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部長を沼に落とした仁左衛門・知盛だ!! 【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯04】

「落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南するこの連載。今月紹介するのは、7月に大阪松竹座で上演される「関西・歌舞伎を愛する会 結成四十周年記念 七月大歌舞伎」に出演する片岡仁左衛門(かたおかにざえもん)さん。

『義経千本桜』(よしつねせんぼんざくら) 「渡海屋・大物浦」(とかいや・だいもつのうら)で、平知盛(たいらのとももり)を演じるが、以前、仁左衛門さんの知盛を観て、歌舞伎沼に落ちたというバイラ歌舞伎部のまんぼう部長は大興奮!!  ばったり小僧への解説もいつもより熱が入ってるぞ!

■碇(いかり)を体に巻き付けて自害する知盛の姿に心を打たれて歌舞伎沼へ

部長を沼に落とした仁左衛門・知盛だ!! 【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯04】_1

まんぼう部長
  好き♪

カメラ・とみやん 好きです‼

ばったり小僧 好きだ―っっ!! ……って、みんなどうしちゃったんですか!?
仁左衛門さんの会見を取材して、目がハートじゃないですか。まあ、私もですけど。
部長 でしょでしょ!?  仁左衛門さんほど「素敵」という言葉がぴったりの男性はいないと思うの。あの知的で涼やかな容姿、あふれるユーモアとやさしさ、それでいて芸にはとっても真摯で。しかもあのかわいらしさ!! 若い頃から歌舞伎の世界を超えて、女性に大人気だったそうだけれど、年齢を重ねてもその麗しさは全然変わらない。史上最強の75歳よ!!
小僧 確かにそのご年齢で、あのかわいらしさは、ありえないですね。 今日も会見の冒頭で、司会の人に「最初にひとこと、ご挨拶を頂戴いたします」と言われて、「よろしくお願いいたします!……はい、ひとこと(笑)」って、すごくうれしそうに笑ったじゃないですか。あれで小僧は、ハートをズキュンっと射抜かれましたよ。
部長 会見の最後も「では、締めの言葉をお願いいたします」って言われて、「チョンチョンチョンチョン……」って言いながら幕をしめるしぐさをしちゃって、もう超おちゃめ!!  ワタクシ、あらためて惚れ直しました。
部長を沼に落とした仁左衛門・知盛だ!! 【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯04】_2

「ひとことだけね」と言って、みんなに受けてうれしそうな仁左衛門さん。やさしそうな笑顔が超キュート! かわいさの一本道!!

小僧 そういえば、部長が歌舞伎沼にどっぷりとハマッたきっかけは、仁左衛門さんだったんですよね。それもこの7月に大阪松竹座でやる演目『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」を観たときだったとか。平知盛は、仁左衛門さんの当たり役のひとつなんですよね?

部長 そう、あれは確か2年ちょっと前。場所は歌舞伎座だったわ。当時は、ほとんど歌舞伎の知識もないまま観てたんだけど、最後に平知盛が重い碇(いかり)を体に巻きつけて、後ろ向きに海にダイブして自害したとき、気づいたら号泣していたの。そんなに物語に入り込んでいたことに自分でも驚いたわ!!
小僧 部長も知盛とともに歌舞伎沼にドボン、と。あ、茶化してすみません~!!  それにしても、なんとも壮絶なラスト。一体どんなお話なんですか?

部長 そもそも『義経千本桜』は、源平合戦で功績をあげながらも兄の頼朝と対立して、都落ちした源義経にまつわる物語を描いた壮大な歴史ファンタジー。全五段という長いストーリーの二段目に、知盛が活躍する「渡海屋・大物浦」の場面があって、物語のラストにちなんで、通称『碇知盛』(いかりとももり)とも言われる人気の演目よ。歌舞伎は、長いお芝居の場合、人気の場面だけ、独立して上演することが多々あるのよね。
小僧 うーむ。それでストーリーがわかりにくかったりするんですね。

部長 そうなのよね。「渡海屋・大物浦」では、知盛が船宿の主人になりすまし、安徳帝を娘としてかくまいながら、義経への復讐をうかがっているのだけど、結局、義経との船いくさに敗れてしまうの。でも、義経が安徳帝の命を守ると約束してくれたおかげで、憎しみから開放されて、潔く消えていく……というせつないお話。戦いに負けてボロボロになって花道から登場する姿、そして覚悟を決めて海に飛び込む姿は、「悲壮美」という言葉がぴったりで、涙なしでは観れません!! 

小僧 それを仁左衛門さんが演じるのは、本当にかっこいいんでしょうね。これは観たくなってきた!!
部長を沼に落とした仁左衛門・知盛だ!! 【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯04】_3

しゃべるときには、手をひらひらさせて、表現力豊かな仁左衛門さん。また、その手は美しく、指もきれいで目が釘づけに

■「ハンコを押したようにやることだけが伝統じゃない」と仁左衛門さん

部長 会見で仁左衛門さんが、『碇知盛』は「反戦の狂言にも思える」と言っていたのが印象的だったわ。

小僧 「戦いがいかにむなしいことか、その苦しみを知盛が語るところが好きですね」って言ってたけれど、本当にむなしいですよ~。帝が無事なのはうれしいけれど、平家再興の野望はついえたわけで。なんのために自分は闘ってきたのか……って思いますよね。

