ドラマ「First Love 初恋」で、佐藤健さん扮する並木晴道の若き日を演じ、一躍注目を集めた木戸大聖くん。知られざるルーツと、野心あふれるこれからについて。
「『First Love 初恋』の晴道役を通して、やっと自分を発見してもらえた」
昨年11月に配信がスタートすると、またたく間に視聴者を沼落ちさせた「First Love 初恋」。
「“木戸大聖”を発見してもらえた」そう本人が表現するように、満島ひかりさん、佐藤健さん、八木莉可子さんといった知名度のある共演者の中で、無色透明の彼の存在はことさらに輝いていた。ヒロインの也英を思い続ける一途さと無鉄砲さとけなげさ、破壊力抜群の笑顔……。少年時代の主人公・晴道の魅力はそのまま、演じた木戸大聖さんへの興味と人気に火をつけた。
「配信前はインスタのフォロワーが1万3000人だったのに、今では28万人に急増していて。目に見えて反響の大きさを実感できたことはすごく嬉しかったです。作品としてキーとなる役をもらえたのは今回が初めて。これまでは堂々と代表作を挙げられない悔しさがあったけど、自信を持って『代表作です!』と言える作品ができました」
現在26歳。キャリアは意外に長く、事務所に所属して約6年となる。さらにその前の高校3年生からは、演技レッスンに通う日々を送っていた。
「親との約束で大学に進学をしましたが、ほかの職業に就く気はまったくなく。とはいえ事務所のレッスンでもなかなか認めてもらえず、気づいたら2年がたっていました。ついに同級生たちの就職活動も始まり『うわー、どうしよう』って、かなり焦りましたね」
そんな時期に社長から言われた言葉は、今も悔しさとともに残っている。
「『お前、もう厳しいぞ』って言われたんです。2年レッスンに通ってオチがこれか……と、かなり落ち込みました」
実はこのとき、裏では事務所への所属が決まっていたそうで、社長からの愛のある言葉だったことがうかがえる。後に所属を聞かされた木戸さんの心には、「社長を見返す!」という、さらなる目標に火がつくことになった。
「人見知りだったくせに、子どもの頃からお遊戯会で真ん中に立ちたい、目立ちたいという気持ちが強くて(笑)。音楽発表会でも、大勢で演奏する楽器が嫌で、大太鼓をたたいてました。
役者になる夢を抱いたのは、ドラマ好きの母の影響。木村拓哉さんのようにテレビの世界に入りたいと思ったんです。だって、テレビに出たら『すごい』って思われるじゃないですか。おばあちゃんが朝ドラ好きなので、いつか自分が出たら喜ぶだろうな、と思ったり。どれだけ悔しい思いをしてもあきらめなかったのは、根底にある“目立ちたいマインド”が原動力だった気がします」
目立ちたいマインドと悔しかった思い出が原動力
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Q 友達からどんな性格って言われる?
A 何事にも全力。無我夢中
好きなことに情熱的になりすぎて周りが見えなくなるし、かなりの負けず嫌い。最近、撮影現場でもその性格が発動されました。監督が共演者の方に対して、「その芝居、面白いね」と褒めていて。「あー、くそー!」って、めちゃくちゃ悔しかった(笑)。
Q 昔から変わらずずっと好きなものは?
A 『ONE PIECE』
フィギュアを集めていて、実家にあるものを合わせると40〜50体はあります。好きなキャラクターはエース。ガチのファンです。ちなみに漫画は単行本で読む派なので『週刊少年ジャンプ』派の方はくれぐれもネタバレのないようにお願いしたいです(笑)。
Q 最近好きになったものは?
A ゴルフとサウナ
ゴルフは数年前からの趣味ですが、最近は月2回行くくらいサウナ好きに。去年、「日立世界ふしぎ発見!」のロケで北極点を目指すクルーズ船に乗船させてもらったときに、船内にサウナがついていて。毎日のように入っていたら、ハマっちゃいました。
Q 好きなフレーバーは?
A SHIROのホワイトリリー
ここ数年で気づいたんですけど、僕、人より鼻がいいみたいで。周りが感じないにおいも敏感にかぎ取っちゃうので、苦手なにおいもあるんです。でもホワイトリリーはすごく上品で爽やかだし、香りが“ザ・香水”みたいにキツくないのも気に入っています。
Q 元気が出る食べ物は?
A 焼き肉!
