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大人気マンガ『トーキョーカモフラージュアワー』はどう生まれた? 作者の松本千秋先生にインタビュー!

恋愛の刹那を描き、SNS上で話題沸騰中のマンガ『トーキョーカモフラージュアワー』。この魅力的な物語が生まれたきっかけを作者の松本千秋先生に直撃! 「この作品について女性誌でインタビューを受けるのは初めてかも」と先生。物語が生まれた背景や、描きながら感じていることを聞いてみました!

松本千秋先生

松本千秋先生


CHIAKI MATSUMOTO
東京都出身。コミックエッセイ『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』でデビュー。ドラマ化に。『トーキョーカモフラージュアワー』は『ヤングキング』にて現在も連載中!

「この作品で、解放される何かがあればいいなと思います」CHIAKI MATSUMOTO

「普通の人の感覚」をみんなと共有しようと作品を描き始めました

――日常の中に横たわる、男女間のわかりあえなさをすくい出し、読み手を悶絶させる短編コミック『トーキョーカモフラージュアワー』。この魅力的な物語が生まれたきっかけは何ですか?
「最初はTwitter上で発表していたんですが、そもそもは、単純に自分の作品の読者層を広げたかったからなんです。私はマッチングアプリを題材とした漫画でデビューしていて。わりとクセの強い作風だったんですよね。SNSで私のアカウントをフォローしてくださる読者の方も、裏垢でひっそり応援してくれる……みたいな感じで。それはそれでありがたいものの、もう少し普通の恋愛を題材にした創作もできますし、私は怖い作家じゃないよ~(笑)、とも思っていて。今の時代とリンクして、なおかつより多くの人と感情を分かち合おうと描き始めたのが、この作品でした」

松本先生のお気に入りのキャラは目黒ちゃん&亮くん

2巻p.55

松本先生のお気に入りのキャラは目黒ちゃん&亮くん
「目黒ちゃんは、女性が恋愛で抱えるすべてを背負っているような、痛みあるキャラ。描いていて共感できますね。彼女の不倫相手・亮くんは、知り合いのバーテンがモデル。結婚と恋愛は別腹、その上で世の女子の肯定感を爆上げさせる人物で。かなり参考にしました(笑)」

恋愛系の書き込みを見ると全部に共感してしまうし、一人じゃないと感じます

――確かにお話の中に登場するのは、仕事を持ち、友人や上司に囲まれて日々を過ごす、ごく普通の大人たちが主人公。ものすごくリアルな、人と人とのコミュニケーションのズレや、モヤモヤとした腑に落ちない感じは、どこから発想を得ているのでしょう?
「そうですね。これもSNSの書き込みを参考にすることが多いです。それと、20代、30代を経てきた私自身の過去の経験も重ね合わせて描いていますね。ネット上で女の子たちの恋愛系の書き込みを見ていると、わからないって思うことがほぼないんですよ。全部に共感というか。私も同じようなことで苦しんできたし、ちょっとしたすれ違いで、女友達や知り合いが『……?』と悩んでるのもいっぱい見たし。一人の女の子の悩みは、だいたいみんなの悩みに当てはまると思っています

「ネタ帳みたいなものは作ってないですが、ふと思いついたフレーズや、心の中でひっかかったセリフは、メモに書き出し、そのフレーズがコマに入るようにお話を組み立てます。字がきれいじゃないのであとから読み直すのに苦労してますが(笑)、書き留めてあることって、だいたい、『あのときに言えばよかったけど、その場では言えなかった思い』が多いかも。吐けなかった毒というか……。それこそ、Twitterの裏垢でつぶやくような内容です(笑)」

「コミックスの3巻で、既婚者の元カレと再会した女の子の話があるんですが、あれは私の実体験。昔、好きだった男の人に『なんで私と結婚しなかったの?』って聞いたら『……タイミング?』と答えが返ってきて。『じゃあ出会う順番が違ってたら、私と結婚してた?』って問い直したら、『そうかもねー』と。その言動の曖昧さに、顔は笑いつつ、心の中で『ハアーッ!?』みたいな! でも自分も含めて女の人って、鋭いことを感じているのに、本人の前では口に出さないことが多いですよね。そんな心の揺れを逃さずに描いているのが、この作品の特徴なのかもしれません」

"目玉キャラ"と男性の奇妙な共同生活も人気

1巻p.93

“目玉キャラ”と男性の奇妙な共同生活も人気
目黒ちゃんをネットストーキングする男性・谷口さんの家に突如現れ、同居(?)することになった謎の生物。「今のSNS時代、“見られること”の暴力性のようなものを具現化したような存在。今日のバイラの取材で、女性にも人気と知って嬉しいですね(笑)」

