海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、おすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、魚類学者でタレントのさかなクンの半生を描いた『さかなのこ』をご紹介。自らの“好き”を追求し続けているさかなクンの物語は「わが道をいくべし!」と力強く背中を押してくれるはず。
![『さかなのこ』9月1日(木)より、TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/09/09c9d7e8-eed7-4ad3-b05e-4f87e98c4760.jpg)
©2022 「さかなのこ」製作委員会
『さかなのこ』
子どもから大人まで、みんなきっと、さかなクンのことが大好きだと思う。魚の生態から料理法まで知識が広く深くて、さすがだなあと思わせるのはもちろんのこと、「お魚さんが大好き!」という揺るぎない思い、情熱が見る人の心に響くから。ひとつのことに打ち込んでいる人の姿を見るのは、いつだって気分がいいものだ。
“好き”が高じて、現在は東京海洋大学名誉博士で客員教授。海洋に関する研究ほか数々の功績を誇るさかなクンは、親しみやすいけどすごい人。そんな彼の自伝的エッセイ、『さかなクンの一魚一会〜まいにち夢中な人生!〜』をもとにしたのが『さかなのこ』だ。監督&共同脚本は、青春映画の傑作『横道世之介』以来となる沖田修一&前田司郎の黄金コンビ。さかなクンを演じるのはのんである。
え、のん?と頭に疑問が浮かぶかもしれないが、映画を観れば納得! これはさかなクンであって、さかなクンだけの物語ではないのだ。才能にあふれ、好きなことに対してまっすぐだからこそ嫉妬されたり、理解を得られずに孤独を感じている。そんな世の中のすべての“さかなクン”たちにエールを送る作品なのだ。
タコに魅せられた子ども時代から、母・ミチコ(井川遥)を最大の理解者とし、ミー坊(のん)は魚博士への独自の道を歩み始める。そんななか、ひょんなことから幼なじみの“狂犬”ことヒヨ(柳楽優弥)、総長(磯村勇斗)、“カミソリ籾”(岡山天音)ら濃いメンツの不良たちに、ミー坊は海でとれたてのアオリイカをさばいてふるまい、一気に距離が縮まる。不良たちが、うめえうめえとアオリイカを食べるうちに、壁が取っ払われていく感じが、すごくいい。
高校卒業後のミー坊の人生も迷走する。お魚愛だけでは、社会人としては厳しいものがある。はたから見れば、いい加減大人になりなよ……としか言いようのない20代。劇中でも、半笑いでミー坊に接する“真っ当な社会人”もいるけれど、悪意に受け取らず、自分を変えることなく、好きを貫き通す。そんなミー坊が、とてつもなくかっこいいのだ。
のびのびとして自然体でユーモラス。同時に、不器用なまでの一本気を伝えるきまじめさ、常に真摯にお魚と向き合うミー坊は、映画や演技、さまざまなアートに取り組むのんに重なるものも。また、時間は短いが、さかなクンも重要な役で映画初出演。魚類監修のほか、題字の執筆から自らの登場シーンでのバスクラリネットの演奏など、多才なところを見せている。自らの“好き”を追求し続けるのん&さかなクンの物語は、「わが道をいくべし!」と力強く背中を押してくれるはず。
監督・脚本/沖田修一
出演/のん、柳楽優弥、夏帆、磯村勇斗、井川遥
公開/9月1日(木)より、TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開
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![『秘密の森の、その向こう』9月23日(金)より、ヒューマントラストシネ マ有楽町ほか全国順次公開](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/33/33d0a3b1-46ed-4cb9-afd9-7e632059a2d2.jpg)
© 2021 Lilies Films / France 3 Cinéma
『秘密の森の、その向こう』
8歳の少女ネリーと、母と同じ名前を名乗る少女マリオン。森で出会った二人の交流を通して、静かに生と死を見つめた物語が、詩的な映像とともにつづられる。『燃ゆる女の肖像』のシアマの感性が光る。
監督・脚本/セリーヌ・シアマ
出演/ジョセフィーヌ・サンス、ガブリエル・サンス
公開/9月23日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
![『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』9月30日(金)より、全国公開](https://img-baila.hpplus.jp/common/large/image/d7/d72c1663-6766-4ac2-88b7-43b8a8f2758d.jpg)
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『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』
英国貴族の屋敷を舞台にした大ヒットドラマの映画版第2弾。1928年、ハリウッドからやってきた映画撮影隊と、南フランスの別荘での人間模様がドラマチックに展開する。ゴージャス気分を満喫!
監督/サイモン・カーティス
出演/ヒュー・ボネヴィル、エリザベス・マクガヴァン
公開/9月30日(金)より、全国公開
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2022年10月号掲載