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関心が高まる「経済安全保障」とは?大江麻理子さんが分かりやすく解説!【働く30代のニュースゼミナール vol.20】

テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』の大江麻理子キャスターがセレクトした“働く30代女性が今知っておくべきニュースキーワード”を自身の視点から解説する連載。第20回目は、世間の関心が集まっている「経済安全保障」について大江さんと一緒に深堀りします。

今月のKeyword【経済安全保障】

けいざいあんぜんほしょう▶経済面からの手段や政策を通じて国民の生活をリスクから守り、国の安全保障を実現すること。重要な資源やエネルギーの確保、先端技術や個人情報の海外への流出防止などその分野は幅広い。米中対立のなか意識され始め、岸田政権において経済安全保障の担当相が新設された。

今月のKeyword【経済安全保障】

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2020年春

コロナ禍で中国からのマスクの輸入が減り日本で不足 

国内で流通していたマスクの約8割を占める中国などからの輸入が、新型コロナウイルスの感染拡大時に大幅に減少。マスクの品薄状態が深刻化した
2021年3月

通信アプリ大手のLINEで個人情報管理問題が発生 

LINEの日本国内利用者の一部の個人情報を中国の関連会社が閲覧し、韓国サーバーに保管していたことが明らかになり、政府が実態調査を行った
2021年10月

岸田政権にて経済安全保障の担当大臣が新設 

岸田首相は初の経済安全保障相に小林鷹之氏を起用。半導体などの重要物資の確保や技術流出の防止に関する「経済安全保障推進法」を定めると表明した

バイラ読者106人にアンケート

Q 「経済安全保障」という言葉の意味を知っていますか?

Q 「経済安全保障」という言葉の意味を知っていますか?

ニュースなどで言葉に触れたことはある人が多い結果に。「日本政府が経済安全保障の政策を推進することに賛成か」という質問には約8割が「賛成」と回答。「具体的にどのような政策が打たれているのか知りたい」との声が聞かれた

Oeʼs eyes

「知っている」「聞いたことはあるが意味は知らない」という方々を合わせると約4分の3の方が言葉を耳にされたことがあるということですよね。私たちの生活と密接に関わる問題でもあるので、これからより具体例が身のまわりに増えてきて「ああこれか!」と思うことが多くなるのではないかなと思います

Q国際情勢や海外の災害、感染症の拡大などでサプライチェーンの分断が起き、その影響が自分の生活に及ぶイメージがわきますか?

はい 63%
いいえ 37%

約6割が「イメージがわく」と回答。「ガソリンや食品の価格が高騰して家計を圧迫しそう」といった意見から、「部品メーカー勤務で海外部品の調達が困難」「冷蔵庫を購入したいけれど部品がなく入荷待ちです」といったリアルな声も寄せられた

Oeʼs eyes

コロナ禍以降、サプライチェーンの分断の影響を実際に経験された方が多かったのではないでしょうか。アンケートの回答に「自分の仕事に直接影響があった」「買いたいものがすぐ手に入らない」など実感の伴ったコメントがありました。原油高や半導体不足が続けば、これからさらに肌で感じる方が増えていく可能性がありますね

Q グローバル化によってサプライチェーンが国境をまたぐことが増えたことに賛成ですか?

賛成 21%

どちらとも言えない 58%

賛成できない 21%

約半数が「どちらとも言えない」と回答。その理由に「価格競争でモノが安く買えるメリットの一方、供給が滞る可能性も」「経済成長とリスクの両面がある」との意見が。「自国ですべて賄いきれないから賛成」「他国への依存を不安に思う」といった声も

Oeʼs eyes

この質問は回答するのが難しかったんじゃないかと思います。グローバル化の恩恵を享受していることを皆さんがよくわかった上で、いざというときに備えて国内で完結するルートを持つことの重要性も認識されているから「どちらとも言えない」という回答を選ばれた方が多かったのではと推察します

Q 経済や国際情勢に関するニュースを難しいと感じたことがありますか?