――男性の描き方も秀逸です。
「日常にいない人は登場させないようにしています。個人的には浮世離れしたイケメンが好きなんですが(笑)」

――いろんな人が現れて去っていく短編の中に、既婚者でバーテンダーの亮くんと、彼に恋するOL・目黒ちゃんという女子のエピソードは、継続して出てきます。二人はいわゆる不倫。先生はこの関係性をどうとらえていますか?
「個人的には不倫はしたくないです。でも、SNS上で『不倫する男は死刑に処すべし』みたいな極論を目にすると、それもまた、怒りの方向性が違うのではと。個人の情に関わることに、第三者や権力が介入するようじゃ、恋愛自体が窮屈になっちゃいますよね。この話を読んで、目黒ちゃんをたたく人はいると思いますが、ひっそり共感してる人のほうが多いんじゃないかな~って」

「口では正義っぽいことを言っても、正解のない関係に巻き込まれることもあるし、そのままならぬ感じが面白くもあり。だからこそ恋愛が人生の大きな物語になる部分でもありますしね。作者としては『なんだかんだ、世の大半は経験していることでは?』という距離感で、二人を描いています」

冷静になると彼女のこと思い出すようになって

2巻p.157

元カノならヤれそうだと思って連絡

2巻p.159

今も気に入っているのは、傲慢さをコミカルに描いた話
「私の経験上、向こうから振った男って、2カ月、半年、2年でLINEしてくるんですよ(笑)。『お前、まだ俺に気があるだろ?』みたいに。男が持つ謎な自己肯定感の高さ&傲慢さを、コミカルなタッチで解説したのがこの話。同じテーマで、女の子側から少しシリアスに描いた話もあります」

漫画で可視化することで、自分でも気づかなかった心の傷に向き合えることも

――登場人物の関係性を、描く側が決めつけすぎず、どこか俯瞰しているところも、大人が読むと「風通しがいい」と共感するのかもしれません。
「ありがたいです。実は試行錯誤の部分も多くて。もっと切ない話も入れたいし、読者の方に、『どのお話が面白いですか?』『刺さるエピソードは?』と、聞いて回りたいぐらいなんです(笑)。お話はまだまだ続きますが、どうしたら読み手の心に寄り添えるかなと考えています」

「ただし今思っているのは、『トーキョーカモフラージュアワー』で描いているような、理解不能な男子の生態は、もはや女の子同士で慰め合い、痛みを分かち合うことで、解放されるしかないかなと。作中には、女の子本人も気づいていない、恋愛で受けた心の傷を描いた話もあります。現実世界の中で、自分の痛みを誰かに指摘されたらつらいけど、漫画だったら、客観的に心の整理ができる場合もあるかもしれないですよね」

「それから、男の子に対して、態度を改めさせるとか、いい男になれとか、“世直し”的な方法のコミュニケーションは、ほぼ響かないと思っていて(笑)。描き始めの頃は、男子にも楽しんでもらおうと、ギャグ系の生き物かつ、人が人を見る怖さの象徴として“目玉のキャラ”を登場させたりと、万人受けする工夫もしてたんですけれども。いつの間にか、女の子への癒し&ストレス解消が中心の漫画に。それでも女心の機微をわかってほしい相手には、読んでもらってもいいのかも。“私たち、こんなことを感じてるよ”“男子、こう見えるよ”って。わかるかどうかは未知数ですが、伝えることはできると思います」

BAILA的気づき

1.そのモヤモヤ、「私のせい」にしなくていい!

恋愛でモヤったり自分が悪いのかと思う場面は多い。でも、人づきあいには様々な要因やタイミングも絡むので、100%自責する必要はないはず。

2.「〇〇だから」にとらわれない自分の素直な気持ちも大切に

「もう30代だから〇〇」など世間に自分を不必要に合わせると、疲弊していくだけ。性別や年齢にとらわれず、等身大の自分が感じることを大切に。

3.わかりあえなくても「伝え合う」はできるかも

「男とは永遠にわかりあえない」となるのも悲しい。理解できるかどうかはさておき、今のお互いの気持ちを「伝え合う」努力は、してもいいのかも!

『トーキョーカモフラージュアワー』とは?

【STORY】
東京に住む大人の男女たちの人間模様を描いたオムニバスストーリー。無自覚な言動を繰り返す男子、心の中に思いをためがちな女子など、“あるある”な登場人物と、彼や彼女らのディテールがリアル。Twitterで反響を呼び、一躍注目&人気作に!

『トーキョーカモフラージュアワー』とは?

NEW!
『ニュートーキョーカモフラージュアワー』
松本千秋著 少年画報社 
2巻まで発売中
本体800円(税抜き)
既刊の電子版3・4巻がリニューアルデザインで紙版として発売。大人たちの、現実感たっぷりなやり取りに加えて、学生時代のどこか懐かしさやエモさを感じるお話も。

取材・原文/石井絵里 ※BAILA2022年9月号掲載

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