在宅勤務が本格的に導入されてからそろそろ1年半。慣れてきたはずなのに何でこんなに疲れるの? リモートでコミュニケーションをとるときのコツやツールを、公認心理師の山名裕子さんと㈱テレワークマネジメント代表取締役の田澤由利さんに教えてもらった。
見えない部分が増えると人は不安を抱えやすい。相手に寄り添う心がけを
「リモートワークで起こる人間関係トラブルの多くは、コミュニケーション不足から生じていると思います」と山名さん。リモートでは対面よりも高いコミュニケーションスキルが必要なのだそう。
「人は五感を使って、言葉以外からも多くのことを感じながらコミュニケーションをとっています。それゆえ、リモートでのオンライン越しの画像やメール、電話のやりとりは対面より情報が少なく、伝わりづらさや受け取りづらさが出てきてしまうんですね。また物理的な距離が心の距離に影響を与えるともいわれています。見えない部分が増えると人は不安を抱えやすいので、その部分を補うことが大切。相手に寄り添った連絡頻度やツール、言葉選びを心がけましょう」
Q 普段から放任型の上司の場合、リモートワークでミスを防ぐには?
A 自分の能力不足を理由にコミュニケーションをこまめにとって
「『私の力不足によりミスが増えると心配なので、連絡を多めにとらせていただいてもよろしいですか』などと低姿勢にお願いを主張してみては」(山名さん)
A 業務を見える化することが大切1on1を有効活用しましょう
「今までより作業のプロセスにおける『報連相』を頻繁にする、週1回15分でもよいので1on1のオンラインミーティングを定期的に持つことで、お互いに安心感が生まれます」(田澤さん)
Q 忙しい上司に連絡するタイミングの見極め方は?
A メールなどで事前に自分の予定を伝えた上で上司の都合を聞くとやりとりが減りスムーズ
「いきなり電話ではなく『相談があり、この日ならいつでも出られるのでお時間があるときにお願いします』と一本メールすると、上司の返答の負担が減ります」(山名さん)
A バーチャルオフィスというツールを利用すると上司が今何をしているかがわかって声がかけやすい
「クラウド上にオフィスをつくるツールが注目されています。リアルなオフィスのように社内を見渡すことができ、相談するタイミングを見つけやすいです」(田澤さん)
Q ちょっと聞きたいことがあったとき相手に負担をかけない連絡方法って?
A 相手の優位タイプを把握して得意なツールを選んで
「たとえば視覚優位の人はメール、聴覚優位の人は電話、体感優位の人は対面に近いオンラインミーティングといった具合に、人それぞれ得意なツールがあります。相手から普段どんなツールで連絡がくることが多いかということから察するといいですね。わからない場合は『報告する場合はメールがよろしいですか』などと尋ねて確認を」(山名さん)
Q 人間関係が円滑になるメールのやりとりをするにはどうすれば?
A 相手の返信スピードや文字量、温度感に合わせると心の距離が縮まる
「お互いに顔が見えないメールでは、トーンやテンポ、文字量、言葉づかいを相手に合わせるページングというテクニックが有効。文章のとらえ方は人によって異なるので、万人受けする表現を選んだほうが誤解が少ないです。言った側にも言われた側にもプラスの効果をもたらす『ありがとう』は、やりとりの万能な潤滑油ですね」(山名さん)
Q リモートで雑談ってどうやったらできるの?
A 自分が先に情報を提供して相手がノッてきたら聞き役に
「会社で気軽にできたプライベートな情報交換が減ることで、互いに見えない部分が増え心の距離ができてしまうことも。人には受けた好意を返そうとする返報性の原理といわれる心理があるので、自分から最近興味があることなどを話すと相手も『そういえば』と言いやすくなります。相手が話し始めたら大きくリアクションを!」(山名さん)
公認心理師
山名裕子さん
「やまな mental care office」を開設し、心の専門家としてストレスケアからビジネスまでカウンセリングを行う。メディアでも広く活躍。
㈱テレワークマネジメント代表取締役
田澤由利さん
㈱ワイズスタッフ、㈱テレワークマネジメント代表取締役。企業へのテレワーク導入支援や国や自治体のテレワーク普及事業を実施。
イラスト/大窪史乃 取材・原文/佐久間知子 構成/田畑紫陽子〈BAILA〉 ※BAILA2021年9月号掲載