4月22日(土)から開催される『さくらももこ展』では、作家・さくらももこさんの代表作である漫画『ちびまる子ちゃん』をはじめ、エッセイ、絵本、詩集、脚本、作詞など、彼女の全仕事を知ることができる。
多ジャンルにわたる仕事の中でも、エッセイはその懐かしさ、あたたかさに癒される作品が多い。そんなさくらももこさんの”エモい”エッセイをご紹介!
※展覧会の展示内容は会場ごとに一部異なります。本記事で掲載している原画、イラスト展示有無も、会場によって異なります。予めご了承ください。
エモいエッセイ①“まる子”をより身近に感じる!『あのころ』
『あのころ』集英社文庫 638円(税込)
『あのころ』は、さくらももこさんの小学生時代の出来事を綴ったエッセイ本。
彼女の代表作である『ちびまる子ちゃん』の主人公・まる子が小学生時代のさくらももこさんをモデルとしているのは、もはや周知の事実。つまり、『あのころ』で綴られている出来事は、私たちが漫画やアニメでみてきた、あの“まる子”の日常ともいえる。
例えば、このエッセイの中で小学生時代に“マラソン大会”の苦い思い出が吐露されている章がある。終始にじみでる“サボりたさ”は、まさにあの“まる子”そのもの!
このマラソン大会を嫌がるエピソードは『ちびまる子ちゃん』にも登場しているので、漫画と読み比べてみるのも面白い。
漫画はフィクションとしてのキャラクターの個性などが足されているが、エッセイでは大人になったさくらももこさんが当時を振り返りながら綴っているため、一つひとつのエピソードをよりノスタルジックに感じられる。幼少期への“懐かしさ”は誰しも持っているもので、エッセイを読みながら、自分のことのように彼女の思い出を追体験できるはず。
『あのころ』 マラソン大会 1996年 集英社
©︎さくらももこ
ちびまる子ちゃん その8 まるちゃんは マラソンがイヤ の巻 「りぼん」1987年3月号 集英社
©︎さくらプロダクション
あわせて読みたい!『まる子だった』『ももこの話』
『まる子だった』集英社文庫 682円(税込)
『あのころ』に引き続き、“まる子だった”さくらももこさんの小学生時代のエピソードが満載! ちょっとしたことから広まった噂話や憧れの芸能人のコンサートに行った話など、今の時代も変わらない“戸惑い”や“楽しさ”が綴られている。
『ももこの話』集英社文庫 682円(税込)
この本の最後で綴られた“春の小川の思い出”では、漫画家になりたいことをさくらももこさんが初めてたまちゃんに告げたエピソードも。「まるちゃんならなれるよ」と迷いなく言ったたまちゃんとの友情に胸が熱くなる。
エモいエッセイ②さくらももこさんの原点にふれる『ほのぼの劇場』シリーズ
『ほのぼの劇場 1』 集英社文庫(コミック版) 565円(税込)
さくらももこさんの漫画家としてのデビュー作は、『教えてやるんだありがたく思え!』(1984年)という彼女が出会った先生たちを描いたエッセイ風漫画。このデビュー作をはじめ、彼女の思い出の数々を綴った短編漫画は『ほのぼの劇場』シリーズとしてまとめられている。
彼女が多感な時期を過ごしたのは1970〜1980年代。“昭和レトロ”が熱視線を集める今、当時のカルチャーを感じる描写や絵柄のエモさも、さくらももこ作品の魅力のひとつ。
教えてやるんだありがたく思え!「りぼんオリジナル」 1984年 冬の号 集英社
©︎さくらももこ
もともとは少女漫画らしい恋愛ストーリーを描いて投稿していたさくらももこさん。けれど、進路に迷っていた高校3年生のときに提出した作文を先生に「エッセイ風のこの文体はとても高校生の書いたものとは思えない。清少納言が現代に来て書いたようだ」と評されたという。
このことがキッカケで、子どもの頃からの夢だった漫画家になるために“エッセイ風の漫画を描く”と決めたという“エッセイ風漫画”は、まさにさくらももこさんの原点ともいえる。
『ほのぼの劇場』シリーズに収録されている作品たちからは、絵を描くこと、漫画を作ること、実体験を綴ること、彼女の全才能と愛を感じ、読む側まで幸せな気持ちに。
ももこのほのぼの劇場 放課後の学級会 「りぼんオリジナル」1988年 冬の号 集英社
©︎さくらももこ
伝説のデビュー作の生原画もみられる!『さくらももこ展』の詳細はこちらをチェック!
『さくらももこ展』
会場:神奈川・そごう美術館(横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店6階)
期間:2023年4月22日(土)〜5月28日(日)
開場時間:午前10時〜午後8時
観覧料:一般1400円/大学・高校生1200円/中学生以下無料
文/上村祐子