B.LEAGUEとBAILAのコラボレーション企画「B.LEAGUE注目選手インタビュー」がスタート! 東京を拠点とする強豪男子プロバスケットボールクラブ「アルバルク東京」で、司令塔として活躍するテーブス海選手がBAILAに初登場! インタビュー前後編の前編となるこの記事では、今季キャプテンに就任した彼に、チームをひとつにするために大切にしていることや、リーダーの役割についてたっぷり語ってもらいました。

“チームのために動くこと”が結果的に自分の価値を高めてくれる
——BAILA読者は、職場でチームのリーダーを務めることも多くなる世代。バスケットボールはチームビルディングがとても大切なスポーツで、そこでチームの核として活躍している選手が感じていることは仕事にも通じる部分や考え方のヒントがあるのではないか、というのがこのインタビュー企画を始めたいと思ったきっかけです。最初に、テーブス選手が考える「いいチーム」とはどういうものか、教えていただけますか?
テーブス海選手(以下、テーブス):そうですね。極端な話、チームメイト同士が仲良くなくても、バスケが上手くてコートできちんと結果を残せれば、「強いチーム」といえると思います。実際に僕はそういうチームにいたこともあります。じゃあ、そういう「強いチーム」なら「いいチーム」なのか、逆にチームメイト全員すごく仲が良ければ「いいチーム」なのかというと、それはまた別の話。仲が良くても、コートに出たら全然結果が出ない、という経験もしました。
じゃあ、本当の意味で「いいチーム」とは何かというと、ただ仲がいいだけでも、結果を出すだけでもなくて、信頼関係を築いたうえで、自分一人のためではなく、チームのために動ける選手がそろっていることなんじゃないかと思います。
ただ、そういうチームをつくるのは簡単なことではないんですよね。このプロの世界で生きていくためには、どの選手も結果を出して、契約を勝ち取らないといけないから。でも、僕はチームとして成功することが、結果的に一人ひとりの価値にもつながっていくと思っています。だから、「自分一人が活躍して契約を勝ち取る」ではなく、「みんなで活躍して、みんなで契約を勝ち取ろう」というマインドで日々チームに向き合っていますし、アルバルクにはそういう考え方が根付いているので、いいチームだと思います。
——そうした考え方がチームメンバーに根づいている背景には、チームとして目指す場所が明確で、それを全員で共有できているからなのでしょうか?
テーブス:そうですね。チームによって目指している場所は違っていて、必ずしも優勝がゴールではないチームもありますが、アルバルクにいる以上、やっぱりゴールは優勝。それはファンの方々も求めていることだと思いますし、アルバルクはそこを目指して戦うチームですね。
——アルバルク東京では、チャンピオンシップ(りそなグループB.LEAGUE 2026-27シーズンからはプレーオフ)で優勝するという意識を共有したうえで、毎年新シーズンのチームづくりが始まるということですね。
テーブス:はい。みんな契約の時点で、そういう話をされていると思います。だから、もし僕が結果を出せなかったら、クラブはすぐに次のポイントガードを探してくると思いますし、そうなったとしても何とも思わない。アルバルクはそういうチームだし、そういうチームであるべきだから。

