SNSなどでよく目にする睡眠にまつわる様々な噂。その真相を、眠りの専門家である東京科学大学教授の駒田陽子先生がひもときます!

東京科学大学教授
駒田陽子先生
東京科学大学に研究室を構え、日々睡眠に関する研究を行うプロフェッサー。日本睡眠学会の幹事も務める。
若いときは徹夜が続いても大丈夫?
【NO】何歳であっても徹夜は避けましょう!
「徹夜すると、休息不足により脳機能が低下し、翌日の作業効率が著しく低下してしまいます。また、夜=眠る時間と設定されているはずの体内時計が狂い、翌日以降の睡眠リズムも乱れてしまうので、どんなに忙しくても1〜2時間は仮眠の時間をとり、“夜は眠るもの”という体内リズムをしっかり刻むようにしましょう」(駒田先生・以下同)
ショート動画は寝つきに悪い?
【YES】脳がリラックスできない動画は見ないほうがベター

「携帯の画面の光が強いと交感神経が優位になり、入眠を促すメラトニンの分泌が低下してしまうので、テンポが早いショート動画は見ないほうがベター。ベッドで携帯を見ること自体あまりおすすめはできませんが、どうしても見たい場合は、ショート動画よりもリラックスできる映画などを選ぶようにしましょう」
睡眠のゴールデンタイムは存在する?
【NO】実は、存在しません!
「睡眠時間を7時間以上確保することが大切なので、起きる時間から逆算して眠る時間を決め、それを個人のゴールデンタイムに設定しましょう。この時間に寝ましょう、というゴールデンタイムはありませんが、体内時計を整える必要があるので、夜寝て、朝日が浴びられる時間に起き、休日もこの時間帯に合わせて規則正しい生活を送ることは大切。心も体も整いパフォーマンスがグッと高まりますよ」
寝るのにも体力が必要?
【YES】体調が万全でないと睡眠もうまくとれません

「若いうちは生活リズムや体温にわかりやすいメリハリがあり睡眠に向けて体のリズムも整いやすいのですが、体調が悪かったり年齢を重ねたりするとそのメリハリが低下し、睡眠のサイクルが乱れてしまうことがあります。そうするとうまく入眠できなかったり、睡眠の途中で目が覚めてしまったりと、眠りが浅くなってしまう原因に」
睡眠に男女差はある?
【YES】女性のほうが睡眠の満足度が低い傾向が
「実はデータ上は大きな差はないのですが、女性のほうが睡眠の質に悩む声が多く聞かれます。はっきりとした理由はわかっていませんが、女性には生理によるホルモンバランスの変化があるため、時期によっては睡眠が浅くなったりするケースがあります。また、世界的に見ると男性よりも女性のほうが睡眠時間が長い傾向にあるのですが、日本では男女差が逆転しているというデータも」
睡眠導入剤は使わないほうがいい?
【NO】眠れず悩むくらいなら薬の力を借りましょう
「最近の睡眠導入剤は依存性や副作用の心配なく使えるものがほとんど。眠れずにつらい思いをするくらいなら、一度クリニックを受診して自分に合った薬を処方してもらいましょう。市販薬はあくまで突発的な不眠を改善するものなので、日常的に悩んでいる人は心療内科や睡眠クリニックに相談をしてみてください」
日本は寝不足大国だ!
【YES】日本は世界で最も睡眠時間が少ない国!
「前述のとおり、日本は世界で最も睡眠負債が多い国なんです。他国を見ると、アメリカは9時間、カナダは8.7時間、イギリスは8.5時間と続く中、日本は7.7時間とワースト。仕事中の眠気は日本ではあまり問題視されませんが、海外では『仕事中に眠いなんてどうしたんだ!?』と驚かれるそう。睡眠時間だけでなく、睡眠への意識の違いも注目すべき点」
いびき、歯ぎしりはよくない睡眠のあかし?
【YES】無呼吸状態だったり歯に悪い影響が起きているかも

いびきは気道の脂肪が邪魔して呼吸しづらいときに起こるのですが、無呼吸や低呼吸になっている可能性があります。歯ぎしりの詳しい原因は解明されていませんが、歯の健康を損なう恐れもあるので、パートナーや家族から指摘されるようであれば、睡眠クリニックなどに相談を。軽いものであれば様子見でもOKです」
ショートスリーパーはいる?
【NO】体がショートスリープに慣れてしまっているだけ
「ショートスリーパーの定義は、6時間未満の睡眠であっても問題なく元気に過ごせる人。しかし本当のショートスリーパーは全人口の0.1%にも満たないと言われており、ほとんどの人は無理に睡眠を削っている状態なんです。体は睡眠不足に慣れても、脳機能は確実に低下しパフォーマンスも下がっているはずです」
撮影/岩城裕哉 イラスト/澤村花菜 取材・原文/野崎千衣子 ※BAILA2025年8・9月合併号掲載
























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