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【“管理職の今”がわかるキーワード】日本で管理職のなり手が少ない原因とは?

本来は喜んでいいはずの“昇進”。なのに、管理職になるのを嫌がる人がここまで多いのはなぜなのか。『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』の著者が、その原因や有効な対策を詳しく解説! 今回は、女性役員比率、プレイングマネージャー、回避型マネジメント・マイクロマネジメントなどのキーワードから“管理職の今”を読み解きます。

お話を伺ったのは

パーソル総合研究所

小林祐児さん


NHK放送文化研究所、総合マーケティングリサーチファームを経て現職。労働・組織・雇用に関する多様なテーマを研究。著書に『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(集英社インターナショナル)など。

【現状1】女性役員比率19%の目標

【現状1】女性役員比率19%の目標

「これは政府が2023年に発表した目標。男女共同参画局が公表した2022年時点のデータによると、女性役員比率の平均は、日本以外のG7加盟国の38.8%に対して、日本のプライム上場企業は11.4%でした。労働力としての女性の割合は増えている一方で、役員および管理職がなかなか増えない原因は日本企業の昇進構造にあります。総合職の社員を平等に選抜するため時間がかかり、管理職になる平均年齢は他国と比べて10年ほど高い。女性にとっては出産して未就学児を育てる年齢も選抜期間に含まれるため、管理職になることを早々にあきらめてしまう人がとても多いんです

【現状2】プレイングマネージャー化

「“プレイングマネージャー”とは、部下の指導などを行うマネージャーと、現場仕事を行うプレイヤーとしての役割をともに担う人のこと。少子高齢化による人手不足や成果主義のトレンドによって、バブル崩壊後から増加の一途をたどっています。成果を上げ続けるためにプレイヤー業務を余儀なくされ、その結果、マネージャーとしての役割がおろそかになり部下が育たない。管理職のファーストキャリアである課長クラスが陥りやすい、悪循環のひとつです」

【現状3】360度評価

多面評価とも呼ばれ、上司や部下、同僚など複数人で従業員を評価する手法。評価の客観性を保てるなどの理由から近年、多くの企業が取り入れています。しかし現時点では、その効果は微妙。なぜならば部下が上司を評価する場合に、好き嫌いで評価してしまうことが多いんです。部下からよく思われていないと知った上司はショックを受けて、ますます育成に消極的になる。上司と部下の関係性が悪化してしまった、という話をよく聞きます」

【現状4】複線型人事制度

【現状4】複線型人事制度

「複数のキャリアコースから、従業員が自ら選択できる人事システムのこと。近年、人件費の高い管理職を増やさずに長期雇用を続けるため、部下を持たない“スペシャリスト等級”を設ける企業が増加。その影響で誕生した制度です。管理職になりたくない人には有益ですが、管理職からすれば、負担なく年次に見合った給料をもらえるスペシャリスト等級はズルいと感じますよね。しかも管理職には残業代を払わない企業も多いため、責任が増えても給料はほとんど変わらず管理職=罰ゲームのように感じられる原因となっています

【現状5】回避型マネジメント・マイクロマネジメント

【現状4】複線型人事制度

「プレイングマネージャー化が進むことで忙しくなった上司は、部下のミスで自分の業務がさらに増えることを防ぐため、仕事を細かく指示する“マイクロマネジメント”を行うようになります。さらにハラスメント対策の厳格化によって、部下を叱らない&誘わないことで摩擦を回避する“回避型マネジメント”もトレンドに。それらの相乗効果によって部下を育てる余力も気力も失い、最終的には自分で部下の仕事を負担してしまうことも、管理職の激務化につながっています

管理職はやりがいも多く転職にも有利に働く!?

「『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』を執筆した背景には、女性の活躍推進を題材にしたコラムへの大きな反響があります。業務は増える一方で給料があまり上がらない、そんな罰ゲーム化の影響を最も受けやすいのは女性で、それが日本全国のあらゆる業種において女性の社会進出が進まない原因になっています。

アンケート結果のとおり、現在日本で管理職を志す女性はとても少ない。無理をする必要はないけれど、迷っているなら挑戦する価値はあると思います。家族との両立にハードルを感じる人が多いですが、現代は家事代行やベビーシッターなどのサービスがあります。家事・育児をアウトソーシングしない日本の文化は、女性活躍を妨げる要因のひとつ。アメリカではパワーカップルほど子どもを預け仕事や夫婦の時間を確保します。家事も育児も適度に人に任せれば、選択肢はぐんと増すはずです。

管理職の現状は厳しいですが、実は辞める人は意外と少ないんです。それは苦労相応のやりがいがあるから。収入の向上や、部下の成長を実感することの喜び、そしていちばんは、非管理職にはないビジョンが持てること。大きな仕事を任されて社内外で自分の裁量の範囲が広がりますし、経営陣や投資家との関わりも増えて視座が高まります。

管理職になると転職が難しくなると考える人もいますが、管理職は目標設定や組織運営など、様々なマネジメントを行う中で、ピープルマネジメントと呼ばれるスキルが身についていきます。抽象度が高い能力ではありますが、きちんと言語化さえできれば転職は可能。女性の管理職経験者を求める企業は多く、現役プレイヤーよりも需要が高いともいえるかもしれません」

撮影/花村克彦〈Ajoite〉 イラスト/3rdeye 取材・原文/中西彩乃 ※BAILA2025年1月号掲載

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