キャリア選択の違い、結婚するしない、子どもを持つ持たない……、あらゆる場面で嫉妬したりされたりしがちな30代。幅広い分野の賢者の知恵から「嫉妬」を紐解いてみると、共通していたのは、「嫉妬をなくすのではなく、嫉妬と向き合う」という視点。今回は、賢者たちに嫉妬のトリセツを聞きました。読者へのエールも必読です!
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嫉妬のトリセツ01.ゆる言語学ラジオ 水野太貴さん
SVOO構文をとる「envy(嫉妬する)」は、他者の存在が必須になる複雑な感情
英語語で「嫉妬」を表す“envy”は動詞でSVOO構文をとるのを知っていますか。たとえば、“I envy him his success.”のような文です。“彼”が重複して冗長に感じ、高校生の頃に不思議に思ったんですけれど、英語のSVOO構文には所有関係が表れていて、一般的に目的語O1がO2を所有しているという含意があると言われています。嫉妬の感情の中にある「他人が持っているもの」を意識する構造が、文法のレベルで出てくるのが興味深いと思いました。英語で嫉妬の感情を表すときに“envy”と“jealousy”という言葉があるのも面白いですよね。それぞれ指す対象がやや異なります。『嫉妬と羨望の社会学』(石川実著)では「envyは誰かが持っているものあるいは帰属するものに対する願望と誰かが持っていることへの怒りを意味し、一方でjealousyは、主として自分の持ち物あるいは自分の所属するものが誰かに奪われるのではないかという恐れを意味する言葉である」という整理も。日本語だとどちらも「嫉妬する」と言えますが、英語ではなんとなく2種類に分けていそうなんです。そもそも嫉妬の感情って複雑ですよね。「怒る」とか「悲しむ」はある出来事に対して持つ感情だと思いますが、「妬む」や「嫉妬する」は自分と他人を比較して初めて生まれ、他者の存在が必須です。説明しようとすると、意外とややこしい感情だと思います。
実は、僕自身は「自分は嫉妬をしない人間だ」と思っていました。でも最近、友人のYouTubeチャンネルがすごく伸びていて「いいな」と感じて。「これは嫉妬かも」と気がついたんです。周りにその話をしたら、「普通の人は、ちょっと嫉妬しながらも“おめでとう”って言ってるんだよ」と言われ、さらに「嫉妬しているほうがむしろ人間らしい」とも言われました。「世界はそういうルールで回ってたのか」と気づいた今は、小さな嫉妬も人間的な厚みにつながるかもと「しゃぶりつくしてやる」くらいの気持ちでいます。

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➡嫉妬をする人間のほうが、人間味があって魅力的かも
嫉妬のトリセツ02.スポーツドクター 辻 秀一さん
嫉妬は感情ではなく思考。脳が“嫉妬する思考”を選択している状態
人間は認知的な生き物だから、どうしても他者と比較するし、評価するし、「なんで自分じゃないんだ」と思う。その結果として、嫉妬という思考を選択していると私は考えています。ただ問題は、その思考を選択すると心の状態が不機嫌になることなんですよね。もやもやする、腹が立つ、落ち込む。そういう心の状態になると、人間のパフォーマンスは例外なく落ちます。スポーツ選手は、そのことがすごくわかりやすいんです。オリンピック選手は不機嫌な状態では勝負に勝てない。そのため、自分の心を整えることをものすごく大事にしています。一方、ビジネスパーソンは、たとえば不機嫌なまま1カ月働いても、お給料は振り込まれるじゃないですか。「今の自分は本来の力が出ていないな」ということに気づきにくい。でも人間のしくみ自体は同じなんです。
だから、私は、「ご機嫌でいることに価値をつくるトレーニング」が大事だと思っています。機嫌がいいほうが、優しくなれる。アイディアが出る。肌ツヤもよくなる。ごはんも美味しくなる。そういう「ご機嫌の価値」を、何度も自分に教えていくんです。人は価値があるものを選択するので、ご機嫌に価値を感じられるようになると、嫉妬という思考を選びにくくなる。並行して心がけてほしいのが、自分の感情に気づくこと。感情のリストをつくって今の自分の感情をメモしてみてください。客観視することで、ご機嫌でいることを手放している自分、その背景に嫉妬の思考があることに気づけるようになると思います。
もちろん「嫉妬しちゃダメ」と無理に思う必要はありません。人間だから比較はする。でも、その思考以外の選択肢を持てるようにしていくことはできる。私は「応援」「感謝」「リスペクト」という思考をおすすめしています。誰かに良質なエネルギーを与えているときは、自分の心にもご機嫌の風が吹くんですよね。

