思っていたら歯医者さんに嚙み合わせの悪さを指摘され再び表側矯正をすることに。今回は目立ちにくいクリアのブラケットを選択。今、終了間近ですが歯並びが整って肩こりや頭痛も解消!」
【CASE 4】Iさん(32歳)裏側ワイヤー矯正ずみ
矯正履歴書
社会人
下の歯が2本少なく、大人になるにつれずれてきたことをきっかけに社会人になりスタート。上を裏側、下の歯を表側ワイヤー矯正に
BUT!
2年半くらいで終了。キレイに整って満足したが、時がたち後戻りが気になりマウスピースで調整開始
NOW!
少しのズレなので3カ月ほどで終了間近。毎日の装着時間を守る必要があり、短期間だからできたが長期は大変と実感
「下の歯が2本少なく前歯がずれてきたので23歳のとき矯正を決意。上の歯は裏側、下は表側の矯正を2年半続けました。でもその後、リテイナーをサボったら少し後戻りしてしまい……。それで今年2月からマウスピースで再び矯正を開始。微調整なので3カ月ですむとはいえ、一日20時間装着するのは大変でした。でも2回の矯正で歯並びが整ったら整形並みに顔が変わって横顔がキレイに。今まででいちばんいい投資でした」
【CASE 5】Tさん(38歳)表側ワイヤー矯正中
矯正履歴書
幼少期
小中学生の頃からあまり歯並びがよくなく父親もやっていいよと言ってくれていたが、気にするほどではなかった
コロナ禍
コロナ禍のマスク生活をきっかけに矯正ずみの友人に紹介してもらいスタート
NOW!
マウスピースの取り外しは自分のライフスタイルに向いてないと思い表側ワイヤー矯正をチョイス
「子どもの頃から歯並びがよくなかったのですがあまり気にしていなくて。でもコロナ禍でマスク生活になり、今ならと思って友人に矯正歯科を紹介してもらい始めることに。取り外しがきくマウスピースは自分に合わないと思い、表側矯正を選択。現在2年半目ですがクリアなブラケットにしたので人から意外と気づかれません。最初は痛みもあったけれど歯並びがそろってきたら緩和。歯がそろって、顔も締まってきて嬉しい!」
矯正の方法は、大きく分けると3種
表側のワイヤー矯正
歯の表側にブラケットという装置をつけワイヤーを通して矯正。装置が目立つのが難点だが、最近は透明や白の目立ちにくいブラケットも。
裏側のワイヤー矯正
歯の裏側に装置をつけて矯正するので目立ちにくい。表側より時間がかかるとされていたが最近は表側と同じ程度の期間で矯正が可能。
マウスピース矯正
歯並びの悪さが軽度で抜歯が不要な場合向き。目立ちにくいのがメリット。透明に近く世界で症例数の多いインビザラインが人気。
Q.マウスピース矯正の具体的なやり方は?
A.約10日間隔で交換しながら一日20時間以上装着
「まず口腔内スキャナーで口の中をスキャンし、マウスピースを作製。そして少しずつ歯を動かすため1〜2カ月分のマウスピースを渡し、約10日間隔で交換しながら、一日20時間以上装着して矯正。2カ月に一度ほどの受診で次のマウスピースを渡して矯正していき、歯が並んだら保定期間を経て終了です」(藤田博紀先生)
Q.最新のワイヤー矯正はどうなってる?
A.最新の矯正装置の登場で治療時間&期間が短縮
「昔は歯科医師がブラケットにワイヤーを通してひとつずつ結んでいましたが、最近はキャップにワイヤーを通してフタを閉めるだけのブラケットが登場し、治療時間が格段に短縮。また、ワイヤーも形状記憶タイプが登場したことで矯正にかかる期間も短くなり、半年〜1年半ほどでできるようになりました」(藤田博紀先生)
Q.大人になってから矯正するメリットは?
A.「歯が頑丈になる大人の矯正のほうが安全です」
「子どもの頃に親に言われてする矯正はつらいものですが、大人になってからの矯正は自分で自覚を持ってできるのがよい点。また、矯正中は歯磨きが難しく虫歯になりやすいのですが、まだ歯が弱い子どもの頃に矯正をすると虫歯になって歯がボロボロになるリスクも。矯正は歯が生えそろって頑丈になる大人からのほうが◎。肩こりや頭痛など不定愁訴が改善することも」
Q.矯正と審美歯科、違いは?
