「落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南するこの連載。今月は、9月の歌舞伎座公演『秀山祭九月大歌舞伎』(しゅうざんさいくがつおおかぶき)に出演する中村米吉(よねきち)さんがバイラ歌舞伎部のインタビューに応じてくれました。昼の部の『沼津』(ぬまづ)では、茶屋娘おくる、夜の部『松浦の太鼓』(まつうらのたいこ)では、お縫を演じます。男性が女性を演じる「女方」(おんながた)は、歌舞伎を観るときの楽しみのひとつ。その美しさ、色っぽさは、バイラ女子にとってもいいお手本になるはず。そこで9月の公演への意気込み、そして女方について、まんぼう部長とばったり小僧が徹底取材。 米吉さんがたっっっぷり語りました!!
お着物姿も色っぽいけれど、ブルー系でまとめたジャケット姿もさわやかで素敵。今どきの若手歌舞伎俳優さんは、みなさん、本当におしゃれ上手。 それにしてもさすがに女方さん。色白&もち肌。毛穴も見当たりません!! うらやますぃ~。
●仇討ちの話なのに、『沼津』には、仇も仇討ちも出てこない!?
まんぼう部長 今日は猛暑の中、わざわざ集英社までお越しいただいて、ありがとうございました。
米吉 こちらこそ、ありがとうございます。集英社といえば、歌舞伎にもなった『ONE PIECE』や『NARUTO -ナルト-』を出しているところですよね。あと、マンガ雑誌の『YOU』とか。
ばったり小僧 ええっっ!? なんで『YOU』をご存知なんですか?
米吉 母が愛読者だったので。休刊になって、すごく残念がっていました。
小僧 そうなんですね。 もしかして米吉さんも少女マンガ好きですか??
米吉 いえ、僕は少女マンガはそんなに……。
部長 小僧!! 今日はそーゆー話じゃないから。
小僧 はっ、失礼しました……。えっと、そうでした、まずは、米吉さんがご出演になる9月の歌舞伎座のお話をお願いいたします。
米吉 はい、よろしくお願いいたします。9月の歌舞伎座は、「秀山祭」と申しまして、我が家の屋号でもある「播磨屋」(はりまや)にとっては、特別な興行な上に、今年は高祖父・三代目歌六の没後百年の追善(ついぜん)をさせていただくことになりました。僕は、父・歌六とともに昼の部は『沼津』、夜の部は『松浦の太鼓』の二つの追善狂言に出演させていただきます。
めっちゃトーク上手な米吉さん。大真面目に話していたかと思えば、急に毒を混ぜてきたり、部長と小僧は終始笑いっぱなし。話すときの身振り手振りも大きくて、手の美しさが際立ちます!! 「すみません。話が大幅にそれちゃって」。いえいえ、バイラ女子は、そういう話が聞きたいんですよ~。
部長 『沼津』では、茶屋娘おくる役でご出演ですね。
米吉 はい。『沼津』は播磨屋にとてもゆかりのある演目でして、かつて三代目歌六と初代吉右衛門という実の親子で、平作と十兵衛という親子の役を演じて、非常に評判を博した舞台です。先代の歌六・吉右衛門の代表作を、当代の吉右衛門のおじさまと父・歌六で受け継いでやるということは、とても素敵なことだと思いますし、この配役の十兵衛・平作は、これまでも何度も拝見しており、僕が言うのも失礼かもしれませんが、僕の中では、最高の『沼津』だと思っていますので、同じ舞台に出られることをとても楽しみにしています。
小僧 どんなストーリーなんですか?
米吉 仇(かたき)同士として出会ってしまった親子の情愛と義理との板挟みを描いた作品です。 現代人には遠いテーマかもしれませんが、親子の情とか、義理を果たすということに関しては、みなさんの琴線に触れるところもあると思います。前半のほがらかな明るい雰囲気と、後半のころがるように落ちていく悲劇とは、とてもコントラストがあって、見応えがあると思いますよ。僕は、幕開きの茶屋の娘役で出させていただくのですが、旅の途中のにぎやかな雰囲気を大切に演じたいと思います。
小僧 なんかおもしろそうです。仇討ちの場面は盛り上がりそうですね!?
米吉 いや、それが仇討ちの話なんですけど、仇も仇討ちも出てこないという(笑)。
小僧 なんですと!?
