スタイルを持つ人は、ファッションにも、インテリアにも共通のセンスが光る。BAILAで活躍するスタイリスト・エディター・料理家のお宅に潜入し、思わず真似したくなる“洒落感と心地よさのヒント”を探ります。
【スタイリスト 百々千晴さん】名品家具とアートに囲まれて
「DODOTUBE」やインスタライブの舞台としてもおなじみの百々千晴さんのお部屋を深掘り!
DODO's HOUSE ルームツアー!
無造作な印象のインテリアに美意識とキュートな人柄がにじむ
リネンカーテンごしに差し込む自然光が気持ちいい、スタイリスト百々千晴さんが住むヴィンテージマンション。「コロナ禍のときに引っ越したので、住んでから5年くらいになります。水回りなど、ユーティリティの使いやすさを考えると、新築の家のほうが住みやすいに決まっているけど、天井の高さとか、間取りやドアにゆとりのある感じ、それから変にピカピカしていない風合いのよさは、やっぱり代え難いものがあるんですよね」
Entrance
エントランスには姿見と、旧知の写真家・髙橋恭司さんの風景写真が並ぶ。
Living Room
コージーなリビングに、自ら手がける「ザ シシクイ」のピンクのビッグニットとデニムの色が映えてお似合い。「家族全員がここでごろごろしてる」という「ボーコンセプト」の広々としたコーナーソファの上には、3本のアームが軽やかな「イデー」のペンダントライトが洒落ている。
Dining Room
ダイニングに目を向けると、クリス・ディ・ヴィンセントの大きなペインティング作品が。がっしりした木のテーブルを、ミッドセンチュリーのオリジナルチェアと、子どもの成 長に合わせた「ストッケ」のチェアが囲み、ボリュームのある観葉植物がナチュラルに葉を揺らす。スタイリッシュなのに、どこか温かみを感じさせる無造作感。アートやヴィンテージがしっくりなじむ空間に、百々さんらしいセンスが投影されている。
センスが表れるミニコーナー
「名作と言われる家具もあるけれど、『イケア』や『アマゾン』にも、使い心地やデザインのいいものはある。そこは自分の感覚に合えばいい。でも例えば、家の中はいつもキャンドルでふわっと広がるいい香りで満たしたいとか、そういう心地よさにはこだわりたいです」
リビングのテレビコーナーには「ディプティック」のキャンドルや「ウカ」のフレグランスオイルなど香りもの、さらにグリーンなど、審美眼が光る。
百々千晴さんの部屋で見つけた名品コレクション
広々ソファとモダンなペンダントライト
リビングと窓辺を占める「ボーコンセプト」のコーナーソファ。頭上にはセルジュ・ムーユがデザインした3本アームのモビールのような照明。空間のアクセントになっている。
無造作に置いた子どものアートと絵本
グリーンにつるした折り紙細工は、お子さんがつくった七夕の飾り。ヴィンテージのテレビ台には絵本を重ねて無造作に。ほどよい暮らしの気配が、微笑ましくて温かい。
「ルラボ」のお気に入りキャンドル
様々なフレグランスの中でも「ルラボ」の香りがいちばん百々さんの好みなのだとか。NY発のパフューマリーらしくクリーンでスタイリッシュな見た目も、インテリアによくなじむ。
ダイニングのコレクターズチェア
右はシャルロット・ペリアン、左はピエール・ジャンヌレの作。どちらもミッドセンチュリーの名品チェア。ダイニングはほかにアーコールチェアも置いて、日常づかいしている。
作家モノのコーヒーカップ
フチの内側にユーモラスな表情が描かれたコーヒーカップは、アーティスト、マドカ・リンダルの作品。友人のヘア&メイクアップアーティスト、ナギサさんからのプレゼント。
自炊はほとんどしないけど…センス抜群のキッチン用品
キッチンにはあまり立たないというけれど、1合炊きの鍋、「ストウブ」のラ・ココット DE GOHANや、クリーンなウッドボード、愛らしいグリーンのあしらいなど、センスがキラリ。
百々千晴さんのファッションとインテリアの関係
私服も住まいも同じ感性で選ばれているから、どこにいても、どこから見ても“絵になる”のが素敵!
