SDGsやサステナブルという言葉にあふれ、様々な角度から「持続可能性」の大切さが問われている今。自ら向き合い、自分にできる“仕事”に落とし込んだ人たちのストーリー。今回は、女性エンジニアを育成する「(株)Ms.Engineer 」を昨年立ち上げたやまざきひとみさんにインタビュー。
働きたい女性の持続可能なキャリアをつくる仕事
(株)Ms.Engineer
やまざきひとみさん
女性がエンジニアのスキルを身につければ人生とキャリアの不安を解消できるはず
エンジニアほど効率のいい学び直しはない
女性比率2割に満たないといわれるITエンジニアを育てるため、女性のためのフルリモート型プログラミングブートキャンプ「Ms.Engineer」を立ち上げたやまざきひとみさん。きっかけは、コロナ禍に目にした「女性の自殺率が男性を上回っている」というニュースだった。
「非正規雇用というかたちで企業が女性雇用のリスクを取らなかったことで起きた、理不尽な出来事だと思いました。ところが、周りを見るとエンジニアたちはフルリモートになってもまったく仕事に困っていなかった。女性のエンジニアを育成することで雇用環境もIT業界のジェンダーギャップも改善すると思ったんです」
プログラミングスクールを経て営業職からエンジニアに転向した、彼女のパートナーの存在もヒントに。
「猛勉強して転職した結果、フルリモートで働きやすさが増して収入もアップした。すごく楽しそうだったし、人生のオーナーシップは彼の手中にあるなと思いました。今の日本でこれだけ効率のいい学び直しはない。キャリアの格差の壁を打ち破る手段として夢があると思いました」
母も祖母も、やまざきさん自身もシングルマザー。女子校でのびのび育ち、15年前には珍しく、男女の採用比率が半々のサイバーエージェントに新卒で入社したことで「ジェンダーギャップを感じずに生きてきた」という。ただし、独立後に女性向けメディアの編集長を務めるなど、常に働く女性をターゲットに仕事をしてきた彼女には仮説がある。
「若い女性が元気な国は経済成長すると思っています。今はキャリアの持続可能性がないことにみんなが気づき、将来や人生に漠然とした不安を抱えている。将来的に子どもを持つイメージができる心理的安全性があれば、毎日元気に自分らしく暮らしていけるはず。エンジニアは、その助け舟になると思いました」
カリキュラムでは、テクノロジースキルはもちろん、ヒューマンスキルにも力を入れているのが特徴。
「未経験から転職するので、技術力の向上だけでなく、いかに応援される人になれるかが成功のカギです。主体性を持って正しい選択をし、周りにプレゼンできるスキルを身につけることで、永続的に応援される人になれる。キャリアや人生の不安は、ほぼなくなるも同然だと思います」
一方、やまざきさんの会社では週休3日、フルリモートを実践中。 「女性の働き方に革命を起こす会社だからこそ、それを体現する私たちも、週休3日・フルリモートで結果を出す会社になろうと決めました。もちろん、その分、業務中は3倍くらいの熱量で取り組める人でないと、向いていないかもしれません(笑)。この取り組みが失敗だと思われないためにも、本気で結果を残さなければと思っています」
“女性がエンジニアのスキルを身につければ人生とキャリアの不安を解消できるはず”
学校の先生など、受験生のほとんどは未経験&文系出身者
(株)Ms.Engineerはオフィスを持たない。やまざきさん自身もご自宅でフルリモート勤務。
白を基調とした仕事部屋の本棚には、仕事関係の資料がびっしり
愛犬と一緒にフルリモート中
Ms.Engineerの 事業って?
未経験から最短6カ月でエンジニアを目指す女性のための養成講座。みっちり詰め込むハードなカリキュラムで、本気で人生を変えたい人の夢を応援。「4㎏痩せた人もいる」ほど甘くない
撮影/NAE. 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2022年11月号掲載