“役割”を明確にすることが、意見を自由に言い合える関係づくりにつながる
——B.LEAGUEは、選手の入れ替わりがほかのスポーツと比べても激しいですよね。毎年のように選手や、時にはコーチも入れ替わる中、限られた時間でチームをひとつにまとめ、「優勝」という目標に向かっていくためには何が必要だと考えますか?
テーブス:社長、GM、コーチ、キャプテン、副キャプテン、選手……それぞれの役割を明確にすることですね。そこが曖昧だとチームはまとまらないし、本来の役割とは違うところで前に出てしまう人がいたりすると不毛な衝突が生まれる可能性があるから。
バスケの場合だったら、新しく獲得しようとしている選手がチームにフィットするかを考えるのが社長やGM。そして、実際に入団した選手をチームになじませるのはコーチ、キャプテン。新しく加わる選手はこれまでとは違うやり方や役割を受け入れることも大事ですよね。
あとは、シーズン中というのはいいときもあれば、うまくいかないときも必ずあります。そういうときにリーダー的存在の人が率先して仲のいい選手にも言いにくいことを言えるかどうかが重要になってくる。誰もができればやりたくないことまでやってこそ、ようやく優勝が見えてくるのかなと思います。
——言いにくいことを伝えるのは、リーダーにとっても簡単なことではないですよね。相手に嫌われたくないという気持ちもあると思います。
テーブス:そうですね、嫌われたくないし、伝えるべきことを伝えて嫌われないことも大事。そのためには日頃から丁寧にチームメイトと関係を築くことが不可欠ですし、それができていないと、ただ嫌われて終わってしまいますね。
——テーブス選手のポジションであるポイントガードは、チームの司令塔として、コート上で周囲に指示を出しながらチームを引っ張る役割ですよね。昨シーズンのように怪我明けで思うように動けなかったりと自分のコンディションが万全ではないときにそれでもチームを引っ張っていくのは、調子がいいときとはまた違った難しさがあるのではないでしょうか。
テーブス:すごくいい質問ですね。難しいですが、「調子悪いお前が、そんなことを言える立場じゃないだろ」と思われたら、正直終わりです。そういう関係性だったら、自分も相手もそこまでの選手だと思ってしまいますし、僕はそもそもそういう状況にはならないはず。僕が何か言ったとしても、「チームのために言っているんだ」と受け取ってもらえるはずだし、僕が間違ったことを言ったら、「それは違う」と言ってくれると思っています。
——自分のエゴではなく、「チームのために言っている」と受け止めてもらえて、間違っているときには「それは違う」と言ってもらえる。そのような関係を築くのは簡単ではないですよね。
テーブス:まずはキャプテンやコーチといった上の立場の人同士が、何でも言い合える関係性であることが大事だと思います。そうすれば、ほかの選手も臆せずに意見を言える。たとえば、仲良しのライアン・ロシター選手(アルバルク東京所属)は、僕にいろいろと教えてくれた大先輩ですが、「それは違う」とちゃんと言い合える。そういう見本があれば、ほかの選手も「僕も言っていいんだ」と思えるはずです。
とはいえ、それは役割が明確になっていないと成立しない。たとえば、僕とコーチの意見が違ったときに、最後にどうするかを決めるのはコーチ。意見を交わすことは大事ですが、最終的には誰かが決断しないと、チームが前に進めないですから。
そして、決断する立場にいる人は、その力をどう使うかが重要。雑に使えば信頼を失ってしまう。僕自身、そういう場面を目の当たりにしたことがあるし、自分もしてしまった経験があると思う。リーダーには、自分が持っている力をどう使うかという責任があると思います。

いいリーダーは自分を犠牲にしてでもチームの成功を望める
——では、テーブス選手が考える“いいリーダー”とは?
テーブス:自分もまだ考えているところですが、リーダーにはいろんなタイプがいると思います。積極的に声をかけてチームを引っ張る人もいれば、行動やプレーで示して引っ張る人もいる。その両方をバランスよくできるリーダーが理想なんじゃないかなと思います。
あと、一番上手い選手である必要はないけれど、やっぱり結果を残せる人というのは、バスケを深く考える力があって人間関係も丁寧に築ける人が多いのでリーダーに向いていると思います。そして、自分を犠牲にしてでもチームの成功を望めるというのもいいリーダーに必要な要素だと思います。
——これまで出会ってきた人の中で、魅力的なリーダーはどなたですか?
テーブス:たくさんいますが、一人はなべさん(宇都宮ブレックス所属|渡邉裕規選手)。プロになったときに間近で見ていたリーダーで、僕が出会ったときはすでにベテラン枠の選手でしたが、新人の僕ともよくしゃべってくれましたし、シーズン中に選手とコーチの考えが上手くかみ合わなかったときは、選手を代表してコーチとしっかり話してくれました。
あと、ライアン(アルバルク東京所属|ライアン・ロシター選手)も素敵なリーダーですね。なべさんほどコミュニケーションを取るタイプではないけれど、誰よりも努力して、行動で示してくれる。だから言葉に説得力があるんです。
数字に表れない貢献を認め合うことが強いチームをつくる

——現在と過去の自分を比べて、ご自身が成長したと思う部分を教えてください。
テーブス:自分のやりたいプレーができなくても、チームが勝つために我慢できるようになったことですね。僕もアスリートだから、「自分が活躍できてなくても、チームが勝っていればいい」というマインドを持つのは、やっぱり難しい。でも、今はチームが勝っているなら、このまま我慢して目の前の役割を全うしようと思えるようになりました。
それができるようになったのは、日本代表や宇都宮ブレックスでの経験が大きいです。代表では3番手だったので、自由も減るし、許されるミスも少ない。決して楽しく、気持ちよくプレーしていたとはいえないけれど、チームにはオリンピックという目指す場所がある。だから、エゴを捨てて、チームのために動いてきました。
宇都宮ではプレータイムがあまりもらえず、2番手として求められるバスケと、自分のやりたいバスケとの間にギャップがありました。でも、チームは優勝を目指しているから、その役割をまっとうしたら優勝を経験できました。小さい頃の自分だったら、絶対に我慢なんてできない(笑)。普通に拗ねて、帰っていたと思います(笑)。
——でも、今は我慢して求められる役割を全うすることにも、価値があると感じているんですね。
テーブス:その通りです。我慢して、求められる役割を全うすることにも価値があって評価されると理解したから。たとえば、代表のコーチだとしたら、エースとしてしか活躍できない人を何人も連れてきても意味がないですよね。だから、エースもできるけど、我慢して2番手も3番手もできる。そういう選手を集めることって大事なんですよね。
——そうした見えないところでの努力をGMやコーチが理解して、評価してくれることも大事になりそうです。
テーブス:めちゃくちゃ大事! でも、GMや社長の立場からすると、現実には数値化されない部分を評価することって難しいですよね(笑)。だからこそ、現場のチームリーダーができることは、数字に表れないプレーも、みんなの前で評価してあげることですね。ライアンはそれがうまくて、普段プレータイムが少なくても、味方のプレーを助ける動きをした選手のことを、みんなの前で評価する。それがあるだけで、少ないプレータイムでも、チームに貢献しようという気持ちが芽生えると思います。
壁は自分一人で乗り越えるからこそ自信になる