米吉 じつはこの『沼津』は、『伊賀越道中双六』という長いお芝居の「沼津の段」という一部。「沼津」は、本筋から少しはずれたいわば脇道の部分ですが、今ではここがもっともよく上演されているんですよ。そこがすごく歌舞伎らしいところで、『忠臣蔵』でも人気なのは「五・六段目」で、そこは討ち入りに参加できなくて死んでいく男の話です。本筋を知っているうえで、脇道を楽しむというのが歌舞伎らしいところ。演目によっては、前後を知らないとわかりにくいものもありますが、『沼津』は平作一家の物語として完結しているので大丈夫だと思いますよ。
●『松浦の太鼓』は、『忠臣蔵』のサイドストーリー
約4年前に米吉さんが、『松浦の太鼓』でお縫を演じたときの舞台写真。男性の米吉さんが、こんな美しい娘に大変身!! お化粧はもちろんのこと、腰も肩も落として、どう見ても女性の佇まい。女方って、すごい!! 『松浦の太鼓』お縫(平成27年10月御園座)ⓒ松竹
部長 夜の部の『松浦の太鼓』も楽しみです!!
米吉 これは癇癪持ちだけどどこか憎めなく、可愛げのある松浦のお殿様が主人公の喜劇的なところのある作品です。『忠臣蔵』のサイドストーリーでもあって、赤穂浪士が討ち入りをした日に、隣の家は何をしていたかっていうお話ですね(笑)。『忠臣蔵』は、四十七人の家来が、長い年月をかけて主君の仇討ちをするという非常に美しい話で、当時、ものすごく人気があったので、きっといろいろ掘りすぎたんだと思います。で、ついに「隣の家ってどうしてた?」ってことになったんでしょう(笑)。思い切った着眼点です。
部長 米吉さんが演じるのは、お縫という娘ですね。
米吉 はい。お縫は、赤穂浪士のひとり、大高源吾の妹で、松浦侯のところに務めに出ています。お殿様は討ち入りを心待ちにしているのですが、その気配がさっぱりないので、お縫に対しても「バカバカ」と言って、ずっと八つ当たりしています。でも、源吾の詠んだ句で、討ち入りが決行されることに気づくと、急にご機嫌になって、助太刀に行こうとしたりして。
小僧 隣からいきなり助太刀に!? かなりむちゃなお殿様ですね。
米吉 そうですね。じつは、この演目は、バリバリの関西人だった三代目歌六に当て書きされたと言われています。本人もお殿様に通じる愛嬌なんかがあったのかもしれません。それを表すいろいろな伝説みたいな面白い話がありますよ。ある時、芝居小屋のランプが暗いのがどうにも気になっていたらしく、花道にかかった時にとうとう限界が来ちゃったのか、台詞の途中で頭の上にぶら下がっているランプの芯を捻りだして、明るくしてから澄まし顔で台詞を続けたんですって(笑)。それからある時は、芝居を観たいいところのお嬢さんに惚れられたのに、本人は禿げ頭に鉢巻きをして、更にステテコ姿で踊りながら楽屋から出てきたもんだから、外で待っていたお嬢さんが、「私の好きな歌六さんはあんな禿げ頭の人じゃない」と泣いて帰ったこともあったんだとか(笑)。
部長 すごい伝説の数々(笑)。今回は、お殿様をお父様が演じられるということで、親子の共演も楽しみですね。
米吉 はい。初めてお縫を演じたのは、20歳くらいのときで、そのときは、吉右衛門のおじさまがお殿様でした。たくさんご注意を受けたのを覚えていますが、このときの映像をこの前、久しぶりに見たら吐くほどヘタでした。10秒くらいで止めたくなりました(笑)。何を考えて芝居をしていたのか……。今回は、もう少しいいお芝居をお見せできるように頑張りたいと思います。
小僧 お話を聞いていると、すごくおもしろそうだけど、歌舞伎って、まだまだ敷居が高いイメージ。今回の舞台は、初心者としては、どのあたりに注目して観たら楽しめるでしょう?
