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製本のスペシャリスト加藤隆之さんが手掛けた、忘れられないエッセイ本とは?

出版の仕事に関わる人は、どんな視点から本を選び、読んでいる? これまで数々のベストセラーの製本を手掛けてきた加藤隆之さんに、「自分にとってスペシャルな本」を教えてもらった。

加藤隆之さん

加藤製本株式会社 代表取締役

加藤隆之さん


かとう たかゆき●加藤製本の三代目社長。産経新聞記者を経て、1998年から家業に携わるように。世界初のPUR無線上製本開発の成功をはじめ、製本の可能性に挑み続けている。

(加藤製本が手がけた本)
新潮文庫シリーズなど、誰の本棚にもある定番の本から、東野圭吾『容疑者Xの献身』、村上春樹『1Q84』などのベストセラー、社会的な話題作、学習参考書まで製本。年に2回受賞作品が発表になる直木賞の小説も、多く手がけているのだとか。東京・江戸川橋にある社屋で、一日に10万冊前後の本を作っている。

【製本する人】が読む本

加藤隆之さんのとっておきの本

(とっておきの本)
『平成お徒歩日記』
宮部みゆき著 新潮社
現在は古書で入手可

『平成お徒歩日記』

ミステリー作家・宮部みゆきさんが、小説以外の初の著作として世に出した一冊。

『平成お徒歩日記』

歩きながら江戸時代に思いをはせる散文集で発売から25年近くたつ今も、読み続けられている。

『平成お徒歩日記』

今回紹介した初版本は、加藤さん曰く「出版業界に余裕があり、かつ手作業ができる職人さんも現役だった頃の賜かもしれません」

『平成お徒歩日記』

国内有数の技術を誇る製本会社を取り仕切る、加藤さん。「私の製本人生の中でも忘れられない一冊」と語るのが、宮部みゆきさんのエッセイ本。現在は『ほのぼのお徒歩日記』というタイトルで文庫版の購入が可能だが、加藤さんは、この本の初版から造本に関わってきた。

製本人生の中でも別格。こだわりが詰まった本

「初版は1998年に限定で作られたもの。江戸がテーマのお散歩エッセイの雰囲気を出すため、細部まで考え抜かれています。見返しや扉の紙も、作品の世界観に合うものをチョイス。そして初版本のみの特別仕様として、表紙のタイトル部分を、和紙風の紙を手で貼っていること。初版を購入し、気づかなかった方もいるかもしれません(笑)。さらに和本のたたずまいを出すために、表紙の折り返し部分に溝を作らず平たくする、“突きつけ”という珍しい製本法を取っています。カバーは、PPという、現代にある半透明の素材を使い、最終的には和洋折衷な一冊に。奥付も著者印ならぬイラストと、遊び心が満載です。随所にこだわりが詰まっているので、見かける機会があれば、じっくりと手に取り、モノとしての本の魅力を味わってみてください」

過去問は、実は良質な小説の宝庫!

「弊社では学習参考書も作っていますが、その流れから興味を持ったのがこの声の教育社の中学受験用過去問題集。特に早稲田中学校は国語に重きを置いており、どの年の問題も良書だらけ。試験の日まで頑張ってきた子どもたちの、生きる力や思考能力を伸ばすような物語を、学校側も覚悟をもって選び抜いているのが伝わります。芝中学校は読み物として面白い小説をセレクトしていますね。小説を読むとアイディアが豊富になり、仕事の場でも役立つともいわれています。質の高い作品のアンソロジーとして、手に取ってみるのをおすすめします」

「声教の中学過去問シリーズ」

「声教の中学過去問シリーズ」
声の教育社 各シリーズ、2090円~2860円

製本まめ知識

製本まめ知識
製本まめ知識

上製本(ハードカバー)は、開閉に耐えられるよう背を丸くした丸背と、カッチリとしたかたちの角背がある。そして装飾的なものとして、つく布が花布。製本はこれら細かい本のパーツを何工程も分けて組み合わせる

撮影/kimyonduck イラスト/naohiga 取材・原文/石井絵里 ※BAILA2022年11月号掲載

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