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教えて。大江麻理子さん! 最近よく聞く「スタグフレーション」って何ですか?【働く30代のニュースゼミナール vol.22】

テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第22回目は、「スタグフレーション」について大江さんと一緒に深堀りします。

今月のKeyword【スタグフレーション】

すたぐふれーしょん▶景気が低迷しているなかで、物価の上昇が進行する状況を指す。景気停滞を意味するスタグネーション(stagnation)と、物価上昇を意味するインフレーション(inflation)を組み合わせた合成語。不景気で賃金が上がらないにもかかわらずものの値段が上がるため、生活を圧迫しやすくなる。

今月のKeyword【スタグフレーション】

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1970年代

オイルショックにより先進国がスタグフレーションに

第一次・第二次オイルショック時に、国際原油価格が高騰。ガソリンなどの石油関連製品の値上げが起こり、物価の上昇によって世界で不況が発生した
2021年10月

原油先物価格がNY市場で約7年ぶりの高値をつける 

世界の経済活動再開に伴いエネルギー需要が高まる一方で、産油国の生産量が回復せず、ニューヨーク原油市場で国際的な原油の先物価格が高騰した
2021年12月

電気・ガス料金の2月分の値上げを大手全社が発表  

LNG(液化天然ガス)などの燃料価格上昇により、大手電力10社と大手ガス4社が今年2月分の電気とガス料金の値上げを発表。6カ月連続の値上がりに

バイラ読者121人にアンケート

Q 「スタグフレーション」という言葉の意味を知っていますか?

Q 「スタグフレーション」という言葉の意味を知っていますか?

約3分の1が「意味を知っている」と回答。認知度が約9割あった「インフレ・デフレ」よりは少なかったものの、言葉を耳にしたことのある人が多いよう。「コロナで収入減なのにスーパーに行くと多くのものの値上がりを感じる」など心配の声も

Oeʼs eyes

意味を知っている方が多くてびっくりしました。いつも思いますがバイラの読者の方はすごく情報感度が高いですよね。賃金が上がらないなかで物価が上がっている状況に、ご自身の肌感覚で「おや?」という気持ちのざわめきのようなものがあり言葉が心に引っかかったのではないかという気がします

Q 最近多くのものやサービスが値上がりしていると感じますか?

Q 最近多くのものやサービスが値上がりしていると感じますか?

約9割が値上がりを実感している結果に。具体的には「パンや油、牛肉など食品が高くなっている」「電気やガス料金の連続値上げにクラッとした」「テーマパークのワンデーパス料金が上がった」との声が

Oeʼs eyes

かなり多くの方が実感されていますね。今、身のまわりのあらゆるものの価格が上がってきていて「え?なんで?」と思っていらっしゃる方が多いと思います。その理由をひもといてみると、企業が製品を作るために仕入れる原材料の価格が上がっている状況があり、しばらく続く可能性が高いと思います

Q 「ステルス値上げ」を感じることはありますか?

Q 「ステルス値上げ」を感じることはありますか?

価格は変えず内容量を減らすステルス値上げを感じている声が多い。「お菓子の中身が減った」「同じ価格なのにパッケージがスリムになった」といった指摘のほかに「日本は海外より物価が変わらない気がするのですが、なぜですか」との質問も

Oeʼs eyes

ここ数年様々な商品の容器が小さくなったり、中身が減っていますよね。日本の消費者は価格に敏感なため、企業は値段を据え置き内容量を減らす対応をせざるを得なかったんだと思います。ただ「ステルス値上げ」も限界に近づきつつあるので、この先は価格上昇に向かうのではないでしょうか

Q 過去3年以内に、あなたの収入に変化はありましたか?

Q 過去3年以内に、あなたの収入に変化はありましたか?

「収入が変わらない・減った」という人を合わせると約6割。理由に「勤め先の業績が伸びない・悪化した」との声が多数。収入が増えた理由には「定期昇給」「転職」「基本給のアップ」など多様な声が

Oeʼs eyes

収入が増えた方と収入が減った方がほぼ同率だったというのが、withコロナ時代の現在をよく表しているなと思いました。コロナにより業績の明暗が業界によってはっきり分かれたことが影響しているのかもしれないですね。コロナ禍においてなかなか賃上げが難しい状況の企業もあると思います