米吉 そうですねぇ。歌舞伎を書いてきたのは、ほとんど男性ですし、男尊女卑があたり前の時代に書かれているので、今の時代の自立した女性には、共感できないところがたくさんあると思います。じゃあ、昔はこうだったのかといえば、それもまたきっと違う話で、江戸時代でも非現実を楽しみにお客さまは芝居小屋にいらしていたと思うんですね。だから女性のキャラクターもどこか男性の願望が含まれているんじゃないでしょうか。惚れた男のために、ここまでやってくれる女がいたらいいなって。設定が自分に近いから共感するというお芝居もありますけれど、歌舞伎はもっと非日常を楽しむ感覚で観ていただくのもいいのかなと思います。
小僧 ふむふむ。非現実にどっぷり浸かると。
米吉 もしくは、「私だったらこうはしない!!」「なんで夫のために、こんなことしなくちゃならないのよ!?」っていう視点もあると思います(笑)。 また、そういう歌舞伎があってもいいですよね。ストーリーは普通の古典歌舞伎なんだけど、途中で女性が「なんかおかしくない?」って気づいて、そこから自立に目覚める話。それを現代的にじゃなくて、大真面目に大時代的にやる。たとえば『本朝廿四孝』で、勝頼を救うために命がけで凍った湖を渡った八重垣姫が、後々なにもしない勝頼に腹を立てて、家事をさせるとか(笑)。そういう歌舞伎を誰か作ってくれても面白いですよね。
部長 それナイス! フェミ二スト歌舞伎、ぜひ観てみたいです。米吉さん主演で、ぜひお願いしま~す!
独特の声の質感も米吉さんの大きな魅力。「でも、声が良ければ良いって訳でもないんじゃないでしょうか。出なくてもそれによる良さってありますよね。切々とするでしょう? だから、そんな風に情を感じられて、芝居の邪魔にならないようにうまくコントロールすることが大事なんだと痛感していますね」。
●コンプレックスだったタレ目が、今では自分の個性に
部長 米吉さんは、現在、女方としてご活躍ですけれど、女方を目指そうと思ったのはいつ頃ですか?
米吉 大学に入って本格的に役者としてやろうと決めてからですね。父の歌六は立役(たちやく=男役)がメインであまり女方はしませんけれど、先輩の女方さんの舞台を観て、素敵だなと思うことがたくさんありましたし、そもそも顔がこんなですから、立役をやっても武張って(強く勇ましそうに)出られないですしね(笑)。いろいろなことが重なって、女方の道を選びました。今ではそれで正解だったのかなと少しだけ思っています。
部長 「こんな顔」と言いますけれど、米吉さんの女方は、本当にかわいらしくて、福々しくて、古き良き時代の女性という感じ。また、目が少しタレているところがチャーミングで、ファンにはたまりませんっ。
米吉 ありがとうございます。でも、以前は、このタレ目がコンプレックスだったんですよ。それでお化粧で釣り目になるように工夫したりして。
小僧 えっ、そうなんですか!?
「立役は、役によって、お化粧が細かく決まっていたりしますけれど、女方は、眉毛があるか、ないか。肌の色が白いか肌色か。決まっているのはそのくらいで。身分が高くなるほど、白塗りになるんですけれど、そういうセオリーさえ守っていれば、あとはわりと自由なんです」と米吉さん。
米吉 だって、本来は、シュッとした切れ長の目が歌舞伎的にはいいわけじゃないですか。昔の美人画とか見てもだいたい切れ長の目ですから。だからみなさん、よく僕のことを「古風な顔立ち」って言ってくださるんですけれど、自分では、モダンなほうだと思っています。
部長 確かにそうですね。でも、モダン顔の米吉さんに昔ながらの娘の雰囲気をみんなが感じているから不思議です。
米吉 タヌキに似ているからじゃないですか? 「昔、田舎のおばあちゃんちに行くとタヌキがいたなぁ」って懐かしさを感じるんじゃないでしょうか(笑)。
部長 いやいや、こんなかわいいタヌキ、いませんて。では、お化粧をするときに、美しく見せるために気を使うのはどんなことですか?
米吉 下地ですね。もう26歳なんで(笑)、だんだん目尻にシワが出てきて、ちゃんと油を塗らないといけないなと思いました。
小僧 油?
