著名人が実施したことを報告するなど、最近よく耳にする「卵子凍結」。慎重に検討したい手段だからこそ、正しい知識を医師に聞きました!
30代のBAILA読者157名に聞きました!「卵子凍結」 を知っていますか?
26%が「興味がある」「すでにしたことがある」と回答し、約4人に1人が卵子凍結に興味をもっている結果に。「知らなかった」人はわずかで、新たな選択肢に関心をよせている読者が多数。
国内屈指の不妊治療体制が整う杉山産婦人科の新宿院で、開院当初より診療に携わる。現在は丸の内院の院長。
【産婦人科医が解説】卵子凍結の正しい知識
懸念点もありますが、出産の可能性は広がります
「子どもを望んでいる女性がライフプランを設計する上で、“いつ産むか”は切っても切り離せない問題。そこで注目が集まっているのが『卵子凍結』です。
卵子凍結とは、受精させていない自身の卵子を凍結し、出産したい(できる)時期まで保存しておくこと。この技術自体は、もともとがん患者の方などが、将来的に子どもをもつ可能性を残しておくために活用されていました。
その技術の向上に伴い、健康な女性が卵子凍結するケースも増加。2023年に東京都が卵子凍結に対する費用の助成を開始したことでさらなる注目を集めました。
実際、凍結した卵子を融解する事例は少ないのが現状ですが、出産の可能性を残しておくことで“産みどき”に関するモヤモヤが軽減したと話す患者さんが多いですよ」
【産婦人科医が回答】卵子凍結についての一問一答
Q.なぜ卵子を凍結するのでしょうか?
A.加齢に伴い劣化する卵子を質がいい状態で保存しておくため
「卵子の数や質は、25歳前後から低下が進んでいきます。そのため、若いうちに卵子凍結することで、凍結したときの年齢の妊娠率および流産率の卵子を残しておけることが大きなメリットです。35歳を超えるとその低下率が加速するうえ、40歳以上になると卵子凍結を行っても妊娠成績が非常に低く、日本産科婦人科学会では推奨されていません。凍結を考えているなら、35歳までを推奨します」(黒田先生、以下同)
Q.誰でもできるのでしょうか?
A.採卵が難しい場合もあるのでまずは受診を!
「①性交渉の経験がない方、②卵巣嚢腫や子宮筋腫などで採卵するときに卵巣の穿刺が難しい場合、③子宮頸がんなどで子宮を摘出した方は通常できません。よく“痛みに弱くても大丈夫ですか?”と聞かれることもありますが、実際に穿刺する距離は患者さんが想像するより短いことがほとんどです。施設によっては静脈麻酔も検討できますので、医師に相談してみてください」
Q.興味はあるけれど、デメリットが気になります
A.費用や身体的負担に加え、妊娠の成功率がまだ低いこと
「採卵や凍結にかかる費用はもちろんですが、採卵は体への負担もかかります。また、融解後に卵子が生存していなかったり、その後妊娠するときに精子と受精しなかったり……と通常の体外受精と比較して妊娠成績があまりよくないのが現状です。出産の身体的影響を考えると、卵子の使用は45歳までが推奨されるという年齢制限も」
Q.費用はどれくらい見積もるべき?
A.クリニックによって異なりますが、約20万~40万円
「卵子凍結は自由診療なので施設により費用が異なりますが、およそ20万~40万円が相場です。実際、今の日本で提供できる医療や設備には限界があるので、値段が高いからといって質がいい医療かはわかりません。凍結保存にかかるランニングコストも含めて、ご自身で納得できるクリニックをリサーチしてみてください」
「杉山産婦人科 丸の内」の場合(初回)
診察・ホルモン検査…約3万円
排卵誘発…約5万~10万円
採卵(麻酔は別途)…13万2千円
卵子凍結1本(3個まで)…3万3千円(4本目から無料)
※費用は予告なく変更する場合があります
※表に記載されている金額は平均値です
Q.採取する卵子の数を知りたいです
A.子ども一人につき、30代なら約20個
「20代で10個、30代前半で20個くらいの卵子があると、子一人を出産できる可能性が高いことがわかっています。ただ一度に20個卵子を採取する場合は、卵巣過剰刺激症候群などで生活に支障が出るリスクも。症状がひどいと入院が必要になることがあるので、数は主治医と相談しましょう」
Q.卵子凍結までの具体的なステップを教えてください!
A.クリニックを受診後、健康面で問題がなければ下のような通院スケジュールで進みます
「東京都の費用の助成を利用する予定であれば、まずは説明会に参加し、その後クリニックへの来院となります。初診では、卵胞から分泌されるホルモンを測るAMH検査など一通りの検査を。2回目以降は右記のように進み、4回目の来院が採卵日の目安。採卵日は、局所麻酔をした場合2~3時間ほど回復室でお休みしますが、その日から仕事をする方もいます」
[卵子凍結までのスケジュール例]
生理から
3日目〈通院2回目〉
採血+経膣超音波検査。診察の結果を踏まえて、排卵誘発剤の量を決定
↓
【お家で】自己注射開始
↓
10日目〈通院3回目〉
採血+経膣超音波検査。卵胞が育っているか確認し問題がなければ採卵日を決定
↓
(卵胞の発育が不充分の場合、排卵誘発剤を追加して再度来院)
↓
【お家で】採卵の2日前に卵子を成熟させる薬を投与
↓
14日目〈通院4回目〉
採卵日。採卵後は回復室で休み、凍結保存申込書を提出し帰宅
※BAILA2024年8・9月合併号掲載