——テーブス選手は壁にぶつかったときにどう乗り越えていますか?
テーブス:スキル面に関しては、自分一人で乗り越えることに価値があると思っています。こういう考え方になったのは、プロのバスケコーチである父親の影響が大きいですね。小さい頃、父親がいろいろと指摘してきて、もちろん言っていることは正しいんだけど、言われて改善するというのがつまらなくて、「もういいから」とよく喧嘩していました(笑)。失敗したら、自分で考えて立て直す。そのほうが絶対に自分の自信につながるんですよ。とはいえ、悩みを溜め込む必要はないと思います。内容によっては、誰かに話したほうがいいこともある。でも、僕はそれがなかなかできないんですけどね(笑)。
——ご自身のプレーヤーとしての現在地を分析すると?
テーブス:アルバルクに来て、ハーフコートでの判断やオフェンスについてはかなり成長できたと思います。堅実なバスケができるようになった一方で、僕の一番の武器は、やっぱり縦へのスピードとトランジション。だから今シーズンは、そこをもっと生かすことに挑戦する予定です。これまで身につけてきたハーフコートでのプレーに、自分本来の持ち味であるスピードを掛け合わせることができれば、また一段違う選手になれると信じているので、今シーズンが楽しみです。
——アルバルク東京は、今シーズンからライアン・リッチマン氏にヘッドコーチが変わりましたよね。どんなチームになっていきそうですか?
テーブス:これまでアルバルクにいた選手は一個のスタイルのバスケしかやってこなかったけど、新しいオフェンスシステムになって、一人ひとりが今まで見せたことのない動きや判断をするようになると思います。ファンの方々からしたら「そんなこともできるの!?」と発見の連続で楽しいはずです!
——ずばり今季、チームとして、個人として目指すところを教えてください。
テーブス:もちろん優勝ですが、チームで決めた一つのプレースタイルにこだわって、レギュラーシーズン60試合、そしてプレーオフまでやり切ることですね。そうしなければ、「あれをやっていたら勝てたかもしれない」と曖昧な疑問が残ってしまってもったいないし、次に進めないので。あと、個人的には、健康第一で60試合すべてに出場することが目標です。
日本でバスケがもっと身近になるまで。B.LEAGUEの勢いは止まらない!
——NBAに次ぐ世界で2番目のリーグを目指して進化を続けるB.LEAGUEでは、今年からトップカテゴリが「B.PREMIER」として新たなスタートを切ります。アルバルク東京も昨年秋にホームアリーナ「TOYOTA ARENA TOKYO」が開業しましたが、実際にプレーする選手として、ファンの応援や会場の盛り上がりに変化を感じますか?
テーブス:熱量が全然違いますね。会場の雰囲気もこれまでとは違うし、Xを見ていてもファンの熱量が上がっているのを感じます。喧嘩し始めるくらい夢中になっている方もいますから。アメリカでは、ファンが選手に対して怒ることが結構ありますが、日本もそんな感じになったら面白いなと思います。
——それでは最後に、これからのB.LEAGUEに期待することは?
テーブス:B.LEAGUEの規模は年々大きくなっていますが、いつか野球と並ぶくらい日本で注目されるスポーツになってほしいです。アメリカに行くと、普通のカフェでバスケの試合が流れていて、スポーツが特別なものではなく日常の中に自然に溶け込んでいるんです。日本でもカフェに入ったらB.LEAGUEの試合が当たり前に流れている、というくらいバスケが身近な存在になったらいいですね。そのためには、僕たち選手がもっと盛り上げていく必要がある。でも、このままいけば必ずそういう未来が来るはずだから、今からすごく楽しみです!
撮影/田形千紘(TRON) ヘア&メイク/髙田将樹 聞き手/副編スガコ 取材・文/海渡理恵