好きな食べ物はほかにもいっぱいあるけれど、元気が出るのはやっぱり焼き肉です! 特に行きつけやお気に入りのお店があるわけではなく、もう、焼き肉が食べられるならどこでも嬉しいです(笑)。好きな部位は、ハラミと牛タン。タレよりも塩でいきたいタイプです。
Q 一人○○はできるタイプ?
A 一人旅にも行きます
高校生の夏休みに、青春18きっぷを使って初めて一人で東北を巡る旅をしました。人見知りだった僕にとって、感受性を磨く度胸試しのような旅。定食屋のご夫婦に優しくしてもらったり、震災の爪痕が残る景色を目にしたり……今でも強烈に思い出に残っています。
Q これだけは負けない特技は?
A “くしゃみ”の演技
大胆にするパターンや出そうで出ないパターン、いろんなバリエーションができます。特徴的なくしゃみをする親戚のことを、小さい頃から真似していたおかげかも!? 特に練習したことはないけど、役者になってから謎にクオリティを評価されるようになりました。
Q どんな30歳になりたい?
A 同性から見てかっこいい人
会話にクレバーさが感じられたり、スマートに行動できる人が理想。かっこいいと思うのは、お店の予約とかみんなのスケジュール調整とか、面倒くさいと思うことを「いいよ、俺やるよ」とさらっと言える人。今の僕は……甘えちゃってます(笑)。
Q 家族構成は?
A 父、母、3歳下の妹
母親は争いを好まない温厚な人で、僕の負けず嫌いは父親から受け継いでいます。妹は子どもの頃からCAになる夢を持っていて。コロナ禍で採用がなく一度は別の職種に就職しましたが、僕が「First Love 初恋」の撮影中に再度挑戦して夢をかなえました。
Q 言われて嬉しいことは?
A 「若く見える」も嬉しく感じるようになりました
昔はそう言われることが嫌だったんです。でも今は若く見えることも自分の個性だし、役者としての武器にしたいと思っています。ほかに言われて嬉しいのは「同じこと思ってた!」みたいな、共感の言葉。単純だけど、「一緒にいると楽しい」も嬉しいです。
母親や祖母など、身近な人から届いた嬉しい言葉
「First Love 初恋」の影響 は、木戸さんの身近なところにも。
「母は今まで、僕が出演する作品が観られなかったらしいんです。多分、こっぱずかしかったんでしょうね。でも『First Love 初恋』はさすがに観てくれて、『息子が出てると思わないくらい入り込めた』と言ってくれました。その感想はすごく嬉しかったです。離れて暮らすおばあちゃんも、近くに単身赴任をしている父親のiPadを使って、観てくれたみたいです」
厳しかった事務所の社長も、ようやく評価してくれるようになったとか。
「ただし、『(同じ事務所の先輩の)小栗旬は、このレベルのヒットを100発打った』と言われました。本当にその通り。役者の道を歩む上で、小栗さんは、“こうなりたい”と思わせてくれる存在。僕もこの一作で終わるつもりはないし、おばあちゃんが元気なうちに、いつか朝ドラにも出たいです」
ちなみに、今いちばん欲しいものは、「絶対に病気にならない能力」。
「役者の仕事をしている以上、見てもらうことが何よりも大事だと思っていて。自分を含め、おばあちゃんや家族、応援してくれる人全員に健康でいてほしいんです。そしてこれからもずっと、僕のことを見てもらいたいと思います」
「この一作で終わるつもりはない。これからもずっと、見てもらえる役者でいたい」
ジャケット¥33000/ビームス 原宿(ビームス) 靴¥25300/クラークス ジャパン(クラークス オリジナルズ) その他/スタイリスト私物
Netflixシリーズ「First Love 初恋」
出演/満島ひかり、佐藤健、八木莉可子、木戸大聖ほか
監督/寒竹ゆり
Netflixにて独占配信中
1990年代後半の北海道。高校生の也英(八木莉可子)とクラスメイトの晴道(木戸大聖)は恋に落ちる。ところが大学生になった也英にある悲劇が起こり、二人は別々の道を歩むことに……。宇多田ヒカルの楽曲にインスパイアされて制作された。
木戸大聖
きど たいせい●1996年12月10日生まれ、福岡県出身。2017年から芸能活動を開始。主な出演作は教育エンターテインメント番組「おとうさんといっしょ」、映画『大怪獣のあとしまつ』ドラマ「First Love 初恋」など。
撮影/田形千紘 ヘア&メイク/松岡奈央子 スタイリスト/井田正明 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2023年5月号掲載