 
部長 だから「昨日の仇は今日の味方~」の台詞が身に染みるのよね。嬉しさの境地に達した泣き笑い。仁左衛門さんは、「知盛は、とても複雑な役。でも、そういう複雑な役を演じるのは楽しい」と言っていたけれど、そういう細やかな感情表現が仁左衛門さんはまたうまいから泣けるのよね。
部長を沼に落とした仁左衛門・知盛だ!! 【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯04】_4

「グレーのピンストライプのスーツにグレーのドットのネクタイ。ジャケットの袖口から趣味のいいシルバー色のカフスリングがのぞいていたのよ! なんて素敵!」とまんぼう部長はうっとり。

小僧 私が会見でおもしろいなと思ったのは、「わかりにくいところはカットして、お客さんを飽きさせないようにクライマックスに早くもっていく」と言っていたところ。歌舞伎って「型」通りにやるものだと思っていました。

部長 「ハンコを押したようにやることだけが伝統じゃない」「心を伝えていくことが大事」と言っていたわね。「かといって、何でもアリではいけない。歌舞伎という枠の中で、その色を崩さずに訴えていくことが大切」とも。芸に対しては真摯だけれど、エンターテインメント性も大事にする。仁左衛門さんの舞台は、それが両立しているから、観ていて楽しいんだと思う。
小僧 そのあたりに大阪人ならではのサービス精神を感じますね。
部長 それとね。「じゃあ、歌舞伎とは何なのか」みたいな話になったとき、仁左衛門さんが「それは言葉では説明できない」「先輩方に教えてもらって、経験を積む中で、私の体にしみ込んだものが歌舞伎だ」と話されていて、思わずグッときたわ。まさに一途に芸に邁進してきた人の言葉。歌舞伎って、結局、歌舞伎役者のことなのよ!!

小僧 部長、いつにもまして暑苦しい……いや、熱いですね。ところで7月の大阪松竹座は「関西・歌舞伎を愛する会 結成四十周年記念 七月大歌舞伎」とのことですが、仁左衛門さんは、普段は大阪で活動されているんですか?

 
部長を沼に落とした仁左衛門・知盛だ!! 【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯04】_5

1か月(25日間)続く公演にどう向き合うか聞かれて、「1/25じゃない。1/1の積み重ねが25回あるだけ。1日1日、刹那刹那、入魂するだけ」。

部長 仁左衛門さんの人気は全国区なので、東京でもよく舞台に立っているけれど、もともとは大阪の歌舞伎のお家に生まれたので、おもに関西で活動されているのよね。

小僧 そうなんですね。東京と大阪では、何か違いがあるんですか?

部長 江戸で発展した江戸歌舞伎に対して、大坂・京都を中心に発展した歌舞伎を上方歌舞伎(かみがたかぶき)と言ったりするわ。江戸歌舞伎が「荒事」(あらごと)と呼ばれる豪快な芸が特徴なのに対して、上方歌舞伎は、「和事」(わごと)と呼ばれ、柔らかさのある芸が特徴。碇知盛は勇壮な演目だけれど、色男の若旦那みたいな甘えん坊キャラとかを演じても仁左衛門さんは最高にかわいいのよ!!

小僧 えーっ、かわいい仁左衛門さんも観てみたい!
部長 『碇知盛』も「関西でやるのは、これが最後になるというくらいの意気込みでやる」と言っていたから、絶対見逃せない!! せっかく名優と言われる諸先輩方と同じ時代に生きているのに、その素晴らしい舞台を今観ないでいつ観るの!? 小僧、7月は大阪に行くわよ!!

小僧  はいっ、私も歌舞伎沼に落ちに行きます~!!
部長を沼に落とした仁左衛門・知盛だ!! 【まんぼう部長の歌舞伎沼への誘い♯04】_6

知盛の白装束姿、カッコイイ!! また夜の部では、『弥栄芝居賑』(いやさかえしばいのにぎわい)「道頓堀芝居前の場」にも出演。華やかなにぎわいが楽しめそう。

■「関西・歌舞伎を愛する会 結成四十周年記念 七月大歌舞伎」昼の部

『義経千本桜』(よしつねせんぼんざくら)「渡海屋・大物浦」(とかいや・だいもつのうら)

 
出演:片岡仁左衛門、片岡孝太郎、尾上菊之助、市川猿弥、坂東彌十郎、中村鴈治郎

日程・場所:2019年7月3日(水)~27日(土)大阪松竹座

 ストーリー:平知盛は、女官の典侍の局(すけのつぼね)を女房・お柳に、安徳帝を娘・お安として、船宿を営みながら、義経に復讐する機会をうかがっていた。しかし義経に企みを見透かされ、海上の船いくさで敗れてしまう。典侍の局は自害するが、帝は義経によって守られることがわかると、知盛は自分の役割を終えたことを悟り、重い碇(いかり)の綱を身体に巻き付け、雄々しく海中へ沈んでいく。
■公演チケット情報

チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹ほかで発売中。

 
写真/富田恵
取材・構成/バイラ歌舞伎部 
まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。 
バッタリ小僧……歌舞伎歴2か月。やる気はあるが知識ゼロの新入部員。若いイケメン俳優より、本当はオーバー40歳の熟年役者好き。

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