服も家具もアートも、同じ気分でコーディネートしているかも
シルエットがきれいで愛用しているペインターパンツに、この冬の「ザ シシクイ」の新作パープルニットを合わせて。ダイニングに飾っているものと同じクリス・ディ・ヴィンセントのアートがかかっている廊下は、ドアの色ともマッチして、お気に入りのコーナー。「自分のスタイルを形づくるという意味では、ファッションもインテリアも考え方は一緒なのかなと思います。愛着をもって使うものもあれば、新しく書き換えていくものもある。もちろん家具やアートのほうがボリュームがあるから、総入れ替えは難しいけれど。コツコツと好きなものを更新して変えていくほうが、やっぱり気分がいいです」
ラフに置いたファッションアイテムが洒落感たっぷり
「J&M DAVIDSON」のバッグをドアノブに。絶妙な配色と思いきや「普通に置いとくとフリンジがくずれちゃうので、偶然です(笑)」
日常的につけている時計とアクセサリー。最近はニュアンスカラーが多め。
シューズは玄関に出して置いて、出かける前に姿見でチェック。
【スタイリスト 佐藤佳菜子さん】和モダンをベースに新旧のMIXが心地よい
理想の物件に出会い、2匹の愛犬とともに新生活がスタート。選びの決め手や今の気持ちは?
さとかなさんが新しい部屋に引っ越したら…
好きなものだけを、バランスよく整えた、ノーストレスな空間
「この家はね、ベージュのものしか入れないんです」といたずらっぽく笑うスタイリストの佐藤佳菜子さん。カーペットも、壁も、家具も、そして愛する2匹の愛犬も、見事にシックなベージュのグラデーションを織りなしている。「今日のコーディネートは完全に部屋にそろえました。ニットは『ボッテガ・ヴェネタ』、パンツは『ロエフ』、ルームシューズは『ウーフォス』、ポメラニアンのりっちゃんとチワワのピグミがポイントです(笑)」。
落ち着いたぬくもりがあるけれど“ほっこり”ではない、大人ムードに満たされた空間はさすが。ファッションにおいても、きれいめスタイリングの達人は、インテリアのセンスもずば抜けて洒落ていました。
この家を新居に選んだきっかけを聞くと、間取り図を見ての直感だそう。
「余計な凹凸などがない、直角で構成された明快な間取りが好きなんです。収納もたっぷりあって、リビングの日当たりもいい、なにより、動物を何匹飼ってもいいという必須条件を満たしていました」。一人と2匹の暮らしのために、メインの家具の多くは新たに購入。「例えば、『将来家を買ったら理想のインテリアにしよう、だから今は我慢しよう』みたいな考えはやめたんです(笑)。自分の家は、今、ここで自分の自由な“好き”だけで満たしたい!」。
【Living Room】古いもの、新しいものをミックス
張地をオーダーした白木の「カリモクケーススタディ」のソファとダイニングセット、「HAY」のペーパーシェードの丸いランプ、昭和期の日本製アンティーク食器棚など、すっきりとシンプルなデザインが、さとかなさんらしい。ルーツは様々だけれど、洗練された和モダンがインテリアの基調になっている。
張地をオーダーした白木の「カリモクケーススタディ」のソファとダイニングセット、「HAY」のペーパーシェードの丸いランプ、昭和期の日本製アンティーク食器棚など、すっきりとシンプルなデザインが、さとかなさんらしい。ルーツは様々だけれど、洗練された和モダンがインテリアの基調になっている。
アンティークの流木を用いたサイドテーブルがコーナーの主役に。
「照明は北欧とアジアのものを、丸い形で統一。流木をそのまま用いたオブジェのようなサイドテーブルに、日本の古い家具と新しい家具などをミックスしています。テイストは様々で、心のおもむくまま、惹かれたものだけを集めました。だけど秩序のあるものが好き(笑)なので、色をまとめたり、置く位置の高低差で間のリズムをつけて、バランスをとっています。そうすると、部屋のどこを見ても心地いい。でき上がった空間に、個人的に偏愛する壺や器、アートをディスプレイ、四季折々の植物で、気分に合わせた変化を楽しんでいます」
【Bed Room】寝室は圧巻のベージュグラデ
リネンやサイドチェスト、時計などの小物もベージュで統一。
一人がけソファの足もとには、愛犬たちのベッドも。奥のディスプレイスタンドは、オリジナルオーダーのもの。
佐藤佳菜子さんの部屋で見つけたセンスの秘訣
