リモートワークが増え、以前よりも睡眠時間の確保がしやすくなっている今。たまりにたまった睡眠負債を一挙に返済し、仕事の効率を上げ、美容や健康面でもプラスを得る上手な睡眠法を学びたい。
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1.田中みな実さんにとって睡眠とは?
睡眠は、精神的にも美容的にもすべてのバランスを整える基本
20代後半の眠れなかった日々が睡眠の大切さを知るきっかけに
会社を辞めてフリーになったとき、自分で選択したことなのに、環境や仕事の変化に戸惑い、漠然とした不安から眠れなくなりました。そこから思考もどんどんネガティブに。睡眠がくずれるとすべてのバランスがくずれる。その恐ろしさに直面して以来、良質な睡眠をとるための生活習慣を心がけるように。
食事、お風呂、香りetc.良質な睡眠のための生活習慣
夜の食事は睡眠中、消化にエネルギーが使われないように、できるだけ消化のいいものを。寝る1.5~2時間前はラジオ、読書、書きものの時間にあてて、視神経に入るブルーライトをカット!帰宅時、お仕事モードONな状態の切り替えはお風呂で。入浴剤やアロマで副交感神経を優位にして脳をリラックス、入眠しやすい状態にもっていきます。
遮光カーテンにエアウィーヴでよく眠れる環境を整える
寝返りを打ちやすい設計のマットレス、エアウィーヴL01と外光を完全シャットアウトの1級遮光カーテンで安眠環境を整えています。ベッドに入ったら、まずはゆ~ったりと深呼吸をして副交感神経のスイッチをON。そうして眠るのが睡眠リチュアルです。
2.専門家がアンサー! 良質な睡眠とは?
《睡眠とホルモンと免疫力》
教えてくれたのは…
スリープクリニック調布院長 遠藤拓郎 先生
親子3代にわたり90年睡眠研究に携わり、スリープクリニックを調布・銀座・青山・札幌に開院。睡眠に関する著書多数、睡眠のための音楽監修など幅広く活躍中。慶應義塾大学医学部特任教授。
1 睡眠はホルモンがつかさどる
睡眠は深夜0時から朝6時を中心にすると良質な眠りが得やすいといわれています。これはよい目覚めに欠かせないコルチゾールが夜中の3時ごろから分泌されるから。コルチゾールの別名はステロイドホルモン。免疫を封じ込める働きもあり、ストレスを受けると分泌が促されるため、過剰に分泌されると寝つけないトラブルと免疫低下のWパンチに。だから、ストレスは安眠の敵なのです。
2 コロナ禍の睡眠傾向
早寝早起きというのは間違いで、急に早く寝ようとしても夜、そう簡単には眠れません。寝つく時間は起きる時間に依存するので強いていうなら“早起き早寝”。リモートワークで朝、起きるのが遅くなったことで睡眠時間が全体に後ろにズレてしまった人は眠りの質が落ちています。もとに戻すにはまずは30分早く起きる。クリアしたら、さらに30分と少しずつもとの起床時間に近づけていくことが大事です。
3 睡眠の3の法則
睡眠の理想の長さは人それぞれ。睡眠時間の長さと睡眠の質は反比例します。寝すぎは眠りの質が悪くなり、寝不足は日中の活動を妨げます。睡眠障害とは以下の状態が2週間たっても改善されないこと。①寝つくのに30分以上かかる、②就寝中、3回以上目が覚める、③起床予定時刻より30分以上早く目が覚める。④昼間3回以上、眠たくなる。当てはまる人は睡眠外来で医師に相談を。
睡眠とかかわる2大ホルモン
【成長ホルモン】
睡眠と免疫が密接な関係なのは、免疫にかかわる成長ホルモンが眠っている間に分泌されるから。この成長ホルモンは昼間はほとんど出ず、眠ってから3時間の間、しかも深い眠りのときに出るものです。子どもの成長期に多く出るから成長ホルモンと呼ばれていますが大人も分泌し、主に壊れた細胞の修復を担うホルモンです。
【コルチゾール】
目覚めるとき、人間の体は深部の体温が上がります。就寝中、動かないで体温を上げるために体が分泌するのがコルチゾール。朝の3時ごろから分泌され始め、脂肪を燃やして体温を上げていきます。コルチゾールはストレスを受けるときにも出るので、そうなると夜であっても体温が上がり、なかなか寝つけなくなってしまうのです。
《睡眠の質と体内時計の関係》
教えてくれたのは…
東洋羽毛工業 國井 修 さん
東洋羽毛工業勤続24年。日本睡眠教育機構認定の上級睡眠健康指導士、日本睡眠改善協議会認定の睡眠改善インストラクターの資格を有し、セミナーなどで睡眠の大切さを啓発している。
1 睡眠は夜だけのものではない
睡眠トラブルを抱える人は夜、どうしたら眠れるか?ということを考えがちですが、良質な眠りはむしろ朝や昼間から続く一日の行動にかかっているのです。メイン時計である脳の時計とサブ時計である各細胞のもつ末梢時計に朝と夜の時間を正しく刻ませること。そのためには昼は活発に行動し、夜はリラックス状態にすることが重要なのです。
2 日本人は眠りベタ
日本人の平均睡眠時間は7時間24分で経済協力開発機構加盟国中、ワースト1位。また米国のシンクタンクの調査では睡眠不足による経済損失が約15兆円にもなるといいます。寝る間を惜しんで働いているにもかかわらず、結果として損失が大きいという皮肉な結果に。これは勤勉を美徳とする国民性が睡眠をおそろかにする傾向を生んでいるといえるでしょう。
3 睡眠は技術!
