舞台『刀剣乱舞』シリーズで共演している二人。お互いを「梅ちゃん」「わだっくまさん」と呼ぶ仲ながらも、それぞれの芝居のフィールドで活躍中。大人の彼らが醸す絆の強さと、噓のない思いを分かち合うひととき。
1. 2人へのQ&A
Q お互いを似ていると感じるところは?
和田 一人時間を満喫できる部分かな。梅ちゃん、夜“徘徊”するんでしょ?
梅津 「散歩」って言ってくださいよ~(笑)。確かにひとけのない夜の街を歩くとワクワクします。……っていうかわだっくまさん、なんで知ってるんですか?
和田 SNS情報です(笑)。俺も空き時間には気ままに散歩するのが好きだから仲間だな、と。でもなんで深夜なの? あ、そうか。夜型か。
梅津 はい。いつも夜中の3時ぐらいに気力&体力のピークがきてます。
和田 俺もね、わりと夜更しして遅くまで寝てたの。でも少し前に生活リズムを整えようと、部屋のカーテンを遮光のものから光が入る薄さに替えたんだよ。それで今は朝型になってきちゃった。目が覚めちゃうんだよね(笑)。
梅津 偉い。僕はまだ夜中のほうが色々と冴えてしまいますね……。
和田 うん。いいじゃない。そのままのマイペースな自分でいてよ。
Q 読書家の二人。最近読んだ小説or漫画を教えて!
梅津 『ユドルフォ城の怪奇』という翻訳小説が面白かったです。アン・ラドクリフという、イギリスのゴシック小説家の作品なんですけれども。
和田 なるほど~。俺は仕事でも関わらせていただいた『サザエさん』。昭和の名作だけど、今を生きる自分にもはっとさせられる感覚があるし、家族や絆など、普遍的なテーマもあらためて突きつけられました。ところで梅ちゃん、読んだ本はぽこぽこと床に積み上げるタイプ?
梅津 はい。まるでタケノコ林みたいで人に部屋を見せられないかも(笑)。
和田 同じだ。俺もよくやってた。なんか安心するんだよね、アレ(笑)。
梅津 そうなんですよ。寝っ転がりながら本を手に取れるし、戻せるし。そして高くなりすぎたらすぐ横へ、また新たなる本を積み上げていく……。
和田 わかる。周りは驚くけれど積む本人にはこだわりがあるんですよ!
Q 現在29歳の梅津さんへ、30代の先輩・和田さんから何かアドバイスは?
梅津 「今のうちにやりたいことをやれ」「遊んどけ」的に言われる機会もあるものの、気負いがないんです。30歳になったときはどんな気分でした?
和田 うん。梅ちゃんと同じように気負いはなかったよ。俺の場合はお芝居の公演中に誕生日だったこともあり、ゆる~っと30歳を迎えてしまった感じかなあ。24歳からこの世界に入ったんだけど、それまではバイトをしていたので、いわゆる普通の青春、みたいなものも満喫できたと思うし。
梅津 え、どんな青春ですか!? 言われると気になるじゃないですか!
和田 具体的に教えてやろうか~、なんて(笑)。冗談です。でもさ今の夜散歩も遊びでしょ?
梅津 はい。この仕事を続けているのも、ある意味最高の遊びで大満足。
和田 それで充分。思い残すこともないし、先を焦る必要もないんじゃない?
「プライベートで会ったりしたこと、今までなかったよね。今度、時間つくって遊ぼうか?」(和田琢磨)
「そうですよね。会いましょう! 稽古や本番で心が通じ合って、すっかり満足してました(笑)」(梅津瑞樹)
梅津瑞樹さん ジャケット¥97900・シャツ¥69300・パンツ¥59400/ビューティフルピープル 青山店(ビューティフルピープル)
和田琢磨さん シャツ¥42900/ビューティフルピープル 青山店(ビューティフルピープル) Tシャツ¥13200/ジョワイユ(Ohal)
2. 和田さんに7つのQuestion!