四季を感じさせる和の花と枝物を大胆に
「近所に渋くて地味な(笑)、でもセンスのいいお花屋さんがあるんです。このコーナーにこの花器で飾りたい、と伝えると奥から立派な和の植物を出してきて、見事なバランスで大胆な提案をしてくれる。玄関とリビングのコーナーに飾ったあとは、ベランダへ。葉が落ちてしてしまっても、枝ぶりが美しいので長く楽しませてくれます」
和の花あしらいには、お香が似合う。京都の老舗「山田松香木店」のものを愛用。
ベランダには鉢物のほかに、室内で楽しんだ枝物も。
玄関には古い日本の格子の建具を置き、洒落た和のアレンジでゲストをお出迎え。
好きなものは貴賎を問わず集める
「器は華やかなものが多く、必ずしも実用性は求めていません。新しいもの、古いもの、高価なもの、ガラクタ的なもの、好きなアイテムはテイストを問わずミックスして飾ります。伊万里の隣にインドの器があったり、南部鉄瓶と英国のティーポットが並んでいたり。イギリスで暮らしていたときに身につけたセンスかもしれません」
花を生けなくても、転がしておくだけでサマになる壺やベース。インド、日本、北欧のものが混じり合う。
テーブルコーディネートは、最近赤がキーカラー。
様々な国籍の茶器を黒で統一し、インドの真鍮のトレイの上に。
日本伝統の水屋箪笥を小さくしたようなデザインなのに、どこかモダンなたたずまいが気に入ったアンティークの食器棚。
愛犬たちの居心地は、何より優先
「繁殖犬という過酷な境遇から保護されて我が家に来たポメラニアンの“りっちゃん”は、この先悩みもなく、好きなものに囲まれのびのびと過ごしてほしい。長いつきあいのチワワの“ピグミ”は猫みたいな性格をした犬。最近は高級座布団の上がお気に入りのご様子です」
本名“Lilie”の刺しゅう入りおもちゃを表札がわりにしたりっちゃんのおうち。さとかなさんのベッドの横で安心。
伝統の職人技でつくられた「丹羽ふとん店」のミニ座布団に、ピグミが鎮座します。いい風格!
佐藤佳菜子さんのファッションとインテリアの関係
噂の整頓上手のクローゼットルームにも潜入。クリーンな空間づくりは着こなしにも通じる!
一部屋をクローゼットにして家の中の空気を切り替える
さとかなさんといえば、親友であるエディターの東原妙子さん邸の大掃除でもおなじみ、合理的な収納システム理論を持つ整理整頓の達人。「もうね、妙ちゃんのカオスな家と比較してほしい、いや、なんの比較にならないけど(笑)」。一箇所にまとめた衣装部屋は、ワードローブが一目瞭然。「好きなものを飾って居心地を重視したリビングやベットルームを静とするなら、仕事場を兼ねたここは動の部屋。自分だけでなく人を招いてくつろぐリビングと、自分一人であれこれ考えるクローゼットという対比もありますね」。役割を切り替えて、どちらも理想的に整える、聡明なさとかなさんらしさにあふれた空間の使い方に、脱帽!
「ジュエリーだけは捨てないんです。チープなものもとっておいて、ジャラジャラつけたおばあちゃんになりたい!」とさとかなさん。ボックスに整理して、スタメンだけを最前列に。
色別のグラデーションで整然と分けられたトップス。アウター、ボトムコーナーも同じように、ベーシックカラーが無限に並ぶ。
まるでバッグショップのように陳列されている美しい整理術。自立しないものは、透明のアクリルスタンドで立てるこだわりっぷり。
【美容エディター 前野さちこさん】暮らすと働くをともにする空間
大胆な間取りで、居心地よく、どこか非日常感も味わえる家
美容エディターの前野さちこさんの新居は、ちょっと“日本離れ”した空間。玄関を入ると伸びやかな天井高のスタイリッシュなリビングが広がる。一軒家の1フロアが居住スペースで、残りの2フロアがスタイリストの夫の仕事場、撮影スタジオになっている。
「夫も私も家で仕事をする人間。生活の仕方を建築家に相談し、一から設計しました。広々としたLDK以外は、大胆にカット。水回りや寝室は最小限の広さなんです。普段は基本的に私が独占(笑)。特製のワークスペースにコスメを収納し、キッチンの横で仕事をしています。二人ともあまり外出せず、長時間を家で過ごすため、この開放的なリビングは精神衛生上とっても大切。家にいながら旅をしているような気分になれるので、こだわったかいがあったように思います」。
「ザ・ロウ」のゆったりとしたパンツスタイルでたたずむ姿は、まるでバカンスにきたよう!
