閉塞感や生きづらさを抱えて生きている現代の女性たち。風穴をあけるには? 作家・桐野夏生さんと村田沙耶香さんに、バイラ編集部が聞きました。今回は「世の中の不条理」について。
Q.戦争やコロナ、世の中の不条理とどう向き合ったらよいですか? 私たちにできることはありますか?
A.
桐野 これは難しいですね。自分ができることって、本当に少ないと思います。ただ、大事なのは、どんなときも柔軟性をもって物事を見てほしいということです。たとえばコロナ対策では、公衆衛生上、みんなマスクをしたり、行動を制限されたりしていますけれど、私権が抑制されるのって、本当は好ましいことではないので、それが正義だと思わないでほしい。そこから外れた人を必要以上にバッシングするのも違うと思います。戦争もそうです。ウクライナが善で、ロシアが悪、みたいになっているけれど、それもまた怖い考えで、ロシアにも戦争に反対している人がいるし、常に多面的に考えてほしいですね。
村田 本当にそう思います。情報もSNSだけだと、すごく偏るので、入ってくる情報に関しては、常に「疑う」ことを忘れないでいたい。そして冷静でありたいです。感情的になって、急激にどっちかに振り切れてしまうような、速度の速い正義って怖いので、ゆっくり考えることが大切だと思います。
桐野夏生
きりの なつお●1951年石川県生まれ。1999年『柔らかな頬』で直木賞を受賞。『OUT』『グロテスク』『砂に埋もれる犬』など話題作多数。2021年、女性として初めての日本ペンクラブ会長に就任。
村田沙耶香
むらた さやか●1979年千葉県生まれ。2016年『コンビニ人間』で芥川賞を受賞。『授乳』『ギンイロノウタ』『しろいろの街の、その骨の体温の』『殺人出産』『消滅世界』などの作品で独自の世界観を描く。
あ撮影/中村和孝 ヘア&メイク/佐藤エイコ〈ilumini.〉 取材・原文/佐藤裕美 ※BAILA2022年8月号掲載