Q 信頼できる人とは、どんな人?
A 自分の内面に誠実で、噓のない人に惹かれます
「年上・年下に限らず、噓がないことがいちばん。僕の仕事だと、演じる役柄へどれだけ誠実に向き合っているかを問われる瞬間が多いんです。稽古場などで努力を忘れず、表現することへまっすぐな方々を見るたびに信頼できると思いますし、自分もそうありたいですね」
Q 人をすぐ信じられますか?
A 感覚が合えば信じます
「一度信用できると思えたら、すべてを受け入れようとしますね。でも『なんか違う』と感じたら、わりとすぐに心のシャッターが閉じちゃう。判断基準は……実は、自分でもいまだによくわからないんです(笑)。無意識にというか。感覚が合う人のことはすぐに信じられるのかな」
Q 「信頼関係」と聞いて、思い浮かぶ二人は?
A 『ルパン三世』のルパン&次元!
「その心は『持ちつ持たれつ。近すぎず、離れず』かな。彼らはいつもベタベタしてるわけではなくて。でも深い部分では信頼し合ってるから、お宝も一緒に狙いに行くわけじゃないですか(笑)。あの距離感は、大人同士の人間関係としてはとても魅力的です」
Q 20代と比べて、ラクになったことは?
A ときには断る勇気を持てるようになりました
「20代の頃は、誘われた集まりや飲み会には必ず参加しなきゃと思うタイプでした。でも30代に入ったら、一人で体をいたわる時間も必要だなと気づいて。たまには断る勇気を持ったら、ラクになりました。断り方ですか? 『今日はちょっと』で察してもらってます(笑)」
Q 仕事観や働き方に変化は?
A 作品全体を見据えて、動くようになっています
「無我夢中に突っ走る時期は20代で過ぎ去ったかもしれません。36歳になった今は、作品をよくするためにまずはこうしようとか。全体の中でやれることを見つけ、仕込んでおくことを意識していますね。いい意味で、予測を立てて動けるようになりました」
Q 後輩と接するときに気をつけていることは?
A 3つの「しない」が大事なポリシーかも
「自慢話、昔話、お説教。この3つは『しない』と心がけています。テレビで拝見した高田純次さんの言葉の受け売りなんですけれども(笑)。舞台『刀剣乱舞』もですが、年下と過ごす機会がどんどん増える年齢だからこそ、お互いフェアでいられる関係性を大事にしています」
Q 今日の感想は?
A スタイリッシュな光と衣装にも感じるものが
「雰囲気ある撮影で刺激的でした。長いおつきあいのスタイリストさんが用意してくださった衣装も、気合を感じましたね。今着てるコーデも好きだし、花柄のトップスも、今回出演する舞台『刀剣乱舞』の副題である『綺伝』に通じる、きれいな世界観だと思いました」
3. 梅津さんに7つのQuestion!
Q 信頼できる人とは、どんな人?
A 突き詰めていくと自分自身、なのかも
「芝居をしていると、皆さんの素晴らしさに触発されることは多々。それでも最終的にそのすごさを受け止めていくのは己の度量次第……と思うと、まずは自分をいちばん信頼したいと思っています。どんなときでも裏切らず、理解できているのは自分自身のことだと思うので」
Q 人をすぐ信じられますか?
A かなり慎重です(笑)
「人と関わるって勇気がいるし、ある意味では博打のようなものだと感じていて。とはいえ、他者に心を許さない生き方は違うと思いますし。だから僕は、人を信じられるか見定めるまで、ちゃんと時間をかけたいタイプ。疑り深いかなあ。慎重派、ってことにしておきたいです(笑)」
Q 信頼できる相手との楽しい時間の過ごし方は?
A ひたすらエチュード(即興劇)で盛り上がる!
「10年以上のつきあいになる親友とは、一緒に見ている映像作品を基にセリフを入れたり、喫茶店で近くに座っていたカップルから設定をふくらませたりと、アドリブ的な話をしたら止まらない!信頼してるからこそできるイマジネーションの遊びですよね」
Q「信頼関係」と聞いて、思い浮かぶ二人は?
