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【市川紗椰の週末アートのトビラ】東京都美術館「ミロ展」をご案内

市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第33回は東京都美術館で開催中の「ミロ展」を訪問しました。

今月の展覧会は…「ミロ展」@東京都美術館

“知っているようで知らなかった人気画家の新たな発見と人間的魅力に、心動かされる”

市川紗椰さん 東京都美術館でミロ展をご案内

市川紗椰が語る 「ミロ展」

有名な画家や作品に生で向き合ったとき「今まで知っているつもりで、何も知らなかったんだ!」と驚くことがあります。ジュアン・ミロがまさにそう。「カラフルで可愛くて、日本で人気よね」なんて思いながら訪れた『ミロ展』。彼の生涯と作品に触れ、私はわくわくしっぱなしでした。

1893年生まれで1983年に亡くなったミロの活動期間は、20世紀の歴史と重なります。初期は古今東西の美術を吸収し、キュビスム、フォーヴィスムを経て、1920年代のパリでシュルレアリスムの作家と交流を持ち、彼自身も代表的な存在と言われるようになり……。美術史をたどるように変化する彼の作品ですが、最初から全部“ミロらしい”ことに驚き! 多様な作品にインスパイアされつつ、ここまで絵に個性を表すことができるのか、と感心します。無邪気な子どもの絵のような線で描かれた人の顔や図形も、素描を重ね、形や構図を深く検討した上で生まれたものだそう。誰もが一見して「可愛い!」と思うミロの絵には、作家の情熱と技巧が込められているのかと納得しました。やがて戦争に翻弄されるミロ。ヨーロッパを転々としながら、故郷と家族を想って描いた〈星座〉シリーズにも胸を打たれます。戦後、大家と言われるようになっても、地元のためにFCバルセロナ75周年のポスターを描いたり、現代美術の最前線に刺激を受けて彫刻や大型作品を制作したり。それも変わらない“ミロらしさ”。芸術を一部の金持ちに独占させることを嫌い、家族を愛し、真摯に作品を作り続けたという人柄もうかがえます。

ほぼ1世紀にわたる美術と社会の歴史を、稀有な一人のアーティストと一緒に巡る旅のような展覧会。見終えてみると、私は、ミロのことがずっと好きになっていました。

90年の生涯が、まるごと20世紀という時代に重なっていて、タイムトラベル的な面白さも!

市川紗椰 「ミロ展」@東京都美術館 手前右から『女と鳥』(1967年)、『座る女と子ども』(1967年)、『紳士、淑女』(1969年)

手前右から『女と鳥』(1967年)、『座る女と子ども』(1967年)、『紳士、淑女』(1969年)。
ブロンズにカラフルな着色を施したオブジェたち。タイトルからの想像も楽しい

市川紗椰…「ミロ展」@東京都美術館 初期の作品(右)『ヤシの木のある家』(1918年)と(左)『シウラナの小径』(1917年)

初期の作品(右)『ヤシの木のある家』(1918年)と(左)『シウラナの小径』(1917年)。
たった1年で大きく画風を変化させながら、すでにぶれない“ミロらしさ”を感じる 

市川紗椰…「ミロ展」@東京都美術館 『オランダの室内Ⅰ』(1928年)は、ヘンドリク・ソルフ『リュートを弾く人』(1661年)の絵葉書を見て描いた作品

『オランダの室内Ⅰ』(1928年)は、ヘンドリク・ソルフ『リュートを弾く人』(1661年)の絵葉書を見て描いた作品。
原画と見比べられるように展示されています

市川紗椰…「ミロ展」@東京都美術館  〈星座〉シリーズ(1940〜41年)は、第二次世界大戦の戦禍を逃れながら制作された

〈星座〉シリーズ(1940〜41年)は、第二次世界大戦の戦禍を逃れながら制作された。
紙に描かれているのはトランクに詰めて各地を転々としなければならなかったから。暗がりに浮かび上がる展示から、様々な想いが伝わってくる

市川紗椰…「ミロ展」@東京都美術館 孫のために描いた『絵画(エミリ・フェルナンデス・ミロのために)』(1963年)

孫のために描いた『絵画(エミリ・フェルナンデス・ミロのために)』(1963年)。
みんながひと目で好きになる、明るい印象の作品

市川紗椰…「ミロ展」@東京都美術館 『焼かれたカンヴァス2 』(1973年)

『焼かれたカンヴァス2 』(1973年)。
完成した絵を破壊! 80歳のときの作品とは思えないほど前衛的。だけど、長い生涯をたどった先にこの作品を見ると、一貫した“らしさ”がビシビシ伝わってきて、なんだか嬉しくなってきます

トビラの奥で聞いてみた 市川紗椰×東京都美術館 学芸員 髙城靖之さん対談

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは… 東京都美術館 学芸員 髙城靖之さん

市川 「毎年どこかでミロ展をやっている」というイメージがあるほど人気ですが、ここまで大規模に生涯の作品をたどる回顧展はほとんどなかったそうですね。

髙城 1966年、生前の画家自身が協力して東京国立近代美術館で開催されたミロ展がありましたが、それ以来の規模になると思います。実に59年ぶりですね。

市川 久々! というか私の世代にとっては初めての回顧展。「ミロってこんな作家だよね」という先入観やふわっとしたイメージが刷新されたように思います。

髙城 はい、ミロの死から40年以上たち、生前を知る人も少なくなりました。すると、研究自体が主観的なものからより客観的に変化してきています。端的に彼の生涯を振り返ることで、ミロ像というものに新たな光があたったのではないでしょうか。今回の展覧会では、ミロを古くからよくご存じの観客の方々から特に「驚いた、新鮮だった」というご意見をいただいたのが印象に残っています。

市川 ミロという人の美術史での位置づけが見えてきたタイミングで、大規模に作品が見られるのは嬉しいですね。とてもわくわくして、新鮮で。まるで初めてミロに出会ったときのような、自由な視点がもらえた気がします。

髙城 確かに、僕は、ミロの作品にメッセージがあるとすれば「自由でいい」ということだと思います。ぱっと絵を見て自由に感じられれば、それで充分だと。それが国籍問わず多くの人がミロを好きになる理由なのではないでしょうか。

訪れたのは…東京都美術館

市川紗椰が東京都美術館 ミロ展へ行く

展覧会入口近くの『自画像』(1919年)、12歳年上のピカソはミロと親交が深く(母親同士も“ママ友”だったとか!)、この初期作品はピカソ自身が譲り受け、長い間保管していたのだそう

【展覧会DATA】ミロ展

〜7/6 東京都美術館 企画展示室
東京都台東区上野公園8の36
9時30分〜17時30分(金曜は〜20時、入室は閉室の30分前まで)
入館料/一般¥2300ほか
休室日/月曜
会場内は一部写真撮影可能
https://miro2025.exhibit.jp/

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

シャツ¥39600・パンツ¥49500・サスペンダー¥20900/リーミルズ エージェンシー(ジョン スメドレー) バッグ¥20900/オルサ(オルセット) 靴¥42900/フラッパーズ(カステラーノ) ダブルフィンガーリング¥49500/エネイ松屋銀座(エネイ) オレンジリング ¥6800/ロードス(コフルジュエリー)

撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/中村未幸 スタイリスト/平田雅子 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2025年7月号掲載

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