自分の感覚で自由に動き、さらりとなんでも器用に表現する男、嵐・二宮和也。想像力と思いやりをフル活用し、独自のスタンスで輝く理由に迫るインタビュー。
嵐・二宮和也
にのみや かずなり
●1983年6月17日生まれ、東京都出身。A型。 1999年に嵐としてCDデビューを果たす。現在、「VS嵐」(フジテレビ系 木曜19時~)、「嵐にしやがれ」(日本テレビ系 土曜22時~)、「ニノさん」(日本テレビ系 日曜10時25分~)に出演中。ラジオ「BAY STORM」(bayfm 日曜22時~)でパーソナリティを務める。
絶妙な空気づくり、型を決めず、相手との呼吸で土台を固めていく
実在のカメラマン・浅田政志の人生を描いた映画『浅田家!』で、二宮さんは無茶でいいかげんで、自由奔放ながらどこか許せてしまう人間味あふれる主人公の政志を演じている。
「この作品の魅力は、浅田政志さんの人間力だと思ったので、それをどこまで噓っぽくなく、説教くさくならずに出せるかがすべてでした。“この人だから助けたい”“この人だから一緒にいたい”“この人だからつらくても頑張っていこう”と思ってもらわらないと、物語が台なしになる」
「今回は(三重県の)津の方言があり、セリフの方言テープを聴いて耳で覚えました。イントネーションは難しかったけど、“難しいからできません”は通用しないから、やるしかない(笑)。それよりも自分がセリフをかんだりして、現場が止まってしまうほうが皆さんに迷惑がかかるので。特に、自分がそのセリフに対して理解が足りていなかったりすると、セリフがなかなか出てこなかったりする。それ以外なら早口でも問題ないし、それよりも相手との呼吸を合わせるほうが重要で、方言よりそのほうが難しいと思っています」
普段は撮られる側の二宮さんが、今作では撮る側へ。プロの写真家の苦労も心でぶつかって、心でこたえた。
「このために何か特別な準備はしませんでした。劇中の浅田家の写真は、浅田さんご自身が撮ってくださるというのが最初から決まっていたので。それでも、撮影の合間に現場にあったカメラをお借りして、いろいろ撮ったりはしていて。写真が多いほうが後々、何かの役に立つだろうと考えていたし、パンフレットとかに使ってもらえたら、それはそれで面白いかなと思ったんです。ただ、劇中で自分が撮った写真は一枚も使われていませんでしたが……(笑)」
「映画の打ち上げ会場で、僕が撮った写真と浅田さんが撮った写真が映像で一緒に流れたんですよ。プロとアマの違いを感じました(笑)。うまく説明はできないんですけど、何かが明らかに違ったんだよね」
「普段は撮ってもらう側だし、限られた時間、さまざまなテーマで撮影することが多いかな。何を求められているのか、自分らしさなのか、テーマに準じて応じています。衣装も、髪も整えてもらっているので、求められてるものを瞬時に探り、表現するようにしています」
動画ではなく、写真だからこそ伝わるたった一枚の写真の力
被写体をよく知ってからでないとシャッターを押せない政志。二宮さん自身も仕事相手を冷静に観察することで有名。日ごろから共演者のどんなところを見ているのだろう。
「共演する方たちを事前にリサーチすることはないですね。『検察側の罪人』で木村(拓哉)くんと初共演したときもそうでした。数々のムーブメントを起こした人だということはもちろん知っていますが、それよりも今の木村くんが何を思っているかのほうが重要だと思っています。撮影現場で先輩が考えていることがわかれば、自分の職業としては成立する。“今、何を思っているのか”とか、“自分とやってみて、こうなんだ!”と理解ができたら、自分が求められてるものが自然と見えてくるはず」
「過去の作品を勉強するのも素晴らしいことだと思いますが、なかには今の自分を見てほしい人もいるかもしれません。目の前にあるものだけで向き合ったほうが、みんなにとっていい環境になることもあるのかなって、個人的に思っています(笑)」
「自分は相手に調べられても大丈夫なタイプ。あまり人との間に壁を作らないから、そもそも気にしたことがないかな。ただ、その人を事前に調べなくても、観察していればわかることがたくさんあるのにとは思います。今は仕事の話をすると迷惑をかけそうだなと感じたら、まずは様子をうかがえばいい。いいタイミングを見極めて切り出すのがいちばんだし、それが俺の手腕です(笑)」
今作で印象的だった“写真に残す”ことで当時の思い出がよみがえる「写真の力」。二宮さんが思う、写真だからこそ伝わるものや映るものとは?
「小さいころの写真はほとんど実家で、手もとにあるのは過去に出演させていただいた作品のオフショットくらい。いただいたときの茶封筒に入れたままで、アルバムに入れて保管もしていなくて(笑)。打ち上げの写真とか、スタッフの方が焼き増しをして渡してくれていました。わざわざ過去の写真を見返すことはほとんどありませんね(笑)」
「ありがたいことに20周年とか、さまざまなタイミングで振り返ることが多いので鮮明に覚えています。ただ、写真のよさはもちろんあって、ちゃんとそこに存在しているってことがいちばん、有意義なことだと思います。変わらない価値をそのまま残しておけるのがいいんだろうね。でも、僕たちのような仕事をしている人間は、写真で生かされることもあれば、殺されることもある。今は、誰でも簡単に写真が撮れる時代。一枚の写真の中にたくさんの情報が詰め込まれているっていうことは、実は昔から変わらないんだろうけど。それだけ聞くと怖いし、ネガティブに聞こえるかもしれないけど、“この人、この時季になるといつもこれを着てる”とか当時の記憶が呼び起こされるものでもある。写真を撮るってなると、“いつもこの顔だよね”とか、“このポジションにいるなぁ”っていう情報を見つける楽しさもありますしね」
映画の中での、さまざまなシチュエーションでコスプレをしたユニークすぎる家族写真にも注目したい。
「僕自身印象に残っているのは、バンドマンと酔っ払いとヒーローショーかなぁ。ほかの写真は、実際の写真集の場所と同じところで撮れたんですけど、この3点だけはもうその場所自体が存在していなくて……。ほかは撮影場所に行けば、画角もある程度決まっていたので、基本的にはポーズをとればよくて。完全再現することを目指していましたが、この3枚だけ空気感が変わっちゃうんじゃないかと心配ではありました」
「僕は普段グループで生活しているので、撮影のときに“隣の人が右を向いたら左を向いてください”みたいなオーダーは日常的にあるんですよ。だからこの作業に近いことを普段からやっているんですが、ほかの皆さんはとても大変だったと思います。そんな部分にも注目して、作品を観てもらえたらうれしいです」
「どの作品も全力でやることには変わりないけど、それでも力むことはない」
「一辺倒で学んできたことを吐き出すだけというのはつまらない気がします」
映画『浅田家!』
公開/全国にて10月2日(金)より
©2020「浅田家!」製作委員会
4人家族の次男坊として育ち、写真家の夢を果たした主人公・浅田政志(二宮)とやんちゃな弟を温かく見守る兄・幸宏(妻夫木聡)。コスプレした姿を収めた家族写真から伝わる“家族の愛の絆”や、“家族とは何か?”を問いかけていく。
撮影/曽根将樹〈PEACE MONKEY〉 ヘア&メイク/竹内美徳〈メーキャップルーム〉スタイリスト/福田春美 取材・原文/山中ゆうき 撮影協力/AWABEES 衣装協力/COMME CA ISM ※BAILA2020年10月号掲載
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