ライバルから同志へ。注目騎手、荻野極・坂井瑠星・藤田菜七子の3人による同期会
歴史的レースの数々に大いに競馬界が盛り上がった2020年。それゆえに競馬に特に興味を持っていなくても、“アーモンドアイ”(注1)や“コントレイル”、”デアリングタクト”などの競走馬の名前を耳にしたことがある人も多いのでは? 2021年1月12日発売のBAILA2月号「推し活」特集には、そんな熱いレースを繰り広げる競走馬の手綱を握る注目の騎手3人がそろって登場!本誌にはスペースの都合で掲載しきれなかった3人の独占インタビューを、ウェブ限定でお届け。学生時代の思い出など、同期ならではの話を大公開!注1:2020年に競走馬を引退。現在は繁殖牝馬としての生活をスタートさせている
藤田菜七子
ふじたななこ●1997年8月9日生まれ。小学5年生のときに競馬中継を見て騎手を志す。JRAの女性騎手としては史上初の100勝を果たし、現在も記録更新中。休日はパン屋さんへ行くのが楽しみ。
荻野極
おぎのきわむ●1997年9月23日生まれ。ドリームジャーニーが勝った有馬記念がきっかけで騎手の道へ。初勝利は単勝433.9倍の大穴をあけ、クセのある馬を乗りこなす技術と観察眼に定評あり。
坂井瑠星
さかいりゅうせい●1997年5月31日生まれ。父も元騎手という競馬一家で育つ。昨年はジャパンダートダービーにてG1初制覇。休日もレース映像を見てノートをつけるなど同期イチのストイックな性格。公式インスタグラム@ryusei_sakai.official
競馬学校の32期生。三者三様の思いと生活
編集部:初めて会ったのはいつでしたか?
坂井:僕と菜七子は中学2年生の時に、乗馬大会で会っているんです。当時の先生から「あの子もジョッキーを目指しているんだよ」って教えてもらってすごく印象に残っていて。
藤田:瑠星と挨拶をして「細いな~~~!」と思ったことは覚えています。それ以外はあんまり覚えてなくて(笑)
坂井:なので3人全員での初対面は2次試験の時でしたね。3泊4日で、乗馬の技術から生活態度や体力などを見られるものでした。
荻野:物凄い緊張している中、菜七子が面接室へ小走りで入っていったのをよく覚えてる!
藤田:極は面接室から裸足で出てきてたよね(笑)
荻野:面接で特技を披露する流れになって空手をやったからだね(笑)
坂井:僕もそれを人づてに聞いて「空手の子がいるんだ~」とぼんやり思ったのを覚えています。
編集部:みなさん無事に二次試験を合格し、競馬学校での生活がスタートしましたが、そこでの生活はいかがでしたか?
荻野:楽しむ余裕が無かったです。乗馬経験が一番少ないこともあり、みんなに追いつかなくちゃという焦りがあって「頑張らなきゃ」と毎日、苦しい気持ちでした。
藤田:私も3年間がすごく長かった。毎日毎日、先が見えないなあと思っていました。
坂井:僕は楽しかった! 他のスポーツと違ってなかなか自主練が簡単に出来るものではないので、やりこめる環境にいられるということがすごく嬉しくて。上達していく感じや手応えも少しずつですが感じられました。
編集部:学生時代は寮生活でしたが、休日はどう過ごされていましたか?
藤田:私は小説など、本を読んですごしていることが多かったです。あと自転車でお菓子屋さんに行ってました(笑)当時は和菓子がすごく好きで、どら焼きやかりんとう饅頭を買っていましたね。今でも時々、食べます。
荻野:みんな学生時代の時はお菓子をよく食べていたよね!
坂井:お菓子ロッカーっていうのがあって、外出できる日曜にそれぞれ買い出しに行って1週間分をそこにいれておくんです。僕は大きなアイスをよく買っていたなあ。
藤田:あれはすごく性格が出て、私は月曜にこれを食べて、火曜にはこれと配分するタイプだったんですが、極はいつも週の前半にはお菓子がなくなっていたよね(笑)
荻野:ひどいときには日曜日に買ったものが、日曜日になくなっていました(笑)
かけがえのない互いの存在。そして6年目の決心
編集部:学生生活から数えると今年で9年目の付き合い。改めてお互いのことををどう思っていますか?
