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本をひらけば、そこが旅先。─原田マハ『旅屋おかえり』【#バイラ読書部】

三度の飯と、本が好き!
年間100冊以上の本を読む、生粋の本好きバイラーズの瑠菜です。

今回は、「読書部のバッグの中の一冊」というテーマにぴったりの、どこにいてもあなたを遠くへ連れて行ってくれる小説をご紹介します。

「おかえり」があるから旅に出る

 いつもの電車に揺られる仕事帰り、ふと目線の先にスーツケースを抱え、満足げに眠る女性。ああ、いいな。きっといい旅をしてきたのだろう。私は次いつ旅に出られるかな。
 そんな私を連れ出してくれたのは、旅代行の仕事をする“おかえり”こと丘えりか。旅なんて、自分で行くのが楽しいのに、なんて思っていた数分前。気づいたら私は、彼女と一緒に新幹線に乗り込んでいた。満開の桜が、出来立ての鯛めしが、次々と目の前に現れる。まるで、たった今旅をしているかのように。
 ひたむきな彼女と旅を続けるうちに、「旅は、帰る場所があるから楽しい」ということに気付かされる。「ただいま」を言える相手や場所を大切にしたい。また旅に出るため、そして帰ってくるため、明日からも頑張ろう!と思っている自分が、電車の窓ガラスに映っていた。
 この本をバッグに忍ばせるなら、ハンカチもお忘れなく。うっかり私のように電車で読むと、旅先で出会う人々の温かさに涙してしまうから。

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