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➡“ご機嫌な状態”の価値を高めれば、心が整う!
嫉妬のトリセツ03.テレビプロデューサー 佐久間宜行さん
嫉妬しない人間はいないから、負の感情は早く認めて向き合うべき
僕は、「私は嫉妬なんかしません」っていう人は、多分噓だと思うんですよ。普通に生きていたら、誰だって羨ましいと思うことはある。それが人間だと思うんです。嫉妬はちゃんとあったほうがいい。大事なのは、見ないふりをするんじゃなくて、認めて、向き合って、解像度を上げて、自分の嫉妬の正体を見抜くことだと思います。
若い頃の僕も、嫉妬していました。二十数年前は自分がやりたかったお笑い番組をなかなかつくれなかった。でも、そのときにやったのは、「何に嫉妬しているのか」をちゃんと仕分けることでした。作品なのか、立場なのか、世の中の評価なのか。嫉妬の解像度を上げていくと、「自分が本当にたどり着きたい場所」が見えてくるんですよ。漠然と嫉妬していると、自分が本当にやりたいことまで見えなくなる。でも、「自分はここに羨ましさを感じてるんだな」とわかると、戦い方が見えてくるんです。
僕は、いちばん追いつけそうな相手を決めていました。誰も彼もに嫉妬するんじゃなくて、「あのぐらいまでいくためにはどうしたらいいか」を考えていましたね。逆に、見ないふりをしたり、感情に振り回されたりすると、ろくなことがない。負の感情って、できるだけ早く認めて、「さあどうしよう」と考えられている人が、次にいくことができている気がします。
嫉妬って実は「本当の褒め」だと思うんです。小説家でも芸人でも、「あの人のあそこが自分にないから羨ましい」という話の中には、本当の評価がある。普通に褒めるときって、「褒めている自分」を見せたいときもあるじゃないですか。でも嫉妬って、少し見せたくない感情だからこそ、本音が出る。だから僕は、YouTubeの『NOBROCK TV』でも嫉妬をトークの題材に選びました。嫉妬の話をランキングにして聞くと、その人が本当は何を評価しているのか、人間らしい部分が見えてくるんですよ。

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➡嫉妬の解像度を高めれば解決策が見えるはず
嫉妬のトリセツ04.脳科学者 毛内 拡先生(お茶の水女子大学助教)
脳は他者と比較することで自分の立ち位置を確認しています
嫉妬についてまず知ってほしいのは、「脳がやってることなので仕方ない」ということ。僕たちは、自分の立場や能力を、誰かと比較しながら絶えず確認して生きています。それは現代特有のものではなく、原始時代から続いている、とても基本的な脳の働きなんですよね。
実際、人が自分より優位だと感じたときに活動する脳の場所には、「痛み」に関係する領域が含まれていると言われています。殴られて痛いときにも反応する場所が、「羨ましい」「悔しい」と感じるときにも反応する。つまり、嫉妬って、脳としては“痛み”なんです。人間という生き物として自然な反応なんですよ。
その上で、嫉妬は、「自分が何を大切にしているか」を教えてくれる鏡でもあります。仕事の昇進に嫉妬するなら、今は仕事を大事にしているということだし、結婚に羨ましさを感じるなら、安心やつながりを求めているのかもしれない。弱いから嫉妬するんじゃなくて、「大切にしたいものがある」ということ。だから嫉妬を分解して「自分は本当は何が欲しいんだろう」と考えるのが大事。ぼんやり「嫉妬してる」で終わらせず、嫌な感情を言語化すると、その感情が和らぐという研究もあるんです。
一方で、最近僕は「脳疲労」も大きいと思っています。脳が疲れてくると、省エネモードになって、極端でネガティブな考え方になりやすい。そんなときは脳が疲れない心がけを。多すぎる情報通知を減らしたり、ワクワク・ドキドキする新しい体験をしたり、社会や人のために何かすることにより脳は喜びます。
嫉妬は、真剣に自分の人生に向き合っている証拠と言えるのではないでしょうか。どうでもよかったら嫉妬なんて起きてこない。嫉妬を感じたら「私はこんなに真剣に生きているんだ」「大切にしたいものがあるんだ」と、まずは自分を褒めてあげた上で、自分と向き合う時間をつくってもらえればと思います。

嫉妬とうまくつきあうには?
➡嫉妬は「自分が何を大切にしているか」を映す鏡
撮影/久々江満 スタイリスト/山本瑶奈 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2026年8・9月号掲載

BAILA編集部
30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。





















































