『別冊マーガレット』にて2006年1月号〜2017年12月号まで長期にわたって掲載された椎名軽穂先生による超人気作『君に届け』。「君届(きみとど)」の愛称で社会現象と言っても過言ではないほどおなじみの作品となり、多部未華子さん、三浦春馬さん、桐谷美玲さんといった豪華キャストで実写映画化もされました。性別や世代を越えて、あらゆる読者に熱く支持されてきた『君に届け』。いま改めて大人が読むべき理由をご紹介します。
前代未聞の設定⁉ 『君に届け』の主人公
舞台は北海道の高校。主人公の黒沼爽子(くろぬまさわこ)は黒髪ストレートの暗い見た目のせいで何もしていないのに「貞子」と呼ばれ、霊感がある人として恐れられていました。(もちろん霊感はなし。)もちろん、クラスにもまったく馴染めず。実は鈍感ながらも前向きな性格で、自分をうまく相手に伝えられないのも周りを第一に考える優しい性格ゆえなのでした。
正反対のクラスメイトと運命がクロスする……
クラスのなかで爽子と対照的な存在であるのが風早翔太(かぜはやしょうた)。爽やかで明るい風早は、クラスどころか学年中で男女問わず信頼される人気者。浮いている子がいると放っておけず、誰に対しても分け隔てなく接する男子です。
高校1年生の春、ひょんなことから通学路の桜の下で言葉を交わした爽子と風早。クラスのなかでは正反対の存在であるふたりでしたが、噂を全く気にしない風早が優しい笑顔で爽子に話しかけます。爽子がクラスのみんなのために雑用をこなしていることを唯一気にかけている風早。誰もが「貞子」が爽子の本名だとさえ思っているなか、唯一彼女の本名を知っている風早。一途で優しくて、時おり見せる男子高校生らしいまだまだ子どもらしい表情にもキュン。
そんな風早に、まだ恋を知らない爽子は憧れと尊敬の念を抱きます。一方の風早は、本当は笑顔が素敵な爽子に、出会ったときから特別な感情を抱いていました。ふたりのピュアすぎる恋模様が、一歩ずつゆっくり、ゆっくりと進んでいきます。
育まれていく友情も見どころ!
風早と親しくなったのをきっかけに、爽子の世界が広がっていきます。最初に仲良くなったのは、意外にも派手な存在の千鶴とあやね。千鶴は一見不良っぽいルックスながら、涙もろく、義理と人情を重んじる性格。あやねは年上の彼がいる姉御肌の美人です。彼女たちとの友情が育まれていく過程でも、ハラハラさせられたり、名言の数々が飛び出してホロリとさせられたり。ひとりの人として成長していく過程がじっくり描かれていきます。
作品のすみずみまで魅力的な人物が渋滞!
登場人物一人ひとりの微妙な心の動きがリアルに描かれるため、全員に自然と感情移入できるのも『君に届け』のすごいところ。彼らと一緒に嬉しくなったり、ほろりと泣けたり、甘酸っぱいドキドキを味わったりと、忙しいくらい胸がアツくなりっぱなしです。
爽子と風早はもちろんクラスメイトの千鶴、あやね、千鶴の幼なじみの龍、担任の教師ピン……。どの登場人物も強みと弱点を持っていて、人間らしさにあふれています。爽子にとっての恋のライバル、くるみまで愛おしく感じられてくるほど! 読み進めるうちに、彼らがマンガの登場人物を超えた自分にとって大切な存在になっていった、という読者も多いはず。
大人がいま改めて読むべき青春がここに!
はじめて大好きな人を想う気持ちに気付いた瞬間や、その人に上手く気持ちを伝えられないもどかしさ、友達と上手くいかなくて悩む気持ちといった高校生たちのキラキラとした感情。青春時代を疑似体験することで、大人になってからいつの間にか忘れてしまった気持ちが鮮やかによみがえり、心が洗われます。自分が経験した高校生活の何倍も素敵な青春ではありますが(笑)
また、登場人物たちと一緒にドキドキするだけでなく、愛おしい高校生たちが成長していく過程を見守るような視点で読むのも大人ならではの『君に届け』の楽しみ方だと思います。作品にあたたかな気持ちを分けてもらうことで、自分もどんなに忙しくても、疲れていても、近くにいるパートナーや家族、友人に誠実に接したいと優しい気持ちに満たされます。思いを言葉にして相手に届けることの大切さを、改めて立ち止まって考えるきっかけになります。
読んだことがないという人にはもちろん、主人公たちと同世代のときやもっと若いときに読んでいたという人がいま読み直すのも、とってもおすすめです!!
編集M
本誌ファッション担当。襟付きトップスとフレアパンツを1年の半分は着ている身長148cmの骨格ウェーブ。海外ECが大好きで、常に円相場をチェックしています。休日、乗馬の初級コースで美しいサラブレッドに癒されるのが至福の時間。
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試し読みは2021年11月8日(月)~2021年11月21日(日)まで