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【市川紗椰の週末アートのトビラ】横須賀美術館「山本理顕展—コミュニティーと建築—」をご案内

市川紗椰がご案内 週末アートのトビラ

市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第35回は横須賀美術館の「山本理顕展—コミュニティーと建築—」を訪問しました。

今月の展覧会は…「山本理顕展—コミュニティーと建築—」@横須賀美術館

“広いランドスケープと模型の世界を、旅するように楽しめる、建築家の回顧展”

市川紗椰さん 横須賀美術館で山本理顕展—コミュニティーと建築—をご案内

市川紗椰が語る 「山本理顕展—コミュニティーと建築—」

海の見える美術館、横須賀美術館は、ファッションロケでも訪れたことのある気持ちのいい場所。ランドスケープと一体化するような建物も特徴的で、空間そのものが一見の価値あり!設計は山本理顕氏、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を昨年受賞した世界的な建築家の一人です。その50年にわたる設計の活動の集大成を、本人の作品の中で味わうという、ユニークで贅沢な回顧展に行ってきました!

じっくり見入ってしまうのは、およそ60点もの模型。活動初期から現在進行形、さらに未来のプロジェクトまで。小さな個人住宅から、ひとつの街のような巨大施設まで。コンペに敗れ実現しなかったものから、「ここ行ったことがある!」という実在の建物まで。もちろん会場である横須賀美術館の模型もあります。ミニチュアの中に入り込んで、「居る、住む、暮らす」を想像しながら見つめていると、時間を忘れてしまいそう。チューリッヒの空港施設や台湾で建設中の桃園市立美術館、再建プロジェクトが始まった野毛のジャズ喫茶ちぐさなど、世界各地を旅している気分にもなれます。建築はアートよりももっと生活や現実世界に接しているせいか、難しく考えずに具体的なイメージが湧いてきて、没入する楽しさに満ちているのかも。タイトルが「コミュニティーと建築」とあるように、山本氏の哲学――建築を通した共同体のあり方が、目の前で形になって展開していて、文字どおり手に取るようにわかるのも面白い!

会場自体が1/1スケールの「作品」でもあるので、模型を堪能したあとは、建物内を探検して周囲の自然と建築の関係を確かめられるのも今回の見どころ。館内には心地のいいレストランもあり。たっぷり時間をかけて、遠足気分で楽しむのがおすすめです!

自然の地形に囲まれた美術館の屋上から、東京湾を一望。最高に気持ちのいい眺め!

市川紗椰 「山本理顕展—コミュニティーと建築—」@横須賀美術館 自然の地形に囲まれた美術館の屋上から、東京湾を一望。最高に気持ちのいい眺め!

わざわざ足を運ぶ価値がある横須賀美術館の“目玉”は、この「屋上広場」から水平線を見渡せる開放的な眺め! ガラス屋根の上にかけられたグレーチングの床に立つと、浮遊感たっぷり。

市川紗椰 「山本理顕展—コミュニティーと建築—」@横須賀美術館   横須賀美術館の建物で特徴的な、天井を丸くくりぬいた天窓がよく見える。屋上のペントハウスに向かう2階の空間は、抜けがよく光がきれい

横須賀美術館の建物で特徴的な、天井を丸くくりぬいた天窓がよく見える。屋上のペントハウスに向かう2階の空間は、抜けがよく光がきれい

 「山本理顕展—コミュニティーと建築—」@横須賀美術館  模型「地域社会圏モデル」(2010年)

模型「地域社会圏モデル」(2010年)。共同住宅の住人が協力しながら地域を豊かにしていくという考え方を、設計で表したもの。模型をのぞき込むと、山本氏が考える暮らし方や社会のあり方が見えてくる

市川紗椰 「山本理顕展—コミュニティーと建築—」@横須賀美術館  美術館の 丸窓から、横須賀の港を出る船が見える。 館内では写真を撮りたくなる素敵な風景 に出会えます 