Q 経済や国際情勢に関するニュースを難しいと感じたことがありますか?はい82% いいえ4%

大半の人が「はい」と回答。難しいと感じる一方、関心は高いようで「コロナの影響で経済がどう変化したのか知りたい」「生活に関わる視点で教えてほしい」「わかりやすく説明してほしい」との要望も

Oeʼs eyes

身近な生活からさかのぼってニュースを見ていただくといいかもしれません。たとえば最近の米国産牛肉の高騰は、アメリカで経済活動が本格再開し人々の牛肉需要が回復しているのに対して加工工場の生産体制が追いついていないからだとわかると、ニュースがより近く感じられると思います

「マスクから個人情報まで、身近な生活に経済安全保障の問題がたくさん潜んでいる」

政府が掲げる政策の柱のひとつである、経済安全保障に関心が集まっている。

「岸田政権が経済安全保障の担当大臣を新設し、日本がこれから力を入れていく政策ですので取り上げました。実は、私たちの生活と密接に関わっているんですよ」と大江さん。経済安全保障とは一体何ですか。

「グローバル化が進み、モノやサービスを作る過程(サプライチェーン)に世界中の国々が組み込まれるようなってきているなかで、私たちが安心して暮らせる社会を維持するために重要な分野がいくつもあります。それらを守ろうとしているのが経済安全保障の考え方です」

私たちの生活とどう関わっていますか。

「わかりやすい例として、2020年の新型コロナ感染拡大時に日本で起こったマスク不足が挙げられます。当時マスクはほとんどが海外で生産されていたため、世界中で需要が急増するなか、日本に充分な量が入ってこなくなり、薬局などにマスクを求める長蛇の列ができました。異様な状況に不安を感じた方も多かったと思います。そこで私たちの生活に欠かせない製品については、国内でもある程度生産できるようにしましょうと、国内に生産拠点をつくった企業を国が支援する対策が講じられました。

ほかに、通信アプリILNEで起きた個人情報の管理をめぐる問題も身近な例です。いまや業務の委託先が海外であることも少なくありません。しかし、企業の重要技術や顧客の個人情報がそこから流出することは防がなくてはなりません。企業のデータをどこで保管し、海外のどんな企業とやりとりがあるのかをきちんと示すことが求められるようになってきています」

不足が続く半導体を確保する動きも。

「『産業のコメ』と言われるほどあらゆる製品に使われるものなのに、世界的に不足が長期化している半導体を確保するため、政府が補助金を出して台湾の半導体大手TSMCの工場を日本国内に初めて作ることになりました。

世界が大きく変化している今、実に幅広い分野で、私たちが安心して暮らせる環境を整えられているか、必要なものが滞らず必要なときに手に入るかが問われていて、政府は対応を迫られているのです」

「“選択と集中”から“多様化、分散化”へ。経済合理性の追求だけでは難しい時代に」

「“選択と集中”から“多様化、分散化”へ。経済合理性の追求だけでは難しい時代に」

今後、日本はグローバル化と経済安全保障の強化をどう両立していくのでしょうか。

「今まで企業は効率化やより儲かる仕組みを追求してグローバル化を進め、業績を上げてきました。でもこれからは経済合理性だけを追求するのは難しい時代になっていくと思います。同じグローバル化でも、材料の調達先や生産拠点を複数持つなどの分散化を図ることで、何か起きたときのためにいくつかの手段を持っておくことが必要となっていきそうです。“選択と集中”で経営効率を高めてきたときよりも余計にお金はかかるかもしれませんが、“多様化、分散化”して適応力を高めることが経済安全保障上も必要なコストとなりそうです」

アンケートでは8割以上の読者が「日本のエネルギー自給率の低さが不安」と回答。

「まさにエネルギーは経済安全保障において非常に重要な分野です。電力の安定供給を図るために自給率をどう高めるか、そのためにはどんな電源構成(どのエネルギー源で電気を作るかの構成割合を示したもの)が望ましいか、その際原発はどうするか。また海外でエネルギー資源をどう確保し輸送するかなど多方面から考えなくてはならず、簡単に解が見つからないところにこの問題の難しさがあります。特に最近は原油価格の高騰に円安が重なり、色々な物価が急激に上昇する可能性があり心配な局面になっています」

大半の読者が持つ「経済や国際情勢のニュースは難しい」という意識を変えるには?

「ニュースがどう自分とつながっているのかを知ると、『ああ、あのことね』と、とっつきやすくなり深く理解できるのではないでしょうか。アンケートに『冷蔵庫を購入したいけれど部品がないと言われ入荷持ちです』『インテリアの仕事でウッドショックの影響が』といったコメントがありましたがまさにその感覚です。冷蔵庫は半導体不足、ウッドショックは海外で景気が回復し木材需要が急増したため輸入木材の価格が高騰し手に入りにくくなってしまったという、どちらも経済安全保障関連のニュースですが、自分の身近にある出来事を起点にして原因を探っていくと、そこにたどり着くわけです。私が担当している番組『WBS』でも、『難しそう』と先入観を持たれないように、消費の現場の話からさかのぼる構成にしていることがけっこうあるんですよ」


大江麻理子

大江麻理子


おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。

撮影/中田陽子〈MAETTICO〉 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2022年1月号掲載

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