普段やっているその叱り方、間違ってるかも!? 今回はやってはいけない間違った叱り方8例をご紹介。やりがちな“間違い叱り”と“正解叱り”をチェックして、人望の厚い頼れる先輩になろう!
【間違い叱り1】人前で叱る
✖「何やってるの!」
○「心に届く時と場所を選ぶ」
一対一になれる場所で会話を
「叱るときは、相手が話を受け止めやすい場所を選んで。人前での叱りはプライドを傷つけるので、一対一になれる場所がベスト。話は寝かせるよりその場で伝えると響きやすいですが、相手に心の余裕がなさそうなときはカフェに移動したり、翌日に改めたり、時間と場所を変え言葉が届く環境をつくって」
「人前での叱りは本人が傷つくだけでなく、それを見ている職場全体の雰囲気も悪くなり、チームの士気が下がります」
【間違い叱り2】抽象的な言葉
✖「ちゃんとやって」「もっとしっかり」
○「これくらいにして」「ここまでやって」
具体的な目安を明確に
「『もっと』『しっかり』『ちゃんと』など使いがちなフレーズだけど、人によって基準が違う曖昧な言葉。相手の『しっかり』があなたが期待している基準に達していなくてまた叱る、の繰り返しではお互いにストレスに。『ここまでやって』など具体的に明確に伝えることが大事です」
【間違い叱り3】言い訳を封じる
✖ ・話をさえぎる
・事情を聞かない
○ 相手のターンをつくる
叱りの初手は「傾聴」!
「ミスをした人にもその結果に至った理由や事情があるはず。要望を伝えるときは、まず相手の話に耳を傾けることが大切。最後までじっくり聞きましょう。途中で『いやそれは』『そうじゃなくて』とさえぎるのは絶対にNG。『この人はわかってくれない!』と相手側もアドバイスを聞く耳を持たなくなってしまいます」
「感情的なときほど、言いたい気持ちが先行して相手の言葉にかぶせてしまうもの。相手の文の最後まで聞くよう意識して」
【間違い叱り4】過去を蒸しかえす
✖「この前の件もそうだけど」
○「これからどうすればいいかな」
1叱り1ネタまで
「ヒートアップすると『この前もさ……』など過去の件も蒸し返しがち。相手はどうしていいかわからないし叱りの要点もボヤけるので、叱るときは1ネタまでに。むしろ『今後どうすれば改善できるか』未来について話し合いましょう」
【間違い叱り5】大声・乱暴な言葉
✖「キミのせいで台なしだ!」
○「期待していたから残念に思ってる」
大声&暴言は効果なし
「怒りや感情に任せての大声や暴言は相手にとって威嚇や脅しと同じ、パワハラです。相手も萎縮してまったくの逆効果。怒りの感情が芽生えたときは『なぜその感情になったか』の原因に目を向けて。『期待していたのにダメだったからガッカリしている』のであればそれを伝えると冷静に叱れます」
【間違い叱り6】他人と比較する
✖「○○さんを見習って」
○「こうなってほしいと思ってる」
本人の過去・未来と比較を
「他人と比較することは『内面の否定』と同じ。相手は劣等感を抱き、自信をなくしてしまいます。比べるなら今と過去の相手と比較し『どれだけ成長したか』を話してあげればむしろ自信に。さらに期待していることを伝え、その未来像と比較して足りない部分を話し合えばやる気アップにもつながります」
「求めている役割を伝えることは、やりがいや充実感といったモチベーションに。積極的な変化が起きやすくなります」
【間違い叱り7】叱りから逃げる
✖「(嫌われたくないな…)」
○ 叱る=改善提案と理解している
正しい叱りは嫌われない
「自分自身が、過去に上司から“間違い叱り”された経験しかないと『叱られたくないだろうな』『嫌われてしまうだろうな』と叱ることに恐怖や罪悪感を感じてしまうもの。叱りを『相手をよい未来へ導く改善提案』と理解していれば、必要なときに怖がらずに叱れるはずです」
【間違い叱り8】成功体験の押しつけ
✖「私の頃はこうだった、だからアナタも~」うまくいくかは人による
○「私はこうして失敗したんだよね」聞きたいのは失敗談
成功体験はあくまで一例
「『自分はこうだった』という成功談は貴重なエピソードですが、その人の個性や時代などにも左右されるあくまで一アドバイスなので強要はNG。どうしても同じ方法を取らせたいなら助言ではなく業務命令として指示し、その結果の責任も負うこと。むしろ後輩は失敗談のほうが聞きたいものですよ」
「よくできる先輩も、こんな失敗をしたんだ、というエピソードは勇気づけられたり、信頼度アップにつながります」
齋藤直美さん
株式会社ミュゼ代表取締役。企業や自治体のリーダー教育や組織活性化に携わる。著書は『部下がついてくる人、離れていく人の叱り方』(あさ出版)など多数。
イラスト/村澤綾香 取材・原文/櫻木えみ 構成/斉藤壮一郎〈BAILA〉 ※BAILA2021年1月号掲載