美術館の丸窓から、横須賀の港を出る船が見える。館内では写真を撮りたくなる素敵な風景に出会えます 

市川紗椰 「山本理顕展—コミュニティーと建築—」@横須賀美術館  2010〜’20年代は大規模作品も多数。写真を背景に、まるで空から旅しているみたい

2010〜’20年代は大規模作品も多数。写真を背景に、まるで空から旅しているみたい

「山本理顕展—コミュニティーと建築—」@横須賀美術館  ピンクの壁が愛らしい模型「ドラゴン・リリーさんの家」(2008年)

ピンクの壁が愛らしい模型「ドラゴン・リリーさんの家」(2008年)。回顧展の中では珍しい平屋の個人宅で、実際に今もお住まいだそう。自分がここで暮らしたら……と想像がふくらみます

 「山本理顕展—コミュニティーと建築—」@横須賀美術館  「横須賀美術館」(2007年)の模型

「横須賀美術館」(2007年)の模型。中にいながらにして、様々な視点で建築を堪能できる!

市川紗椰 「山本理顕展—コミュニティーと建築—」@横須賀美術館  通常は所蔵品展示を行う地階ギャラリーが会場に。吹き抜けの空間が気持ちいい

通常は所蔵品展示を行う地階ギャラリーが会場に。吹き抜けの空間が気持ちいい

トビラの奥で聞いてみた 市川紗椰×横須賀美術館 学芸員 沓沢耕介さん対談

展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは… 横須賀美術館 学芸員 沓沢耕介さん

沓沢 ここ横須賀美術館は、山本理顕氏の設計で2006年に竣工しました。本展は代表作のひとつである当館を会場にした、過去最大規模の回顧展です。

市川  会場そのものが作品であり、全体を見渡せる模型も展示されている。どんなふうに設計されているのかを色々な角度から見ることができますね。

沓沢 はい。この土地は正面を海、三方を山に囲まれていて、以前は池と森がありました。そこに、地上2階、地下2階の高さのある建物を沈み込めるように建てて、周りの景観を邪魔しないように配慮して造られています。

市川 確かに、、低く見える建物なのに、中に入ると天井が高いです。見上げたときに特徴的な丸い天窓は、模型では屋上につけられた水玉模様のように見えます。

沓沢 実際の天窓の数はもっと少ないのです。美術作品を展示する建築物として考えると、天窓からの採光というのは正直言って困りものなんですよ(笑)。

市川 なるほど、作品保護の点でいうと、自然光は大敵! そうすると、普段の絵画などの展覧会では、天窓をふさいだりしないといけないのですね。

沓沢 はい。逆に言えば本展では、山本氏が自ら訪れて指示を行い、普段とは違う、建物本来の特徴を生かすような展示室の使い方をしています。

市川 御年80歳の山本氏、世界の有名建築家の中でも、現役感がすごいですね。

沓沢 ええ。進行中、構想中のプロジェクトも多く、実に精力的な仕事ぶりです。

訪れたのは…横須賀美術館

市川紗椰が横須賀美術館 「山本理顕展—コミュニティーと建築—」へ行く

背景は観音崎の山の緑が美しく、前庭は広々とした芝生。右奥にモダンなペントハウスが見えます

【展覧会DATA】山本理顕展 —コミュニティーと建築—

〜11/3
神奈川県横須賀市鴨居4の1
10時〜18時
休館日/9/1、10/6
入館料/一般¥2000ほか
11/3は無料観覧日
https://www.yokosuka-moa.jp

市川紗椰

ファッションモデル

市川紗椰


2月14日生まれ。ファッションモデルとしてのみならず、ラジオ、テレビ、広告などで幅広く活躍中。鉄道、相撲をはじめとした好きなものへの情熱と愛の深さも注目されている。大学で学んだ美術史から現代アート、サブカルチャーまで関心も幅広い。

ニット¥95700・スカート¥181500・パンツ¥93500・ピアス¥29700・バッグ¥92400・靴¥132000/コロネット(フォルテ フォルテ)

撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/中村未幸 スタイリスト/吉村友希 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2025年10月号掲載

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