海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、30代女性におすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、女性の怒りと痛みを独創的かつ切実に伝える異色作『プロミシング・ヤング・ウーマン』をご紹介。本作でオスカー候補になった主演のキャリー・マリガンによる、魂の演技は必見です!
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『プロミシング・ヤング・ウーマン』
昼間はカフェの店員。夜はバーで泥酔したフリをして、レイピストたちを待ちかまえては制裁を下している。ある事件によって大学の医学部を中退し、平凡な毎日を送るキャシーに何があったのか?
パステル調のカフェの店内やキャシーの自宅、ファッションも、いかにも女性らしいやわらかさで“無害”な印象。だがキャシーはトラウマを抱え、心はむしばまれている。大学時代の友人女性とランチをしても、不穏な空気が漂う。かと思いきや、ふいに小児科医のハンサムな元クラスメイトと再会し、映画はラブラブのロマンチック・コメディモードに。
復讐物語と恋愛ドラマが融合したユニークな展開は、中盤以降、予想もつかない怒濤の展開へとなだれ込んでいく。タイトルでもある“有望な若い女性”=キャシーとその親友が、いかにしてその将来を絶たれたのか。その真相は、胸をえぐられるような壮絶な痛みが伴う。
自分よりも能力がある女性に対して、男性がどういう行動をとることがあるのか。また女性が、そうした男性の行為を見てみぬふりをする。あるいはコミュニティの中心にいる男性の側におもねることもある。本作の巧みな脚本が伝えるメッセージは、まさに全女性が被害者として、特に加害者として口に出せずにいた思いを代弁しているようでもある。
監督・脚本は人気ドラマ「ザ・クラウン」のカミラ役でもおなじみで、作家ほか多彩な才能を持つエメラルド・フェネル。本作でアカデミー賞オリジナル脚本賞を受賞したのも納得の、独創的で鮮やかな手腕にはうなるしかない。そして本作でオスカー候補になった主演のキャリー・マリガンによる、女性の怒りと痛みを切実に伝える魂の演技に拍手を!
監督・脚本/エメラルド・フェネル
出演/キャリー・マリガン、ボー・バーナム
公開/TOHOシネマズ日比谷ほかにて7/16より
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『親愛なる君へ』
今は亡き同性パートナーの家族、老婦とその孫の面倒を見るジエンイー。老婦の急死に対して罪を認めてしまう彼の真意とは?ミステリー仕立てで描かれる、根深い偏見と“家族の絆”の物語に涙。
監督・脚本/チェン・ヨウジエ
出演/モー・ズーイー、ヤオ・チュエンヤオ
公開/シネマート新宿・心斎橋ほかにて7/23より
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『イン・ザ・ハイツ』
ミュージカル『ハミルトン』のリン=マニュエル・ミランダの出世作の映画化。ニューヨークで夢を追い、懸命に生きる移民の姿を、ラップやサルサに乗せて描く。陽気なラテンムードに心も躍る!
監督/ジョン・M・チュウ
出演/アンソニー・ラモス、コーリー・ホーキンズ
公開/全国にて7/30より
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2021年8月号掲載