漫画を愛するライター・中川 薫がバイラ女子におすすめの漫画をピックアップ! 今回は、田舎に住む地味カップルの恋愛物語『白山と三田さん』をご紹介します。笑いあり、きゅんあり、2人が奏でる名調子を確かめてみて。
ナビゲーター
中川 薫
漫画、音楽、旅、酒を愛するライター。野良猫の日常を描く園田ゆり著『ツレ猫マルルとハチ』(講談社)もよき。
©くさかべゆうへい/小学館
一方的に面が割れてるような、田んぼに囲まれた田舎町に暮らす、ラジオが趣味の冴えない男子高校生・白山と、おとなしいけど風変わりな嗜好を持つ三田さんの日常を描いたラブコメディ。田舎あるあるの妙なリアルさと、クセの強い日常の落差は読み手の想像を裏切っていく。
なれそめは白山が助けた老人(=三田さん祖父)からの「お願い圧力」。それをなぜかごく自然に受け入れた二人は逢瀬を重ねる。放課後の公園でモデルガンをぶん回す趣味を持ちつつ、「とげぬき地蔵(東京・巣鴨)に行ってみたい」と頰を赤らめるオトメな三田さん。デートで母親から大量のおいなりさんを持たされたり、見知らぬお年寄りたちに大量のアメを持たされたりと押しに弱い白山。強い意思があるでもなく、流されるがままに起こる偶然の積み重なりが、互いの壁を取り払っていく。「あらま」「あれま」という音頭のリズムで距離を縮める二人の“間”に、思わず笑いがこみ上げる。あからさまな“ラブ”はないのに“きゅん”はある。二人が奏でる名調子を確かめてみて。
『白山と三田さん』
くさかべゆうへい著
小学館 1巻~ 550円
上京を夢見る高校生・白山は、日々趣味のラジオを聴き、バイトにいそしんでいた。ある日、田んぼでおぼれている老人を救ったことで、彼の孫娘・三田さんと交際することになる。
漫画好きならこれも必読!
『おとなのずかん改訂版』
イトイ圭著
小学館 1巻~ 715円
家族の役割をとらえ直す、全員“他人”の家族物語
男友達に娘を託されたクドー。親友の忘れ形見と“本当”の家族になるため、出会ったばかりの女性に結婚を申し込むが……。
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2022年6月号掲載