漫画を愛するライター・中川 薫がバイラ女子におすすめの漫画をピックアップ! 今回は、本を愛する少年が文学の力を借りて日々の困難を乗り越えてゆく物語『本の虫 ミミズクくん』をご紹介します。
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中川 薫
エンタメライター。奥悠著『そこで星屑見上げてろ』(集英社)など、アイドルテーマの漫画が熱い!
©カラシユニコ/小学館
一冊の本が人生を変えた……とまではいかなくとも、小さな気づきを得ることってあるのでは?主人公は、祖父譲りの読書家である男子小学生・剣。とび箱5段も跳び越えられず、落とし物のしおりを横領(?)された同級生女子にあわあわする剣は、司馬遼太郎著『燃えよ剣』主人公の新選組副長と自分を比べて、なぜ自分は土方歳三じゃないんだ、これじゃただの本の虫じゃないかと嘆く。「しかし、剣がある」との一文から、歳三に剣があるように、自分には本があると気づくのである。
ブレイディみかこ著『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んだ剣は、人の気持ちをもっとわかりたいと思う。そして、本から得たばかりの方法、エンパシー(他人の靴を履いてみること)で、知り合いのホームレスの老人の気持ちを考えてみるが……。本と同じく“地雷だらけの多様性ワールド”で生きる剣の実践の日々は、我々に気づきを与えてくれる。本との対話が、自分や他人、さらには世界への理解を深める一歩であることを。
『本の虫 ミミズクくん』
カラシユニコ著 小学館
1巻~ 715円 5月30日発売
祖父の影響を受けた文学少年の剣(あだ名はミミズク)の日常は、『燃えよ剣』や『星の王子さま』など読書三昧。本との出会いが剣の人生を少しずつ豊かなものにしていく。
漫画好きならこれも必読!
『緑の歌 - 収集群風 - 』
高 妍(ガオ イェン)著
KADOKAWA 上巻 858円
ページをめくるたびに流れ出すノスタルジックな愛の歌
村上春樹の自伝的エッセイ『猫を棄てる』の挿画を担当した台湾出身の漫画家が描く、愛と音にあふれる青春譚。上・下巻、同時発売。
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2022年7月号掲載