当サイトでは当社の提携先等がお客様のニーズ等について調査・分析したり、お客様にお勧めの広告を表示する目的で Cookieを利用する場合があります。詳しくはこちら

  1. BAILA TOP
  2. LIFESTYLE
  3. エンタメ・インタビュー
  4. 【働く30代を癒す“現代短歌”のすすめ】…

【働く30代を癒す“現代短歌”のすすめ】ブームの火つけ役の一人、岡本真帆さんにインタビュー

現代短歌に癒されているバイラ世代が昨今増えているらしい! バイラ読者と同世代の歌人で短歌ブームの火つけ役の一人、岡本真帆さんにインタビュー。歌人になったきっかけ、短歌をつくる上で意識していることなどを聞いた。

特殊な印象が強い短歌ですが、“普通”の中に題材があります

岡本真帆さん

短歌で自己表現がしたいと、社会人3年目で創作を始めた

会社に勤めながら、歌人として短歌をつくり続けている岡本さん。2022年に発表した第一歌集『水上バス浅草行き』は、発売から2年がたった今も、重版が続いている。これは自費出版が多い短歌の世界の中では、かなりの大ヒット! 彼女の歌が多くの人に知られるきっかけとなったのが、X(旧Twitter)に投稿した、とある一首だった。

「“ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし”という、第一歌集にも収めた自分の歌を使って、短歌仲間と遊んでいたんです。短歌の世界では“付け句”といわれている遊び方なのですが、“ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし”という上の句に、オリジナルの下の句をつけてSNSに投稿。これがどんどん拡散されていき、多くの方が参加して……。あまりにも広がりすぎたおかげで、お褒めからご指摘まで、いろんな感想をいただいて。マイナーだと思っていた短歌がこんなに多くの人の目に触れている事実に、驚きと嬉しさが入り混じり、不思議な気分でした(笑)」

短歌を始めたのは、社会人3年目。

「当時は広告関係の会社でコピーライターやプランナーとして働いていました。仕事で文章を書くうちに、もっと自分の言葉で感じたことを表現したいと思うようになったんですよね。学生時代から歌人の穂村弘さんが担当されていた雑誌の短歌連載を愛読していたこともあり、“仕事に慣れてきた今なら短歌、つくれるかも”と。穂村さんが書かれた入門書や、好きな歌人たちの歌集を読みながら創作をし、投稿も始めました。ちょうど同世代の歌人・木下龍也さんが注目され出した時期とも重なって。木下さんからもいい影響を受けました」

岡本さんはその後、転職。今はコミックやWeb関連の会社で働いている。自身としては「会社員と歌人、両方の肩書きがあるほうが自分にとっては心地がよい」のだとか。

「短歌だけで食べていくのは難しいという現実もありますが、会社員として普通の生活をしながら心の中で感じたことを歌にし、SNSに投稿する……この創作スタイルが、私には合っていると感じています」

高知と東京の二拠点生活は創作に刺激を与えてくれる

ちなみに勤務先はフルリモートOKで、コロナ禍を機に’22年から高知と東京で二拠点生活をしている。

「高知の住まいは、市内の中心部から2時間半ほど。映画を一本観に行くのも、一日がかりのイベントになります。文化的なものから少し距離を置き、大きな山や川に囲まれていると、都会で暮らしているときとは別の視点から歌が生まれます。両方を行き来する時間には、自分の思考がいかに環境に左右されているのか、実感することも多いですね。その上で、自分にとって大切なモチーフに気づいて、日々の出来事を振り返るように短歌をつくることが増えました」

最近、第二歌集も発売に。

「私は、自分の喜びのために短歌を詠んでいますが、読者の方に『岡本さんの歌を日々のお守りにしています』『背中を押してもらいました』とお手紙をいただいたことがあり、とても感激しました。三十一音に込めた世界を、それぞれの立場から楽しんでいただけたら嬉しいですね」

本当に
正しかったか
わからない
決断たちよ
おいで、雪解け


第二歌集『あかるい花束』所収

平日の
明るいうちから
ビール飲む
ごらんよビール
これが夏だよ

第一歌集『水上バス浅草行き』所収

岡本真帆さん

短歌ブームの火つけ役の一人

岡本真帆さん


1989年、高知県生まれ。大学を卒業したのち、2014年から短歌の創作と投稿を開始。未来短歌会「陸から海へ」出身。最新歌集『あかるい花束』が発売中。X(旧Twitter)では、最新情報はもちろん、作品も意欲的に発表している。

『あかるい花束』 岡本真帆著 ナナロク社 1870円

『あかるい花束』
岡本真帆著
 ナナロク社 1870円

撮影/森川英里 取材・原文/石井絵里 ※BAILA2024年7月号掲載

Feature特集

Feature特集

Rankingランキング

  • ALL
  • FASHION
  • BEAUTY
  • LIFESTYLE
  • EDITOR'S PICK