こだわりのリビング&ダイニングをclose-up!
リビングと一体化した、造作のダイニングキッチン。「コンクリートとウッドの組み合わせで、雰囲気が洒落すぎず、ほどよいぬくもりがあります。気持ちよく仕事がしやすいです」。
壁面に沿ってデイベッドも造作で。アートブックを置いた様子は、海外のホテルのようなムード。
前野さちこさんの部屋で見つけたオリジナル収納
仕事柄、コスメを大量にお試しする前野さん専用の、収納兼ワークスペース。リビングの一角につくりつけられた「箱」を開くと……
棚とミニデスクが出現。「リカちゃんハウスみたいで気に入っています(笑)」。
「洗面所に直結しているので、試したいアイテムを『HAY』のボックスに入れて、そのまま持ち運べるのも便利」
【料理家・管理栄養士 長谷川あかりさん】美味しいカラーを部屋にもちりばめて
服も料理も生活も、きれい色がポジティブなパワーをくれる
「リーン・ロゼ」のソファと「ジル・サンダー」のニットのブルーが素敵にマッチ。料理家・長谷川あかりさんの住まいは、見晴らしのいいマンションの一室。ホワイトのモダンな空間に、カラフルな原色のインテリアが随所に映える。
「仕事である料理にせよ、ファッションにせよ、私は色からパワーをもらうことが多いです。元気が欲しいから赤、滞っているときはグリーンみたいに、口に入れるものも、身につけるものも基準は一緒。だから暮らしの中で目に入るものも、明るい色を選びがちです」。チャーミングなぬいぐるみや壁のイラストなど、食べ物のモチーフで飾られた二人暮らしの部屋から、楽しげな空気が伝わってくる。
驚くのは、居室の雰囲気とは対照的に、キッチンはコンパクトで機能性重視であること。目からもポジティブな栄養をもらえる長谷川さんの料理と、服と家。気分があがる色使いの共通点に、納得!
ダイニング&キッチンは意外にもコンパクトでシンプルな空間
「皆さんの家にあるような普通のキッチンなんです(笑)。私はレシピづくりもキッチンにこもるより、明るいダイニングやリビングで考えることが多くて」。
明るいダイニングの奥に、コクピットのようにコンパクトな台所が。「moda en casa」のダイニングテーブルと「ウニコ」の椅子は、どんな料理も引き立てるモノトーン。ペンダントランプは、ガラス作家、奥平明子さんの作品。
気分高まるこだわりの小物たち
益子在住の作家ものの器たちとアンティークのグラスは、普段の食事やレシピの発信などに使うもの。「白いお皿が多かったのですが、最近色にも惹かれます」。
「仕事柄ネイルがあまり楽しめないので、手もとを彩るジュエリーには目がありません」
コンパクトなワークスペースを、食べ物モチーフのぬいぐるみや、「アスティエ・ド・ヴィラット」の野菜オーナメントなどがキュートに彩る。
長谷川あかりさんの部屋で見つけたさし色アイテム
海外のクッキングブックの、センスのいい装丁に惹かれる。「日本ではなかなかない大胆な色づかい、自分のレシピ本の参考にもしています」。
「ジェリーキャット」の野菜や卵のぬいぐるみコレクション。「夫が海外のスーパーに行ったときのお土産から始まり、仲間が集まってきました」。
友人のアーティストISOCOさんに描いてもらった作品も、ビタミンカラーの野菜モチーフ。
シンプルで簡単なのに、栄養学的にも満点の美味しいレシピ発信が働く30代から支持を得ている。本誌連載「長谷川あかりのご自愛ごはん」も好評。
撮影/ノエル ジョシュア(百々千晴さん分)、上澤友香(佐藤佳菜子さん・前野さちこさん・長谷川あかりさん分) ヘア&メイク/nagisa〈W〉(百々千晴さん分) 取材・文/久保田梓美 ※BAILA2025年2・3月合併号掲載