米吉 僕たち、下地に鬢付け油を塗るんですね。その油とお白粉、お白粉を溶く水の量、この3つのバランスがよくないと、まったく綺麗につかないし、すぐにハゲてきちゃうんです。僕の場合、もともとお化粧は薄くしています。その方がお化粧が長持ちするんです! あとなにより大事なのは、それぞれが持っている個性を生かすことですよね。それに気づいてからは、僕もコンプレックスだったタレ目を生かせるようなお化粧をするようになりました。これは現代のメイクにも通じるかもしれません。 あと大切なのは、自己満足(笑)。役者も、どこかできれいだと思って舞台に出ないと、きれいに見えないんですって。みなさんもちょっとヘアスタイルがうまく決まらなかったときは、1日気分が良くないでしょう? 役者もそれと同じなんです。
楽屋では、よくお香を焚いているとか。「気持ちをリラックスさせるためというより、なんとなく。鏡台に曾祖父・三代目時蔵の写真を飾ることがあるんですが、ただ飾るのも寂しいので、お線香を手向けていたのが始まり。それが最近、お香になって、顔をするときに焚くようになりました」。
小僧 でも、男性なのに、ずっと女性でいるのって疲れそう。女方のたいへんなところは、どんなところですか?
米吉 疲れることはないですが、やはり女方は、気を遣えないといけないと言われています。昔の名人の「女方は立役の後見(こうけん)のつもり」で、という言葉も残っているんです。立ち位置、手の出し方、小道具の出し方ひとつでも、相手のやりやすいようにしないといけませんでしょう? まだまだそういうところ全然行けていませんが、やり易いなと思っていただけたら、女方として一人前なのかもしれません。
部長 見た目だけでなく、やっぱり「心」が大事なんですね。米吉さん自身もそうやって相手に寄せていくタイプのキャラですか?
米吉 もちろんですよ。このたいへんな気の使い方。気遣いの男です!!(笑)
部長 サービス精神満点のこのトークがその証拠ですね(笑)。では、そんな米吉さんにとって女らしさとは? 女性のどんなところに女らしさを感じますか?
米吉 慎ましいとかそういうことは、もう今の時代に合わないでしょう。でもこれは男女ともに言えることですけれど、言葉使いは大事だと思います。テレビを見ていてもグルメリポートで女性が、「うめぇっっ!!」なんて言っていて。まあ、今はそういう時代なのかもしれませんけれど、「おいしい!!」でも伝わるのだったら、きれいな言葉を使ったほうがいいんじゃないかなと個人的には思います。
小僧 それにしても米吉さんは本当に言葉使いがきれいですよね。それはご両親の影響ですか?
米吉 (ちょっと低い声で)そんなことねぇですよ。
部長 それ、だいぶ無理があります(笑)。
米吉 いや、気づいたらこんな感じになっていて。今の時代にはまったくそぐわない生命体になっていました(笑)。
取材の終わりに、バイラ編集部を訪問くださいました!! 「編集部って、もっと雑然としていると思ったら、意外ときれいなんですね(笑)。そして思ったより静かだなと感じました」。入稿時期の混乱状態を見られてなくてよかった~。またぜひ遊びに来てくださーい。
●ずっとお世話になった時蝶さんの教えを守っていきたい
部長 それでは最後に、これからどんな役者になりたいかを教えてください。
米吉 僕の中で、最高の理想は、曾祖父の三代目時蔵(ときぞう)なんですね。映像は少ししか残っていないのですが、古風で派手な芸風だったそうで、素晴らしい役者だったそうです。僕にとっては永遠の憧れというか、畏れみたいなものも感じています。少しでも曾祖父に近づけるように、そこを目指していきたいです。 もちろんそれも古典の基礎や技術を身につけた上で、お客様に喜んでいただけるようにならないといけない。今は、まだ若いから、きれいだなんだって、みなさん、言ってくださるけれど、見た目はもって10年、20年。いずれは年を取るし、若い人が次々出てくるわけです。だったら、そうじゃないところで勝負できるようにならないとダメですよね。
小僧 かわいさだけでは勝負できないときがくる……なんだか刺さるわ。