A 『刀ステ』の山姥切長義(やまんばぎりちょうぎ)×亀甲貞宗(きっこうさだむね)!
「舞台『刀剣乱舞』の今回の物語でいえば、僕が演じる山姥切長義と組になるシーンが多い亀甲貞宗との関係性にも、ぜひ注目していただきたいです。二振りにはお互いを信じ合うことから生まれる、独自のバディ観があると思います」
Q 人間関係で気をつけていることは
A まずは肯定から入っています
「相手がどんな気持ちを持っているのか、自分の中で咀嚼してからつきあいたいんです。そのためには、誰に対しても肯定感から入りたいなと。苦手と感じた場合も、その感覚だけでは終わらせずに。『なぜそう思ったんだろう?』と自分の思いを認めた上で、腑に落ちるまで考えます」
Q 29歳の今、30代に理想像はある?
A 願わくば、今の状況が続いてほしいですね
「ずっと20代でいたいとか『若く見られたい』みたいな気持ちはまったくないんですが、今のお芝居や自己表現ができている状況が、この先も続けばいいなと。未来は今日の地続きですから、一つひとつ経験を重ね、気づけばいい時間を過ごしていた10年にしたいです」
Q 今日の感想は?
A 私服を買うヒントをもらいました
「照明が博物館や美術館みたいでしたね。あとハイウエストのパンツをはかせていただいて『最近の若者は脚が長いと思っていたら……服で腰の位置を上げていたのか!』と気づきが(笑)。太めのシルエットも新鮮で、私服でも挑戦してみたいと思います」
4. 今のお互いに対しての思いを、本音でトーク
極限状態を経験し、二人の信頼はさらに強いものに!
歴史修正主義者という敵と戦うために、刀剣から生み出された「刀剣男士」たち。彼らの葛藤、成長を描いた舞台『刀剣乱舞』(愛称・刀ステ)。和田さんはシリーズ最新作で座長を務め、今回の物語のキーとなる細川ガラシャやキリシタン大名と深く関わる刀剣男士・歌仙兼定(かせんかねさだ)を演じる。梅津さんは、和田さん演じる歌仙兼定とともに戦う山姥切長義(やまんばぎりちょうぎ)を演じる。この作品、実は2年前に上演が決まっていたものの、コロナ禍の中で制限があり、講談師の解説を入れた“科白劇”というかたちで上演。そして今年、満を持しての本公演に!
和田 科白劇はコロナの感染拡大が激しくなる状況の中で、どう舞台を作るのかと、全員が模索状態だったよね。「朗読劇かもしれない」とも言われたし。だから舞台上で脚本を読みながら芝居するのか、と考えていたんだけれども。
梅津 ふたを開けてみたら、普通の舞台稽古をすることになったんですよね。
和田 そう。それも恐ろしく時間がなかったでしょ。「俺、本当にできるか?」と焦ったよ(笑)。
梅津 いやあ、驚きましたよね~(笑)。でもあの短期間の稽古を、全員で乗り切れた、という……。
和田 うん。そこで強い絆が生まれた座組だからね。今回も座長としては全員に信頼感がある。特に梅ちゃんは、舞台上の安心感が半端ない。何が起きても受け止めてくれると信じられる役者なんだ。
梅津 それ、僕も同じことを感じています。もちろん演じられている歌仙兼定という、風雅を大事にするキャラや過去の共演、稽古場の積み重ねもあるんですけれども。一緒だとのびのびできるんです。
二人の初共演は、今から3年前の『慈伝日日の葉よ散るらむ』。
梅津 あの舞台はサシで芝居した場面があったじゃないですか。そのときには「この人は物事を俯瞰できる役者だ」と思いました。劇場で稽古をしてる姿もストイックな印象が強かったです。
和田 あのとき、僕は東京凱旋公演だけの参加だったんだよね。『慈伝』は梅ちゃんが注目される物語だったし、殺陣の練習を熱心にやってた記憶があります。だから第一印象は「まじめな人」。いい意味で、今もそこは変わらないかな。
梅津 光栄です。でも実はわりと、おちゃめな部分もある人なのかなとも。
和田 あら、そう見られてたか~(笑)。梅ちゃんはミステリアスな物腰と、言葉選びの独特のセンスが面白い。昔の文豪みたいな雰囲気を感じさせてくれるというか。令和の太宰治と呼びたい!
