BAILA6月号綾瀬はるかさんのインタビューで思い出した、茨木のり子さんの「汲む」【エディターズピック vol.220】

働くバイラ世代の大人に沁みる言葉

発売中の6月号は綾瀬はるかさんが表紙。もう読んでいただけましたか?

 

誌面では30代からの仕事と向き合い方を、BAILA読者と同世代で大ベテランの綾瀬さんにお聞きしています。

  

インタビューではまず初めに、綾瀬さんにも、朝起きて「今日も仕事かぁ」と思うときがあるんだと、単純な発見にびっくり。そして、詳しい内容はぜひ誌面を読んでいただきたいのですが、綾瀬さんほどのキャリアを積んだ女優さんでも、大変なシーンでは緊張で手が震えたり、心臓の音が聞こえたらどうしようと思ったりするのだというお話も。

私が一番印象に残ったのは、その緊張への対処法。「本当に新人のつもりで『できません、私』っていうところからやるほうがいいなって。…(中略)…プライドとか、へんな自信とか、余計な欲とかをどれだけ捨てられるか、というのがすごく大事だなと考えていて、この2〜3年、ずっとそれが自分のテーマになっています」という綾瀬さんの言葉です。

  

この言葉から私が思い出したのが、茨木のり子さんの詩「汲む」。

茨木のり子さんの詩といえば、「自分の感受性くらい」が教科書にも採られていてよく知られています。「自分の感受性くらい/自分で守れ/ばかものよ」という強烈なラストは、何度読んでもドキッとさせられます。

「汲む」という詩は、同じ「感受性」をテーマに、少し違う角度から表現された作品。「大人になる」ってどういうこと?「いい仕事」の核にあるものは?「初々しさが大切なの」とは詩の中に登場する素敵な大人の女性の言葉で、その言葉に、背伸びをしていた少女の「私」はこう悟ります。

大人になってもどぎまぎしたっていいんだな

ぎこちない挨拶 醜く赤くなる

失語症 なめらかでないしぐさ

子どもの悪態にさえ傷ついてしまう

頼りない生牡蠣のような感受性

それらを鍛える必要は少しもなかったのだな

 

(『茨木のり子集 言の葉1』ちくま文庫 「汲む」から一部を引用)

  

 

「自分の感受性くらい」が「〜するな」と畳み掛けながら厳しい言葉でビシッと気合いを入れてくれるのに対し、「汲む」はじんわり染みるように励ましてくれる。働いてちょっと疲れている大人におすすめしたい詩です。

 

「初々しさ」と「大人になる」ことと「いい仕事」の難しいバランス。「余計なものをどれだけ捨てられるか」という綾瀬さんの言葉。働き続けて十数年、いい大人になった今こそその意味を汲むときなのかもと思っています。

BAILA6月号試し読みはこちら!

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