海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、30代女性におすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、世界的に有名なファッションデザイナーの素顔に迫るドキュメンタリー映画『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』をご紹介します。匿名性を貫くファッションデザイナーの生き方は必見です。
©2019 Reiner Holzemer Film – RTBF – Aminata Productions
『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』
世界的に有名なファッションデザイナーの素顔に迫るドキュメンタリー映画は、人生にスパイスを与えてくれる。カリスマ性があって圧倒的な個性を持ち、独自の美学を貫く生き方は、いつの時代にも人を魅了する。しかし本作のマルタン・マルジェラのように、一切顔を出さず、匿名性にこだわったファッションデザイナーは類を見ないだろう。
ベルギー出身のマルジェラは、ジャン=ポール・ゴルチエのアシスタントを経て、’88年に「メゾン・マルタン・マルジェラ」を立ち上げ、パリコレクションでデビューした。以来、常に時代の美的価値に挑戦し、型破りでエレガントなスタイルによって輝かしいキャリアを築いた。だが、’08年に51歳で突然引退を決意する。そのとき、彼の心のうちにはどんな思いがあったのか?
公の場には姿を見せず、撮影や対面インタビューにも一切応じないマルジェラの信頼を勝ち得たのは、ドキュメンタリー映画『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』のライナー・ホルツェマー。この映画のために初めて公開するドローイングや膨大なメモ、プライベートな記録の数々を振り返りながら、インスピレーションや創造性、仕事術をマルジェラ自身が語る様子をカメラに収めた。その映像世界は、とてつもなく謎めいていて顔が見えない人物が、世界に向けて自分の頭の中を解説しているかのような、不思議な感覚に満ちている。
映画にはゴルチエやファッション評論家らも登場してマルジェラについて語るが、本人が語る“マルタン・マルジェラ”ほど貴重なものはない。彼のファッションと人生哲学に触れるとき、いつも見えている世界がほんの少し違って見えるかもしれない。
監督・脚本・撮影/ライナー・ホルツェマー
出演/マルタン・マルジェラ(声の出演)
公開/ホワイトシネクイントほかにて9/17より
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