A.矯正は歯並びを治し、審美は短期間で見た目を改善
「歯の矯正は歯並びを治すこと。一方、審美歯科は、黄ばんだ歯や歯のすき間などを治すために、歯を削ってセラミックやラミネートベニアなどをかぶせて見た目を整えることです。数回の通院ですみ、短期間で見た目がキレイになるので、人前に出る仕事の人など素早く歯を整えたい人に向いています」
矯正にも審美歯科にも対応してくれるクリニックも
アトラスタワー デンタルクリニック
藤田博紀先生が院長を務めるデンタルクリニック。ワイヤーやマウスピースでの矯正、インプラント、虫歯治療、セラミックを用いた審美歯科治療などまで各分野のスペシャリスト(認定医)が対応。https://8wa.jp
大人の矯正素朴な疑問
矯正についてまだまだ知りたいことはいっぱい。そんな矯正に関する素朴な疑問に藤田先生が回答。さっそくチェックして不安を一掃!
Q.そもそも歯並びが悪いと何が問題?
A.歯の病気になりやすいのが特に問題
「歯並びが悪いと見た目の美しさが損なわれるという問題もありますが、それ以外に、歯磨きがしにくいので虫歯や歯周病になりやすいというのも大きな問題。歯周病は特に放置すると将来、歯を失う原因にもなるので要注意。また歯並びの悪さから嚙み合わせが悪くなっていると、肩こりや頭痛などの原因になることもあります」
Q.ぶっちゃけ、いくらかかるもの?
A.上下の裏側矯正で60万〜98万円程度
「矯正の費用はクリニックや歯並びによって異なります。私のクリニックの場合は、上の歯だけの裏側矯正は基本料金が15万〜49万円。上の歯と下の歯の裏側矯正なら60万〜98万円が目安で、これ以外に検査料や保定装置料、チェック料などがかかります。表側矯正の場合はもう少し安くなります。マウスピース矯正(インビザライン)の場合は、上下の歯で39万〜89万円、上の歯のみなら29万〜42万円程度です」
Q.八重歯、どうする?
A.見た目と歯の健康のために矯正がおすすめ
「八重歯は日本ではかつてはチャームポイントともいわれていましたが、海外ではネガティブにとらえられるので、ほとんどの人が子どもの頃に矯正します。その影響で日本でも八重歯を矯正する人が増えています。八重歯の部分は歯磨きがしづらく、虫歯や歯周病の原因にもなるので矯正するのがおすすめです」
Q.嚙み合わせや食いしばりのトラブルも矯正で解決できる?
A.食いしばり癖があると解決しない場合も
「歯並びを矯正すると嚙み合わせがよくなり、肩こりや頭痛などが改善することも。ただ、歯並びが治っても食いしばり癖があるとその痛みは改善されません。ストレスがあると食いしばりやすいのでストレス解消を心がけましょう。また、食いしばり癖がある人は歯科医院でマウスピースを作り、歯が傷むのを防ぐのもおすすめ」
Q.矯正中の食事、気をつけることは?
A.硬いもの、からみつくもの、着色するものに注意
「矯正中は歯が動きやすくグラグラの状態なので、硬いものを食べると歯が折れたり、内出血をすることもあるので避けること。餅やガムなど矯正器具にからみつくような食べ物も避けましょう。また、透明なタイプの器具を装着している場合、カレーなど着色しやすいものを食べると、器具が変色しやすいので控えるのがベター」
Q.ズボラな私…マウスピース矯正できる?
A.ズボラな人にはワイヤー矯正がおすすめ
「マウスピースでの矯正は一日20時間以上装着をしていないといけないのですが、ズボラな人はこれがなかなかできず、すぐに外してしまってリタイアしてしまいがち。矯正用のマウスピースは歯から常に少し浮いているのでこれを不快に感じて外してしまう人も多いようです。ズボラな人にはワイヤー矯正のほうが向いています」
Q.矯正中でもホワイトニングってできるの?
A.裏側矯正の場合は可能
「クリニックでのホワイトニングは裏側矯正の場合は可能ですが、表側矯正やマウスピース矯正の場合は、歯に器具やアタッチメントがついていてホワイトニングの薬剤を塗れないので、矯正後に行うほうがおすすめです。また、自宅で行うホームホワイトニングはマウスピースをつける必要があるのでどの矯正の場合もできません」
Q.矯正後もキレイな歯列をキープするには?
A.サボらずに保定装置を正しくつけること
「矯正終了後は歯が動きやすいので、マウスピースなどの保定装置を最初の1年目は20時間以上、2年目以降は夜だけつけるなどして歯の戻りを防ぎます。これをサボる人が多く、そうすると戻りやすいのできちんと装着を続けることがキレイな歯列を保つポイント。また、3カ月に1回など定期的に通院して歯の状態をチェックしてもらうことも大切」
イラスト/五月女ケイ子 取材・原文/和田美穂 構成/渡辺敦子 ※BAILA2023年8・9月合併号掲載