漫画を愛するライター・中川 薫がバイラ女子におすすめの漫画をピックアップ! 今回は、米国育ちの少年・オンが料理上手な兄とおくる、不思議でおいしいスローライフ『天狗の台所』をご紹介します。
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中川 薫
漫画・お酒・旅好きのライター。水キムチのお取り寄せに夢中。3週間ほど寝かせるのがお気に入り。
©田中相/講談社
天狗には「14の歳は人目につかず生きよ」というしきたりがあるという。自らが天狗の末裔であると知らされたアメリカ在住のオンは、隠遁生活を営むため、兄・基(もとい、29歳)を頼って日本へ渡る。畑と木々に囲まれた古民家での“東京暮らし”に肩透かしを食らいつつ、オンは持ち前の明るさで野良仕事をこなす。
料理上手で物静かな基がリードする二人の暮らしはシンプル。料理は広い土間にある薪タイプのかまどで作り、食べるものはほぼ自給自足。都会っ子のオンは嬉々として種まきをし、稲を刈って喜ぶ。ある日、基はキャラメルクルミをこしらえる。買えば一瞬だが、クルミを採集するところから作ると3週間かかる。その3週間が「楽しい」のだと。
手間と時間をかけて日常生活そのものと向き合うことと、ただ惰性でこなすこと。得るものが多いのはどちらか、一目瞭然だ。天狗の兄弟が教えてくれる丁寧で美味しい生活には、読み手の生活を豊かにする“神通力”が込められているのかも。
『天狗の台所』
田中相著 9月22日発売
講談社 1巻~ 781円
自分が「天狗の末裔」だと知らされた米国在住のオンは、一族のしきたりで14歳の1年間、日本で兄・基と暮らすことに。豊かな自然とともに過ごす兄弟の日常物語。
※カバーデザインは変わることがあります
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※カバーデサインは変わることがあります
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2022年10月号掲載