ストイックに役柄に向き合う一方、周囲を包み込むような優しさにいつもあふれている綾瀬さん。時代を代表するトップ女優は、働くバイラ世代がお手本にしたい女性でもありました。インタビュー前後編の前編です。
現場では、「これくらいでいいや」って妥協したくないんです
手が震えるほど、今でも現場で緊張してしまうことがあります
「心と体って、つながっていますよね。体を動かすと、気持ちが整うし、『まあ、いっか』って、ダラダラすることも少なくなります。でも、最近、運動をサボりぎみなんですよね。いけない、いけない」とアーモンド形の愛らしい瞳をくるくるさせる。その無邪気な姿を見ていると、彼女が日本を代表する女優であることを思わず忘れてしまいそうになる。真摯に仕事に向き合いながらも、その素顔は驚くほど、肩の力が抜けていて自然体。それはまさに働く女性の理想像!
「いやいや、私も気分が乗らないことはありますよ。朝はだいたいどんよりしてます。『もう朝か』『ああ、今日も仕事かぁ』って。基本、『よっしゃーっ、仕事だ~!!』みたいな感じではないですね(笑)。でも、現場に行くと、自然と頑張らなくちゃっていう気持ちになるんですよね。責任感、なのかな。作品はみんなが丹精込めて、命を削るようにして作っているものだから、『このくらいでいいや』って妥協したくないんです。どれだけベストを尽くせるかというところでストイックに極めている人がカッコイイと思うし、自分もそうありたいという気持ちがあるから続けられるんでしょうね」
とはいえ、華やかなイメージとは裏腹に、俳優という仕事は、想像以上にハードワーク。
「号泣したり、激怒したり。『普段でもこんなに声を荒らげないよ』みたいな感情表現が必要になるので、それに合わせて自分の感情を高ぶらせなくちゃいけない。心の繊細なひだひだが、へとへとになります(笑)。しかも私、すごい緊張しいなので、大変なシーンのときは、1週間前から、『あの長ゼリフ、嫌だな』って気が重くなります。本番中もものを持つ手が震えて余計焦ったり、心臓のバクバク音が音声さんに聞こえてたらどうしようと思ったり。恥ずかしい思いをしながらカメラの前に立っています」
画面では、生き生きと、堂々と演じて、私たちを感動させてくれているのに、そんな苦労があったとは。
トップス¥31900・パンツ¥39600/ザ・リラクス(ザ・リラクス) イヤカフ¥26400/イー・エム アオヤマ(イー・エム)
余計なものをどれだけ捨てられるか。それが自分の今のテーマです
「現場は、毎回、精神の闘いです。どんなに家で練習しても、本番で雰囲気にのまれると、セリフが出てこなかったりするから、いかにリラックスして、その場に臨めるかということが大事だったりします。そういう意味でアスリートと似ているかもしれないですね」
そして「そういう大変なことを含めて、この仕事を楽しんでいる」とも。
「お芝居って、エネルギーの交換みたいなところがあるので、それを感じられるのは刺激的だし、やり遂げたときの達成感は、ほかでは得難いものがあります。最近は『緊張してヤバい』と思ったときには、『あっ、きた、これ、大好きなやつ!』って思い込ませるようにしています(笑)」
(後編へ続く)
綾瀬はるか
あやせ はるか●1985年広島県生まれ。2000年、芸能界デビュー。映画、ドラマ、CMなど幅広く活躍。「世界の中心で、愛をさけぶ」「八重の桜」「奥様は、取り扱い注意」「義母と娘のブルース」「天国と地獄~サイコな2人~」など代表作多数。
月9ドラマ「元彼の遺言状」
出演/綾瀬はるか、大泉洋ほか
原作/新川帆立 演出/鈴木雅之 フジテレビ系 月曜21時~
お金が欲しい、その一心で、圧倒的な法律知識を武器に敵を打ち負かす敏腕弁護士・剣持麗子(綾瀬はるか)が、ある事件に巻き込まれていく。2021年、「このミステリーがすごい!」の大賞受賞作の待望のドラマ化。
撮影/YUJI TAKEUCH〈I BALLPARK〉 ヘア&メイク/中野明海 スタイリスト/山本マナ 取材・原文/佐藤裕美 ※BAILA2022年6月号掲載