梅津 (笑)。じゃあ僕、腹を切らなきゃいけないですか? って、割腹したのは太宰じゃなくて、三島由紀夫でした。
和田 ほら、この返し方が、俺にとってはすでに唯一無二の存在なの(笑)。
役者としてお互いをリスペクトしつつも、実は物語の構成や演出の関係でがっつり共演する場面は多くなかった二人。
和田 だからこそBAILAさんみたいな女性誌で自分たち二人を取り上げていただけるのは嬉しいし、もう少し色々と話してみたいこともあるなって。今回は福岡・大阪でも公演があったり、科白劇のときよりも稽古スケジュールに余裕があるし、お互いを知る時間がつくれたらなって思ってる。
梅津 本当にそうですね。そういえば僕、わだっくまさんのこと「すごい!」と思ったエピソードが。せっかくなのでこの機会に披露してもいいですか?
和田 え、なに……?(汗)
梅津 前に雑誌のインタビューで、組ませてもらったの覚えてます?
和田 もちろん覚えてるよ!(笑)
梅津 現場で撮っていただいたメイキング動画を見返したら、カメラの前で流れるようにポーズをとられていて。所作の美しさに刺激を受けました。僕も見習いたいなと。
和田 そうだった?(照) 俺は山姥切長義じゃない梅津瑞樹の姿も見てみたいの。いつか別の場でも共演して、さらに知ったり、学んでみたいと願ってます。
「梅ちゃんはまじめで努力家。舞台の上で何が起こっても、受け止めてくれる包容力がある。」(和田琢磨)
「芝居にはとことんストイック、それでも時折おちゃめな性格が、わだっくまさんの魅力ですね!」(梅津瑞樹)
梅津瑞樹
うめつ みずき●1992年12月8日生まれ。千葉県出身。’15年、鴻上尚史氏が主宰する『虚構の劇団』の公演で俳優デビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイ問わず、数々の舞台で活躍中。舞台『刀剣乱舞』には、’19年から山姥切長義役で参加。
和田琢磨
わだ たくま●1986年1月4日生まれ。山形県出身。’09年に俳優デビュー。ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンの手塚国光役で頭角を現して以来、現代劇、時代物、朗読劇と舞台を中心に、テレビドラマでも活躍。舞台『刀剣乱舞』には’17年から歌仙兼定役で参加。
舞台『刀剣乱舞』 綺伝 (きでん) いくさ世(ゆ)の徒花(あだばな)
出演/和田琢磨、梅津瑞樹/佐野真白、松井勇歩/七海ひろき ほか
脚本・演出/末満健一
期間/3月19日(土)〜5月15日(日)東京、福岡、大阪の3場所公演。 詳細は公式Webから確認を。
人気ゲームを原案にした舞台作品。今作では歌仙兼定が刀剣男士を率い、戦国末期の熊本へ。そこには迫害を受けたキリシタン大名が集っていた。そして歌仙兼定は歴史改変の核となる人物が意外な相手だと聞かされる。
©舞台『刀剣乱舞』製作委員会 ©2015 EXNOA LLC/Nitroplus
※クレジット表記のないものはすべてスタイリスト私物です
撮影/土山大輔〈TRON〉 ヘア&メイク/城本麻紀(和田さん)、松野亜莉沙(梅津さん) スタイリスト/ホカリキュウ 取材・原文/石井絵里 ※BAILA2022年4・5月号掲載