今、自宅でもオフィスでもない、お気に入りの土地で自分の時間を楽しむ大人の女性が増えている。今回は、そんな居心地のいい「サードプレイス」にきっと出会える鳥取県琴浦町の旅をナビゲート。忙しく働く日々からほんの少し離れて、自分と向き合う大切な時間を過ごして。
海はもちろん、名峰・大山もすぐそば。鳥取県の真ん中辺り、日本海側に面した小さな町・琴浦町は、いわゆる“観光地”にはない暮らしが息づく、“自分だけの何か”が見つかる穴場スポット。旅好きな女性のディスティネーションともいえる町は、美しい自然と文化に満ちている。
訪れてみると、まず驚くのが海の美しさ。明るく澄み切ったコバルトブルーの海は、南国を彷彿とさせるほど! 〈鳴り石の浜〉は絶好のヒーリングスポットで、その名の通り、石の浜が波の満ち引きに合わせて「カラコロ、カラコロ」と鳴り、自然の奏でる音に癒される。
小さな町のあちこちで出会える、パワーあふれる自然と感性に響く文化。
塩谷のセンスや息づかいを感じるギャラリー
ソフトフォーカスの写真は、今見てもモダン
2階からの風景。波の音が心地よい
建物自体も素敵で、建築好きにもおすすめ
建築や写真が好きな人におすすめなのは、「塩谷定好写真記念館」。日本の芸術写真の道を拓いた偉大な写真家塩谷定好の生家を活用していて、この地の繁栄の歴史と文化の跡をぎゅっと凝縮したような場所になっている。
作品はもちろんのこと、海を臨むロケーションや贅をつくした意匠にもうっとり。館全体から作家のセンスや自然観が感じ取れて、自分の感性まで磨かれた気分になるはず。
海の上に立つパワースポットとしても知られる神社
「幸せを呼ぶ玉(宝珠)」を持った龍の彫刻は、精巧で迫力があり圧巻!
贅をつくしても自然や暮らしに溶け込んでいるのが琴浦町の文化の魅力で、土地の人々の人柄や暮らしぶりを表しているよう。‟赤碕の荒神さん”の呼び名で親しまれる「神﨑神社」もそのうちのひとつ。しめ縄は「出雲大社」を、彫刻は「日光東照宮」を思わせるほど立派で、拝殿の天井の龍の彫刻などは、頭上から気が降り注ぐかのような迫力。それでいて派手派手しさはなく、楚々とした面持ちが、静かな町にしっくりなじんでいる。
後醍醐天皇が一時政権を司っていた、歴史的パワースポット・船上山。
自然と文化、人々の暮らしが調和した美しい街なみ
散策の途中も、自然の美しさに何度も足を止めたくなるはず。建物も車も視界に入らない、大地と空だけのニッポンの原風景ともいえる景色は琴浦の大いなる魅力で、忙しい毎日を過ごす私たちにとって何よりの癒しになりそう。
牛は肉から骨まで、おやつも本物志向。日常の味の素材やクオリティに手を抜かない
土地のおいしいものを味わうのは、旅の最大のミッション。お取り寄せ全盛時代だけれど、土地の空気に勝る調味料はナシ。
琴浦町ではまず、東伯和牛を味わいたい。「牛肉?」と、驚くかもしれないけれど、日本の和牛のことはじめ、1966年の第1回和牛能力共進会で一等になった名牛「気高」は、鳥取県生まれ。琴浦町産の「東伯和牛」も、通が知るブランド牛。バラエティ豊かな部位が揃う専門精肉店やホルモン自慢の焼肉店など、産地ならではの店に行くのが楽しい。
「東伯和牛」は知っているけど、「牛骨ラーメン」は聞いたことがない人も多いのでは? 名前からしてB級感満載だが、牛骨ラーメン目当てに琴浦町を再訪したくなると評判。町内屈指の繁盛店「たかうな」のそれは、とんこつ的こってり味を連想するけれど、むしろ澄み切ったスープの清らかさと凝縮感がフレンチのコンソメのよう。‟牛を余すところなく”という精神から生まれたという誕生秘話もぐっとくる。
「たかうな」の店主の「牛がいいから、骨もいい」という言葉が、この町の食の本質。日常の味でも、素材、クオリティは譲らないのが琴浦らしさといえる。
町内で人気の「山本おたふく堂」のふろしきまんじゅうは、一見ふつうの黒糖饅頭だけれど、素材のよさと、保存料を使わない昔ながらの製法が上品な味に出ている。社長自ら店頭で接客し、町の人が世間話しながらおやつに買っていく。地元で愛されている「大山乳業」は、牛乳はもちろんのこと、バターやスイーツもバラエティ豊かで楽しく、工場直営のショップは訪ねる価値あり。「パティスリーモンテ」では、町内でも評判の「大石果樹園」のフルーツがタルトやパフェにふんだんに使われていた。
おもてなし用の豪華なごちそうより、土地の人が長年、あるいは毎日食べ続けるものこそ気になったり、うらやましくなったりするのは旅の常。琴浦では万事がその調子で、再訪するきっかけにもなりそう。
この小さな町は、自分だけのお気に入りの居場所、“サードプレイス”に出会える予感に満ちている。
琴浦町ふるさと納税
琴浦町のふるさと納税返礼プランでは、大人気の「モノ」に加え、「旅」が登場。今回ご紹介したスポットも、ふだんはアレンジできない特別なガイドや、おみやげつきなどお得な特典つきで訪問できる。琴浦町ふるさと納税プランは、ホームページからチェックしてみて。
●お問い合わせ先/琴浦町観光協会
0858-55-7811
撮影/長谷川潤 取材・文/佐々木ケイ