恋愛の刹那を描き、SNS上で話題沸騰中のマンガ『トーキョーカモフラージュアワー』。作中に描かれる男性の言動について、恋バナ収集ユニット「桃山商事」清田隆之さんが男性側の視点からコメント。本作は男性が読むことで気づきも多いという。
『トーキョーカモフラージュアワー』とは?
【STORY】
東京に住む大人の男女たちの人間模様を描いたオムニバスストーリー。無自覚な言動を繰り返す男子、心の中に思いをためがちな女子など、“あるある”な登場人物と、彼や彼女らのディテールがリアル。Twitterで反響を呼び、一躍注目&人気作に!
桃山商事
清田隆之さん
きよた たかゆき●1980年生まれ。文筆家。恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。男女の生き方やジェンダーを考察する著書多数。『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』が発売中。
相手への想像力が欠如した男子たち。 時代が生んだキャラかもしれません
1200人以上の男女から恋愛の悩み相談を聞き、考察してきた清田さん。
「印象的だったのが、登場する男性の大半が、ある程度の収入とルックスを持ち、恋愛市場でも社会的にも、自分が“選ぶ側”だとナチュラルに思い込んでいること。そして彼らは相手への想像力が著しく欠如してますよね。もちろん、世の男性のすべてがこうではないけれど、どちらかといえばまだ彼らのような生き方を後押しする現代社会では、男性のリテラシーや共感能力は低迷の一途……。一方で、女性はいまだに気づかいや気配りを求められる部分が大きいという。このアンバランスさの中で、相手とどう関わるか、と考えさせられる作品。むしろ男性が読むことで、気づきが多いのではと感じました」
【清田さんが男子目線で考察1】男にとっての極上状態。現状維持をしたいはず
1巻p.8
「交際相手への、無自覚の“ナメ”や優位性を象徴するシーンですね。タバコも“ベランダで吸ってる俺、配慮ある”ぐらいの能天気さかなと。見くびられてると思った場合は、家に入れないなど、一度境界線を引き直すのがテ。理由は男性側が考えることなので、説明も不要だと思います」
【男子目線で考察2】必殺! 男の伝統芸能。裏には無自覚の加害性が
3巻p.37
「これはJ-POPなどでもたびたび描かれてきた、男の悪しき伝統芸能。自分の加害性を棚に上げ、相手に牽制もできるというズルいやり口です。彼女みたいに強がりや我慢しがちな人は、ほかの場面でめいっぱい得をして、感情の収支のバランスをとってほしいなと思います」
【男子目線で考察3】送りっぱなしLINEは何も考えていない!
1巻p.89
「恋愛相談でも本当に多い例ですね……。こういう人は対面でも空虚な話をしているとは思うんですが、文章&写真で可視化すると、余計にうっとうしい。相手がどう受けとるか、基本的に何も考えてません。想像力の欠如の象徴です」
【男子目線で考察4】男の会話はプレゼン。内輪語りも延長線上にある
2巻p.39
「男の話って、コミュニケーションではなくてプレゼン。場を盛り上げようと、慣れ親しんだ内輪語りを多用しますよね。そして反応が薄いと“ノリ悪くね?”と、永遠に自らを省みることはないという……。女性がくみ取って、盛り上げてあげる必要はないと思います」
【男子目線で考察5】相手の話に耳を傾けている姿勢は〇
3巻p.117
年下の男子が、話し方の癖を指摘されるひとコマ。
「一方的なトークが多い男たちの中で、数少ない会話のラリーが続いている例。“立場的に弱い側になり、相手の話に聞く耳を持つ”という流れが描かれているので、読み手からは、嫌悪感は少なく感じられるのではないでしょうか」
NEW!
『ニュートーキョーカモフラージュアワー』
松本千秋著 少年画報社
2巻まで発売中
本体800円(税抜き)
既刊の電子版3・4巻がリニューアルデザインで紙版として発売。大人たちの、現実感たっぷりなやり取りに加えて、学生時代のどこか懐かしさやエモさを感じるお話も。
取材・原文/石井絵里 ※BAILA2022年9月号掲載