音楽好きのライターが、バイラ読者におすすめの音楽をご紹介。今回は、10代でのデビュー以降、トレンドとは一線を画しながら独自のオルタナティブ・ポップを生み出してきた七尾旅人の最新アルバム『Long Voyage』をピックアップ!
ナビゲーター
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戸塚真琴
渋谷のクラブ「VISION」や「Contact」の閉店に時代の移り変わりを感じている。
10代でのデビュー以降、トレンドとは一線を画しながら独自のオルタナティブ・ポップを生み出してきた七尾旅人。COVID-19によるパンデミック以降は、音楽活動と並行しながら、感染者家族などに食料を届ける「フードレスキュー」の活動を継続。そんなさなかに作り上げた作品が、今回のニューアルバムだ。
アコースティックサウンドと、七尾の心地よい歌声とともに、メッセージ性の強い曲が収録されている。先行配信もされた「未来のこと」では、コロナにより先が見えなくなってしまった当時の様子と、その中でも消えることのない未来へ向けた希望が綴られる。アルバムのジャケットにも登場する愛犬たちとの日常を描いた「Dogs & Bread」があったり、そうかと思えば、出入国在留管理庁における外国人の人権問題をテーマに書かれた「入管の歌」があったりと作品の内容は多岐にわたる。
時代と想いが刻まれた今作。今を思い返しながら、時代を超えてもなお聴き直したくなるアルバムだ。
『Long Voyage』
¥4180/SPACE SHOWER MUSIC
COVID-19によるパンデミックの中、放置された感染者や困窮者に食品を配送する「フードレスキュー」を継続しつつ、完成させた2枚組のアルバム。全17曲収録。
七尾旅人
シンガーソングライター。’98年のデビュー以来、ファンタジックなメロディで世界の現実を描き続け、「うた」のオルタナティブを切り開いてきた。
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2022年11月号掲載