4月22日(土)から『さくらももこ展』が開催され、改めてその才能に注目が集まる作家・さくらももこさん。
『ちびまる子ちゃん』、『COJI-COJI』に代表される漫画以外にも、彼女が手がけた作品は多岐にわたる。その中でも、エッセイ本に改めて癒される大人が増えているそう。
なぜ、大人たちは今、彼女のエッセイに沼るのか?『さくらももこ展』に展示される貴重な生原稿にも注目!
※展覧会の展示内容は会場ごとに一部異なります。本記事で掲載している原画、イラスト展示有無も、会場によって異なります。予めご了承ください。
沼るエッセイ①ツッコミ不可避な日常にクスリ。『もものかんづめ』
『もものかんづめ』集英社文庫 704円(税込)
さくらももこさんのエッセイ本デビュー作『もものかんづめ』は、ベストセラーとなり、“初めて読んだエッセイはさくらももこさんの作品だった”という人も30代以上には多いかもしれない。
この本では、彼女の日常に起こった出来事が綴られているけれど、“それって本当のこと?”と思いたくなるようなものばかり。そして重要なのはそのどれもが、けっして夢物語でも大事件でもない“珍事件”であること。
水虫の治療法についてや、中学生時代に綴った黒歴史ポエムの話など、本来なら隠しておきたい出来事もあっけらかんと綴られていて思わずクスリ。
着飾ることをしないさくらももこさんの日常に「そんなバカな」「またまた〜」なんてツッコミながら読むひとときは、美化されたSNSに囲まれる私たちの心を癒してくれる。
「もものかんづめ」奇跡の水虫治療 「青春と読書」1989年8月号 集英社
©︎さくらももこ
あわせて読みたい!『さるのこしかけ』『たいのおかしら』
『さるのこしかけ』集英社文庫 759円(税込)
お尻から全身を貫いた痛みによる“痔疑惑”から始まり、“珍”しかないさくらもここさんの旅行記として台湾とインド編、あっと驚く健康法……まだまだ尽きないさくらももこの日常談。
『たいのおかしら』集英社文庫 792円(税込)
エッセイ三部作の完結編。怠けものな性格で親を激怒させた思い出話や、意気込みが過ぎた習字教室初日の出来事など、前作から続く肩の力が抜ける出来事は健在。
沼るエッセイ②挿絵に心底癒される『ももこのいきもの図鑑』
『ももこのいきもの図鑑』集英社文庫 616円(税込)
さくらももこさんのエッセイは、ほぼすべての作品に挿絵が入っている。文だけでなく、絵でも楽しむことができるのは、作者がさくらももこさんだからこそ。
特にこの『ももこのいきもの図鑑』の挿絵は『ちびまる子ちゃん』とはまた違った、ほっこりと優しい絵のタッチだ。イヌ、ネコ、小鳥、猿にカメ……と、彼女が出会った生き物たちのイラストは、彩り豊かで心を温かくしてくれる。
この作品をはじめ、彼女のエッセイはかなり短いものが多く、長いものでも文庫本の10ページ前後ほど。気軽に読みやすい分量と目で楽しめる挿絵のバランスは、通勤や休憩時間にリフレッシュとして読むのにピッタリ。
ももこのいきもの図鑑 「anan」No.906 1994年1月28日 マガジンハウス
©︎さくらももこ
沼るエッセイ③“母としてのさくらももこ”をみる『ももこのよりぬき絵日記』シリーズ
『ももこのよりぬき絵日記 1』集英社文庫 1210円(税込)
『ももこのよりぬき絵日記』は、さくらももこさんの全作品の中で最も“何気ない日常”が描かれているといえるシリーズ。
彼女には息子さんが一人いる。全4巻あるこのシリーズは、息子さんがまだ幼かった5歳〜中学生頃にかけてのやりとりや思い出を、絵日記形式で描いたもの。
お遊戯会でやったまさかの役に大笑いしたり、「大好きだよ」と可愛がっていたら「悪いけど結婚はできないよ」なんて返されたり……。
漫画にエッセイにと、多岐にわたる仕事を手がけていた彼女が多忙を極めていたのは、想像に難くない。けれど、この本を読むと、どんな多忙な生活の中でも、母親として息子さんと過ごす日常を大切に愛しく思っていたことが伝わってくる。
『ももこの21世紀日記 N'01』 2002年 幻冬舎(現在は『ももこのよりぬき絵日記 1』に収録)
©︎さくらももこ
エッセイの生原稿をビッグサイズで展示!『さくらももこ展』の詳細はこちらをチェック!
『さくらももこ展』
会場:神奈川・そごう美術館(横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店6階)
期間:2023年4月22日(土)〜5月28日(日)
開場時間:午前10時〜午後8時
観覧料:一般1400円/大学・高校生1200円/中学生以下無料
文/上村祐子