朝浴びる明るい光により、脳のメイン時計がリセットされ、夜までの12~13時間を体が活動するのに適した状態になります。そののち睡眠ホルモン・メラトニンが分泌され、手足から熱を放出し、深部体温を下げて入眠状態に導きます。このメカニズムを知っていればよい睡眠を得やすい体に。光や音・香りなどさまざまな方法でよい睡眠を得るための技術を磨こう。
ぐっすり眠るコツ
【睡眠のフラワーパズル】
睡眠はこれをしたらよくなる、眠れるようになるという話ではなく、起きている間と眠っている間の一日の過ごし方が大切で、朝から夜までつながっているという考えです。睡眠の要となるピースは、大きく6項目。それぞれのパズルピースを意識することで、快眠への花が大きく咲いていきます。
3.睡眠アドバイザーが教える! できることから始める、よい睡眠の整え方13
【1】平日と休日の睡眠バランスをくずさない
平日の睡眠不足解消のために朝寝坊をして寝だめする。これは社会的時差ボケとも呼ばれ、自ら眠りの質を落としているような行為。土日の朝、起きるのが遅くなれば、日曜の夜、なかなか寝つけず、月曜の朝すっきり目覚められないという事態に。寝だめはできないと心得て。
【2】部屋の照明は段階的に落とし眠るときは月明かりほどに
日本の照明は明るすぎるため、体がなかなか睡眠モードに入りにくい。夜は暖色系で暗めの照明にし、就寝30分前には暗めのバーぐらいな50ルクスまで落として。就寝中は真っ暗もしくは月明かり程度、0.3ルクス程度が理想的。就寝中、まぶたに光を感じないように間接照明やフットライトを利用して。
【3】冷え性でもソックスはNO足から放熱を
冷え性で眠れないというのは末端から放熱できず深部体温が下げられないため。末端の体温を上げることは大切だが、靴下をはいたままや電気毛布で眠るといった行為は、手足の放熱を妨げて、深部体温を下げることを邪魔してしまう。靴下は寝る直前まではいて足を温めておき、布団に入る際に脱ぐようにすればOK。
【4】寝る2時間前に40℃のお風呂につかる
【5】鎮静作用のある好きな香りでリラックス
脳をリラックスさせ、安眠を誘うのはラベンダーやカモミール、オレンジスイートやベルガモットなどの鎮静作用のあるもの。香気成分セドロールの入ったスギやヒノキのウッディ系もおすすめ。入浴剤やお風呂上がりのボディケアに香りの効果を取り入れるのもいい方法。
【7】寝る前の飲み物は常温で。寝酒はNG
眠る前の冷たい飲み物は刺激になってしまうため、入眠が困難になる。またお酒は就寝中にのどの渇きや利尿作用で目覚めてしまい、眠りが分断される羽目に。お酒は寝る前の3時間前、タバコは1時間前には控えたい。寝る前の飲み物なら、その鎮静効果で古くから天然の精神安定剤として用いられてきたバレリアン入りのハーブティーなどを飲むのがおすすめ。
【8】肩甲骨のストレッチ
就寝の30分前にストレッチなどの軽い運動で血流をよくして寝る前の深部体温が下がりやすい状態へ。家庭用の椅子でのパソコン作業をするリモートワークでは肩まわりの筋肉がこわばりがち。深呼吸しながらの肩甲骨はがしなどを行い、ほどよくリラックスして。
【9】就寝中は図書館レベルの静けさが理想
よい眠りのためには静けさも重要なポイント。理想は図書館レベルの40dB。連続音には人は慣れることができるが不規則な間欠音は眠りを分断する原因に。近隣の住環境により、音が気になる人はまずは窓にかけるカーテンを厚手のものに替えて遮音しよう。
【10】温度と湿度
寝るときの環境は夏は温度25~28℃・湿度は40~60%、冬は温度15~20℃・湿度50%以上が理想とされている。夏は暑さで寝苦しくなり、眠りが分断されがち。クーラーや扇風機だけでなく、接触冷感の寝具やパジャマを上手に活用し、眠れる涼しさを確保したい。
【11】15時前に20分。昼寝は上手に
お昼寝はパワーナップとも呼ばれ、午後の仕事の効率を上げる手段にも。ただし深い睡眠に落ちる前の20分以内。ベッドや布団で横たわるのではなく、椅子の背もたれに身を預ける、机に伏せるなどの体勢で。20分から30分後に覚醒作用のあるカフェイン入りの飲み物を事前に飲むとすっきりした目覚めの助けに。
【12】スマホで寝落ちはNO
スマホの光により、視神経から脳に情報が伝わり、脳が覚醒モードに。しかし、体は疲れているので寝落ちしてしまう場合は、睡眠不足がたまっている可能性が高い。みな実さんも実践する寝る1時間前のスマホNOは見習いたいもの。
【13】睡眠系機能性表示食品は頼りすぎずに上手に活用
睡眠の質を高めるエビデンスがある機能性表示食品。これらをとっているから眠れると頼り切りになるのではなく、眠りのための一日の過ごし方を意識したうえで、サポートするものとして上手な活用を心がけて。
撮影/ amana images 取材・原文/長田杏奈 構成/菅井麻衣子〈BAILA〉 ※BAILA2020年8月号掲載
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