ジャケットには、蝶のモチーフのピンが!!「我が家の家紋が、“揚羽蝶”なんですね。それで蝶のモチーフのものが自然と多くなります。お話しした中村時蝶さんをはじめ、この9月に名題昇進する我が家の一番弟子も蝶八郎ですし、お弟子さんの名前にも “蝶”の字をよく使うんです」。時蝶さん、ずっと米吉さんを見守っていてくださいね、ぐっすん。
米吉 だから曾祖父のように、舞台に出てきただけで喜んでもらえるような芸をしっかり身につけたいと思います。そもそも、曾祖父への憧れが強くあるのは、中村時蝶(ときちょう)さんの存在があるからなんです。時蝶さんというのは、曾祖父・三代目時蔵のお弟子さんで、曾祖父、祖父、父、僕と、四代80年に渡って、我が小川家全員がお世話になってきた役者さんです。残念ながら3年ほど前に亡くなってしまったのですが、僕は小さいときからわからないことがあると、何でも時蝶さんに聞いてやってきました。それこそ初舞台の時にお化粧をしてもらったのも時蝶さんだし、僕が父とは違う女方の道に進んでからは、何かというと電話して、相談していました。僕がお化粧を薄めにするのも、まだ化粧に慣れていない頃、「もっと顔を白くしたほうがいい?」と聞いたら、時蝶さんに「それ以上、白くするならペンキをお塗りなさい!」って叱られた経験があるから(笑)。これからも時蝶さんが言っていたことを思い出して、守り続け、何よりも色々な先輩方からたくさんのことを教わりながら、曾祖父のような役者になりたいと思っています。
部長 なんていいお話なのかしら。米吉さんの熱い思い、しかと受け取りました!!
小僧 9月の舞台、絶対行かなくちゃ。楽しみにしています!!
■プロフィール
中村米吉(なかむらよねきち) 1993年東京生まれ。歌舞伎俳優・中村歌六の長男として生まれる。 2000年7月 歌舞伎座『宇和島騒動』の武右衛門せがれ武之助で父・歌六の前名を継ぎ、五代目中村米吉を襲名して初舞台。2011年から本格的に女方を目指す。2015年 『鳴神』の雲の絶間姫で十三夜会奨励賞。
■演目紹介
『秀山祭九月大歌舞伎』
日程・場所: 2019年9月1日(日)~25日(水)歌舞伎座
初代吉右衛門の芸と精神を継承することを目的に、当代の吉右衛門が2006年から始めた恒例の公演。毎年、初代吉右衛門ゆかりの演目が上演される。また、今年は、三世中村歌六の百回忌にあたり、昼に『沼津』、夜に『松浦の太鼓』が三世歌六百回忌追善狂言として上演される。
【昼の部】
三世中村歌六 百回忌追善狂言
伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)
『沼津』(ぬまづ)
出演: 中村吉右衛門、中村雀右衛門、中村錦之助、中村歌昇、中村種之助、小川綜真(歌昇長男・初お目見得)、中村米吉、中村又五郎、中村歌六
ストーリー: 東海道を旅する呉服屋十兵衛は、沼津のはずれで年老いた平作に出会う。先を急ぐ十兵衛だったが、平作の娘お米にひと目惚れをし、平作の家に立ち寄ることに。その夜、平作とお米の話を聞いた十兵衛は、驚愕の事実に気づくのだった。義理と情の間で揺れる親子の哀切を描く。
【夜の部】
三世中村歌六 百回忌追善狂言
秀山十種の内
『松浦の太鼓』(まつうらのたいこ)
出演:中村歌六、中村又五郎、中村歌昇、中村種之助、中村鷹之資、中村吉之丞、中村米吉、中村東蔵
ストーリー:師走の両国橋。俳人の宝井其角と再会した赤穂浪士の大高源吾は、其角の句に続けて、「明日待たるゝその宝船」と残して立ち去る。翌日、松浦鎮信の屋敷では、松浦侯がいまだ赤穂浪士が仇討ちを果たさないことに苛立ち、源吾の妹・お縫に辛くあたっていた。しかし其角が源吾の残した句を伝えると、松浦侯はその句の真意を察し、態度を急変。意気揚々とするのだった。忠臣蔵外伝物ものの名作。
■公演チケット情報
チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹ほかで発売中。
歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」チケットに関するご案内
写真/富田恵
取材・構成/バイラ歌舞伎部
まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。
ばったり小僧……歌舞伎歴2か月。やる気はあるが知識ゼロの新入部員。若いイケメン俳優より、本当はオーバー40歳の熟年役者好き。