坂井:極は今でも一番仲が良くて、毎日いても飽きない恋人のような親友ですね。僕は自分のレースの次に極のレースを見ているぐらい(笑)技術的に見習うところも多いです。
藤田:今日もそうですが、極はいつ会っても明るくて元気をもらえる存在。同期の中でも盛り上げ担当だね!
坂井:菜七子はジョッキーとしてもすごいし、それ以外でも仕事も忙しい中メディアに出て競馬界を盛り上げてくれたり、すごく感謝していて“ありがとう”の気持ちが強いです。
荻野:そして同期の中でもアイドル的存在(笑)ギャップもあって普段は可愛い女の子なんだけど、レースの時は気が強い! すごく自立していてなんでも自分でやろうとするし、そして出来ちゃう子。あんまり学生の時から人に相談したりしてなかったよね? でも傷つきやすかったりする一面もあるね。
坂井:そうそう。菜七子は「意外と!」が多いかも。
荻野:瑠星はイケメンで、頭も良くて、競馬や馬の知識も豊富で…。ミスターパーフェクトなんじゃないかな?ちょっと諸々を少し分けて欲しい!(笑)
藤田:欠点がないタイプだよね。同期の中でもダントツのストイックさ。尊敬しています。
編集部:それぞれ卒業後、ご活躍されていますが、お互いのレースを見て印象に残っているものはありますか?
坂井:菜七子はコパノキッキング!勝負服からレースぶりまで何もかもが印象的。
荻野:「菜七子といえば!」っていうぐらいだよね。瑠星はジャスティンとのコンビかなあ〜。
藤田:私はダノンファラオで交流G1を勝ったのがすごく印象に残っている。同期で初だったし、大穴だったし。
坂井:極はアキトクレッセントだね。調教もずっと乗っていたよね。
荻野:当時所属している厩舎の馬で。女の子好きな気分屋と、ちょっとクセのある馬だったんですが確かに自分の中でもすごく印象に残っている一頭です。
編集部:デビューして今年で6年目。みなさん、どう感じていますか?
藤田:あっという間! もっと上達しなきゃという気持ちです。
坂井:想像していた6年目は、もっと上手くやれているんだろうなと思っていました。なので想像と現実は違うなと。優秀な後輩もたくさんいるし、僕も負けずにこれからも頑張りたいなと思っています!
荻野:僕は情けないかな。思ったような結果を出せていなくって…。頑張ります!
坂井:出来るよ、極なら!
3人へ質問! 一番○○な人は誰?
Q一番負けず嫌いなのは誰?
荻野:菜七子!競馬で負けると機嫌が悪い!(笑)怒ってるのが顔に出てるよね(笑)
藤田:自覚があります(笑)
坂井:基本的にはみんな負けず嫌いだよね?
荻野:僕もそう!競馬もだけどゲームで負けるのも悔しい(笑)
Q一番面白いのは誰?
坂井&藤田:極!
坂井:15歳で初めて会った時からずっと面白いです(笑)
Q一番よく食べるのは誰?
坂井:これも極です!
荻野:お米、麺、肉が好きですね。菜七子は少食。瑠星は食べるのが遅い(笑)
Q一番変わっているのは?
荻野:菜七子かな~。掴みどころがないからね。
藤田:え~そうかなあ?私は極だと思うけどね。あんまり人が考え付かないことを言うし。
坂井:確かに着眼点がいつも違う!
久々の再会だったという取材日当日。終始リラックスムードで、互いの姿をスマホで撮ったり、冗談を言い合ったりと、3人の仲の良さや絆を自然と感じるような現場となりました。弱冠23歳にして、毎週末真剣勝負の世界に身を置く彼らの今後にも是非、注目してみて下さい。
撮影/柴田フミコ ヘアメイク/田中陽子<Lila> スタイリスト/松尾正美(藤田さん分) 取材・文/倉田明恵<BAILA編集部>
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