読むと感じるのは、胸がキュンとするというよりは鼻の奥がツンとする感覚。『日々蝶々』で描かれるのは、“可愛すぎる”女の子の“可愛すぎる”初恋です。じれったくて、もどかしくて、だけどそっと見守っていたくなるのです。
“目が合わない”から始まる恋?
主人公の柴石すいれんは、美少女すぎて周りから「高嶺ちゃん」(「高嶺の花」の意)とよばれる女の子。幼いころから常に注目され騒がれてきたせいで、男子が苦手で無口になってしまった彼女が、高校でひとりの男の子に出会い、恋をするのです。
その男の子は川澄くん。空手ひとすじで、彼も女の子と話すのは苦手です。こちらは入学式でふたりが初めて会うシーンですが、普通恋って“目が合う”ところから始まるものじゃないですか? だけどすいれんは“目が合わない”ことから彼を意識し始めるのです。もちろんそれはすいれんがずっと“人に見られてきた”からなのですが、そう思うとキラキラした始まりの瞬間がちょっぴり切なくも優しくもあったりして、この奥行きみたいなものが『日々蝶々』の好きなところ。
手は、言葉よりも目よりも想いを語る
川澄くんへの気持ちを自覚したすいれんですが、うまく話すことができません。だけど、花火大会に誘いたくて帰ろうとする川澄くんの服の裾を思わずキュッとつかんだり、その花火大会では弾みでつないだ手をギュッと強く握ったり。日々強くなる想いを、どんなセリフよりも“手”が語るところがまた素敵。
目が合ったふたりの、その先は――
川澄くんがすいれんに惹かれていく心の動きも見逃せません。初対面のふたりの目が合わなかったのは川澄くんがすいれんの見た目をまるで意識しない男の子だったからでもあるのですが、そんな彼も初めての恋を少しずつ自覚していく。その表情はやっぱり切なくも優しくて。すいれん! 大丈夫! 見る目あるよ! と本気で語りかけました(笑)。
そして、ふとした瞬間に初めて目が合ったふたりのその先は……。
今もふたりが笑いあっていてほしいと、結末の先まで想像してしまうような、愛しい物語です。
BAILA編集部
編集O
本誌にて主にファッションを担当。長く在籍したMOREから異動したばかりで、中堅だけど気分は新人。身長161cmのカジュアル派。
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