海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、おすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、余命宣告を受けた親友と旅をする珠玉の青春ストーリー『プアン/友だちと呼ばせて』をご紹介。永遠のプアン(友)でいるために明かされた秘密とは?
©2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
『プアン/友だちと呼ばせて』
カーステレオから流れる、エルトン・ジョンやフランク・シナトラ、ザ・ローリング・ストーンズといった懐かしい曲の数々。バカンスムードが感じられる、タイの異国の風景を楽しみながら、訳ありの親友同士が車を走らせる。もう、このシチュエーションだけでノスタルジーと旅気分が楽しめて、とても夏向き!
ニューヨークでバーを経営するボスは、久々に故郷タイにいる親友ウードから連絡を受ける。白血病で余命宣告を受けたウードは、元カノたちを訪れて返したいものがあるから、運転手をしてくれと依頼する。
ウードの亡き父親の形見のBMWに乗り込み、元カノを一人ずつ訪ねていくが、これがなかなかどうしてしょっぱい。ひどい別れ方をした相手も多く、病気を隠しているウードに、いまさら何をしに来たんだと思う女性の気持ちもわかる。でも、どこかユーモアが漂う二人の旅は、ゆったりしていて心地よい。
男同士の友情もいいもんだよなあ、などと感傷に浸っていると、実はもうひとつの物語が待っている。ボスとウードのニューヨークでの出会いをめぐるエピソード、そしてある一人の女性の存在。それこそが、ウードが疎遠になっていたボスと最期に会いたかった本当の理由だったのだ。
ドラマのテンションが変わる中盤からは、怒濤の展開。前半からは想像もつかない友情と愛の物語は、深いところまで突き刺さってくる。ニューヨークでともに過ごした青春時代の甘酸っぱい記憶と、すれ違い、そして衝撃の告白……。人生で後悔がない人なんていないと思うが、二人の友情は、一体どんな結末を迎えるのか?
主演は、ともにモデルとして活躍しているタイ出身の人気俳優、トー・タナポップとアイス・ナッタラット。トーとアイスの正反対の個性を反映したボスとウードのケミストリーは抜群で、だからこそより感情移入してしまう。
本作のために作られたエンディングテーマ曲「Nobody Knows」が、エッセンスを物語っている。人生は何が起きるか誰にもわからないし、過ちを犯すかもしれない。それでも世界は輝いていて、私たちは素晴らしい時を生きている。映画を観た人なら、こうした歌詞の意味が身にしみるに違いない。そして曲を聴きながら、ただただ純粋で胸狂おしくなるような“愛”を感じて、涙にくれてしまうのだ。
監督は、近年注目を集めるタイの俊英で『バッド・ジーニアス危険な天才たち』のバズ・プーンピリヤ。『花様年華』のウォン・カーワイがその才能に惚れ込み、本作でタッグが実現した。
監督/バズ・プーンピリヤ
出演/トー・タナポップ、アイス・ナッタラット
公開/8月5日(金)より、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
こちらも必見!
© 2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED
『セイント・フランシス』
夏の短期の子守りの仕事に就く、34歳独身のブリジット。6歳の少女とその両親のレズビアンカップルと出会い、冴えない人生に変化が生じていく。脚本・主演のオサリヴァンの自然体の魅力が光る!
監督/アレックス・トンプソン
出演/ケリー・オサリヴァン、ラモーナ・エディス・ウィリアムズ
公開/8月19日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
© 2021 Swan Song Film LLC
『スワンソング』
元ヘアメイクドレッサーで老人ホームにいるゲイのパット。わだかまりのあった親友リタに、死化粧を施すために旅に出る。個性派俳優キアーの、魂の演技に目がくぎづけ!衣装や音楽も粋で楽しい。
監督/トッド・スティーブンス
出演/ウド・キアー、ジェニファー・クーリッジ
公開/8月26日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2022年9月号掲載