フジテレビ「めざまし8」のキャスターとして“朝の顔”を務めるの永島優美さんにインタビュー。キャスターとしてはもちろんバラエティ番組など幅広い分野で活躍し、今年でキャリア9年目。そんな永島さんのターニングポイントとは?
引っ込み思案な少女が朝の帯番組のキャスターに
「めざまし8」のキャスターとして爽やかな笑顔を届けてくれる永島優美さん。平日の起床時間はなんと午前3時。録画しておいた前日夜のニュース番組をチェックしてから出社し、打ち合わせをしながら新聞や資料を読み込んで8時の生放送へ。帰宅後も番組のオンエアチェックをするなど、準備や勉強を欠かさない多忙な日々を送っている。
「朝の番組を担当している身として心がけているのは、毎日笑顔で元気に、当たり前の朝をお届けすること。今はコロナやウクライナ情勢など気持ちが落ち込むようなニュースも多いですが、一瞬でもホッとする時間をつくれるよう、試行錯誤をして臨んでいます」
明るくハツラツとした印象が強いけれど、実は子どもの頃は「人前には絶対に出たくないタイプ」だったという。
「父がサッカー選手だったこともあり、街を歩いていると『あ、永島選手の娘だ』と言われることが多くて。知らない方に存在を知られていることが怖くて、母の後ろに隠れている子どもでした」
ずっと下を向いている自分をなんとか変えようと、中学・高校時代はチアリーディング部で活動。必然的に人前で大きい声を出す訓練をしたことで、少しずつメンタルが鍛えられたという。
「祖母のすすめで神戸市の観光親善大使に応募したことも大きかったです。入念に準備して臨んだイベントで、観客のおばあさまに『あなたの話し方が好き。今日は楽しかったわよ』と言ってもらえたことにすごく感動して、話す仕事に憧れを抱くようになりました」
現在、キャリア9年目の永島さん。最大のターニングポイントは昨年、新番組「めざまし8」のメインキャスターに就任したことで訪れた。
プレッシャーによって追い詰められた苦い思い出
経験を積み、仕事に対する自信も芽生え始めた時期に直面した無力感。ショックを受けたと同時に、「変わらなきゃまずいぞ」という感情を久々に呼び起こすきっかけにもなった。
「実は私が最初に『変わらなきゃ』と強く思ったのは入社3年目、『めざましテレビ』のメインキャスターに就任した2016年のこと。絶対にミスできないという過剰な緊張と不安から自然な振る舞いができなくなってしまったんです。プレッシャーによって寝ても寝ても肌荒れが治らず、コンシーラーを厚めにのせても隠せない状態でした」
そこまで追い詰められたのは、掲げていた理想が高かったから。
「前任の加藤綾子さんはとにかくパーフェクトな先輩。完璧にニュースが読めるし速報が入っても対応力が高く、アドリブでお茶目なこともできる方。私もそうならなきゃと意気込んでいたけれど……まったくなれない(笑)。なかなか闇から抜け出せず、涙をこらえながら会社に行く毎日でした。そんなことが1年半くらい続いたんです」
周りの人が見つけてくれた意外な自分らしさ
長いトンネルを抜け出すきっかけとなったのは、信頼するベテラン女性スタッフからの率直な意見だった。
「みんなで食事をしている席で相談したら、『私たち制作陣も永島の本来の姿がわからないから、どうすれば面白くなるのかわからない。スタッフにもっと自分を見せていかないと、永島を生かせないよ』と直球で言われてしまいました。ちゃんとしなきゃいけないと思い込み、翻弄されていることを見抜かれショックを受けましたが、同時に『もしかしたら変われるかもしれない』と希望を持てたんです。緊張の糸がパッと解けて、スタッフの方とごはんに行く機会も増えました。プレッシャーから解放されてしばらくして、番組側が私のミスや言い間違えをまとめた『迷言集』という企画コーナーを作ってくれたんです。もちろん反省しましたが、いじって笑いに変えていただいたことが大きな救いになりました。個性がないことに悩んできたけれど、周りの人が“永島らしさ”をつくってくれた。そこからはびっくりするくらい肩の力を抜いて仕事ができるようになりました」
現在、仕事をする上で大切にしているのは等身大の30代の視点。
「『めざまし8』では事前にしっかり準備をして情報を頭に入れますが、あくまで専門家ではないので、放送中も疑問に思うことには勇気を持って『それはどういう意味ですか?』と質問したり、難しい話が飛び交う場面ではかみ砕いたひと言を挟んだりするようにしています。背伸びをしないことの大切さは『めざましテレビ』の経験で学んだこと。その上で、自信を持って言える意見だけは、自分の言葉でしっかり伝えたいと思っています。ニュースへの向き合い方は、少しずつ成長できている気がしています」
ポリシーは全力投球。「変わりたい」という思いを胸にまじめに、時に不器用に歩んできた飾らない姿勢は、これからもゆらぐことはない。
「キャリアを重ねると後輩から頼られたり責任ある仕事を任される場面も増えてきますが、だからといってすべてを一人で抱え込む必要はないと思うんです。無知だと思われる恐怖心で武装するのではなく、等身大の自分でいることの大切さは、これまでの経験で何よりも実感していること。30代も一つひとつの仕事に丁寧に、常に優しい気持ちで取り組んでいきたいです」
永島優美
ながしま ゆうみ●1991年11月23日生まれ、兵庫県出身。’14年、フジテレビ入社。「めざまし8」(月~金曜・朝8時~9時50分)、「ジャンクSPORTS」(日曜・19時~20時)を担当。’21年、同社内制作局の男性と結婚。休みが合う日の朝、夫と1時間ほどウォーキングすることが気分転換に。
撮影/須藤敬一 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2022年6月号掲載