「世界で物価が上昇。スタグフレーションが今後起きないか、景気の動向に注意」大江さん

「世界で物価が上昇。スタグフレーションが今後起きないか、景気の動向に注意」

昨年に続き、電気・ガス料金やパン、コーヒーなど様々なものが値上がりしている。
「今、皆さん物価の上昇を肌で感じていらっしゃると思います。一方、お給料はなかなか上がっていないという声もアンケートにありました。世界ではより物価が上昇しています。そうしたなかで話題に上っているスタグフレーションを取り上げました」と大江さん。何を表す言葉なのでしょうか。

「スタグフレーションは、景気が低迷しているなかで物価だけが上がっていく状況を指します。1970年代前半の第一次オイルショックのとき、日本経済はスタグフレーションに陥りました。戦後初のマイナス成長となるなか、消費者物価が前年比で2割超上昇したのです。今は、世界で景気が回復するなかで物価が上昇する『インフレ』がアメリカを中心に進んでいます。まずは急激にインフレが加速することへの懸念がありますが、この先、物価が上がりすぎるなどして景気に水を差すと、スタグフレーションの懸念が出てくるかもしれません。日本の場合、欧米に比べると物価の上昇はかなりゆるやかですが、経済成長も賃金も伸び悩みが続いています。『スタグフレーションではないか』と指摘する声もありますが、日銀の黒田総裁は去年12月、物価は上がっているが景気は回復局面にあるとして『スタグフレーションではない』と述べています」

なぜ世界で物価が上昇しているのですか。「原油や天然ガスなどのエネルギー資源や様々な原材料の価格が上昇していることがひとつの要因として挙げられます。コロナ禍で控えられていた経済活動が世界各地で再開し始めたのをきっかけに、エネルギーも原材料も需要が急増し、価格がつり上がりました。それがサービスや最終製品などの販売価格に転嫁されているのです。もうひとつの要因としては、コロナ禍で閉鎖されていた東南アジアなどの工場の生産再開が遅れたり、人手不足で物流が滞ったりして供給体制に制約が生じていることが挙げられます。今は需要増、供給減と、物価が上がる条件がそろっているのです。

日本にとっては、さらに『円安』という要因もあります。エネルギー資源も原材料も多くを輸入に頼っている日本では、円安が進むと輸入価格が上がるため、さらなる物価上昇圧力となります。このように、様々なコストが上がることで物価が上がっている現状は、いい物価上昇ではないという見方があります。本来は、企業の収益がよくなり、働いている人の所得が増え、余裕ができて高いものやサービスでも買えるようになって物価が上がっていくのが理想とされているからです。企業収益も所得もあまり上がらないなかでの物価上昇が続けば、景気が冷えかねません。それでスタグフレーションへの懸念がくすぶっているのです」

実際に日本の景気はどういう状況ですか。
「コロナ禍の影響が徐々に和らぐもとで、持ち直しが明確になってきているとされています。今後も海外経済の回復が追い風となり、日本経済も回復していくと見られていますが、オミクロン株の感染拡大など、先行きの不確実性が高い状況も続いています」

「今、日本企業の値上げしにくい文化や〝筋肉質〟な体質に転換期が訪れている」大江さん

「今、日本企業の値上げしにくい文化や“筋肉質”な体質に転換期が訪れている」

「日本の物価上昇率が欧米に比べてゆるやかなのは、企業努力によるところが大きいです。日本では長く経済停滞が続いた結果、価格が上がらない状況に消費者が慣れてしまい、値上げに敏感なんですね。そのため企業は、コストが上がっているのに価格になかなか転嫁できていない。いわば身を削って価格上昇を抑えているのです。これで企業が弱ってしまうと所得が上がらず、景気が悪化してしまうことにつながる可能性があるので、今企業に必要なのはある程度価格転嫁をすることだといわれたりもしています」

アンケートでは、ここ3年収入が上がらない人が約6割。物価上昇を心配する声も。
「人間の心理を考えると、先に賃金が上がらないと物価上昇を容認しにくいんじゃないかという気が私もします。政府や経済界もどうにかよい物価上昇に持っていきたい思いが強く、岸田政権は賃上げを実現した企業を対象にした税制優遇策を打ち出し、経済界に前向きな働きかけをしています」

スタグフレーションにならないためには?
「日本企業は筋肉質になりすぎているといいますか、無駄なコストを削減して効率のいい体質をつくり上げるなかで、人件費もコストだととらえ、抑制してしまっているところがあります。ただ、若い世代から人材の流動性が少しずつ高まっていますので、その発想では今後優秀な人材を確保するのが難しくなってくるでしょう。企業のためにも、日本経済のためにも、『人への投資』をいい循環の起点にしていきたいですね」

大江麻理子

大江麻理子


おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。

撮影/木村 敦 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2022年3月号掲載

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