平和に穏やかに過ごしたいのに、なんだかすり減る…。“争いたくない”けど、ときどきもやもやする人へ、カウンセラーの大野萌子さんとイラストレーターの描き子さんがうまく立ち回る方法&心の持ちようをアドバイス! 職場の後輩は、注意するにも気をつかう相手。どう接したらいい?
【お悩み1】優しく指導しても改善しない後輩。適切な次の一手がわからない
「新入社員が、会社の文化になじむ前に文句を言い始めた。それでいて、本人のやるべき仕事もできない&やらないで、こちらから指摘してもヘラヘラ。基本的にはきちんと説明指導をするけれど、理解した様子もない。こちらが主体的に動くほうがラクで、結果としてその後輩が育たない。本人の資質もあるけれど、何が正解か思い悩む」(40歳・営業)など指導に悩む声が。
相手が自分で考えてくれるような質問を投げかけてみる
(大野さん)
「ヘラヘラしている相手はやる気がなさそうに見えて、どうしていいものか悩みますよね。とはいえ、指示も注意もしないと、組織が悪い方向にいってしまいます。“次ミスしないためにはどうしたらいいと思う?”など、相手が考えるよう促すのはどうでしょうか。また、注意や指示をするときは“これをこういうふうに、いつまでにやってね”と細かくしっかりと伝えることも大事ですね。曖昧にすればするほどすれちがってしまいますから」
育ててあげる気があるなら仲よくなるところからスタート
(描き子さん)
「このお悩みの文章を読むと、新入社員に対して苦手意識があるように見えますね。争いたくないというよりも、“踏み込みたくない”という印象です。もし育ててあげようという気持ちがまだあるなら、注意する前に一度仲よくなってみるのはどうでしょうか。親しくなった先輩の言うことなら響くかもしれません。“もう知らねえよ”と思うならほうっておいてもいいと思いますよ。彼が伸びなくても、辞めても、あなたの責任ではありません」
【お悩み2】仕事を負担することより注意をするストレスが大きい
「こちらは軽く指摘したつもりでも、相手は“叱られた”と感じてしまうのではないかと不安になります。相手に誤解されるなら言いたくないです。代わりに私が仕事の修正をしたり、難儀を引き受けたほうがマシだと思ってしまいます……」(32歳・公務員)という人も。
“叱られた”と思われるのを防ぐ言い方をしてみては
(大野さん)
「パワハラが厳しく問われる今、萎縮して後輩に注意ができない……というお話はよく聞きます。でも、あきらめるのは仕事上よくないですよね。“叱られた”とできるだけ思わせないようにするには、行動に焦点を当てるのがポイント。心情や相手の本質にフォーカスするのはNGです。“書類が上がってくるのが遅い”は○で“お前は遅い”は×。また、注意したあとに“難しかったら相談してね”などのフォローのひと言を入れると、なおいいと思います」
注意がストレスになるような人の言葉は、きっと優しいです
(描き子さん)
「極端なことを言うと、相手がどう感じるかというのはこちらでコントロールできることではありません。どんなに言い方を考えたところで相手が“叱られた”と思うかどうかはわからない。誰もが100%傷つかない言葉って、きっと存在しないんです。でも、あなたのように“叱られたと思わせないように”と気をつけている方は、激しい言い方を選ばないはず。仕事なんですから注意するところはすべき。考えすぎなくて大丈夫だと思いますよ」
カウンセラー
大野萌子さん
日本メンタルアップ支援機構代表理事。人間関係改善コミュニケーション、ストレスマネジメントなどが得意分野。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える働く人のための言いかえ図鑑』(サンマーク出版 1540円)など。
イラストレーター。エッセイスト。『推しにも石油王にも出会えない私たちの幸福論』(ディスカヴァー・トゥエンティワン 1650円)など、エッセイ本も出版。生きづらさ解消に関する情報を主にTwitter(@kaqico)で発信している。
撮影/花盛友里 イラスト/いいあい 取材・原文/東 美希 ※BAILA2021年12月号掲載