SNSが普及して、誰でも簡単に発信者になれる今、世の中には陰謀論やデマなど不確かな情報がいっぱい。今回はジャーナリストの古田大輔さんに情報力を高めるDo&Don’tを教えていただきました。
「自分や世の中をよくするために“優しさ”を持って情報を扱う習慣を」
ジャーナリスト
古田大輔さん
朝日新聞に入社後、海外特派員やデジタル版の編集を経て、2015年に退社し、「BuzzFeed」の日本版創刊編集長に就任。3年で国内有数のネットメディアに。2019年に独立し(株)メディアコラボを設立。2020年にGoogleNews Lab Teaching Fellowに就任。ファクトチェックの指導なども行う
不安を感じるのは当然。まずは自分の情報収集のクセを見直す
アンケートの「どの情報を信じていいか不安」という声にまず「僕も不安です」とお伝えしたいです。情報がネット上に爆発的に増えた今、噓が混じったニュースを目にせずに生きていくことは不可能ですから。ただ、ネットで大量に情報を得られることには便利な面もたくさんある。マイナス面に注意しながら活用する対応が基本だと思います。
おすすめしたいのは、自分の情報収集の習慣を確認すること。皆さんは一日何分ニュースを見ていますか?芸能やスポーツではなく、政治や経済、社会問題に関するニュースです。もし一日5分しかニュースを見ていないとしたら、たとえば自分の将来のキャリアをどう選択するのか。会社や業界の将来性や社会全体の変化など、やはり情報が必要ですよね。仕事に限らず、日々何かを判断するその価値判断は、その人が生まれてから手に入れてきた情報がもとになっている。そう考えると、より良質な情報をより多く調べておいたほうがよりよい判断ができる可能性が高い。ですから自分の情報収集のクセを見て、それを改善していく方法を考えるのがいいと思います。
不確かな情報を避けるための最初の注意点は、発信元の確認です。発信元がわからないSNSの情報の真偽を自分で確認するのは大変なので、基本的には信じないほうがいい。また、検索サイトの検索結果の上位には信頼性が高いというより、探している情報について“関連性が強い”情報が出てくる特性があることも覚えておいてください。たとえば「コロナ 本当のこと」は危険な検索ワードのひとつ。フェイクニュースを作成する側が使いやすい言葉で、検索するとデマや陰謀論が検索結果の上位に出てくる危険性が高い。いずれにせよ一回の検索結果だけで判断しないことが大事です。
完璧な情報を求めすぎず負の感情を生む情報から離れる
まじめな人が陥りやすいのが、実は完璧な情報を求めすぎてしまうこと。少しの間違いや偏りもない情報を探し続けて、陰謀論にハマってしまう事例も珍しくないんです。完璧なメディアは今は存在しません。人間だから間違いもある前提で、比較的よい情報を探す感覚を持ちましょう。
最後に、、情報を扱うときに最も重要なのは「優しさ」だと僕は思っています。だからもし、あるニュースによって怒りなど負の感情があおられたり、一方的に誰かを批判しそうになったら、その情報源から離れるサイン。情報を得る目的は、自分や世の中がよくなるためと心に留めておきたいですね。
Do (情報力を高めるためにするといいこと)
☑ 自分の情報収集のクセを改善する
☑ 情報の発信元を確認する
☑ 質の高いニュースや情報に毎日触れる習慣をつける
☑ 怒りなど、負の感情が高まるなら、その情報に触れないよう注意する
Don't(情報力を高めるために気をつけるべきこと)
☑ ネットで情報を見てすぐシェアやいいねボタンを押さない
☑ 一度の検索結果だけで判断しない
☑ 専門家という肩書だけで信用しない
☑ 完璧な情報を求めすぎない
情報力を高める本やアプリ
『メディアリテラシー 吟味思考 (クリティカルシンキング)を育む』
坂本旬・山脇岳志著 時事通信出版局 2750円 “1 億総メディア社会”を生き抜くためのスキルを育む一冊。「情報を精査することはどういうことかが網羅的に扱われています」(古田さん)
NHKニュース・防災
NHKが取材した社会、災害、政治、ビジネス、地域、天気予報などの最新ニュースやライブ配信が届く無料アプリ。「ニュースを毎日見る習慣を身につける第一歩としておすすめです」
日本経済新聞 電子版
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Substack Reader
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撮影/Jun Tsuboike 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2022年8月号掲載