大政絢がバイラモデルを卒業! バイラで共に過ごした約7年半は彼女にとってどんな時間だったのだろうか。その歩みを振り返ることで見えてきた、大政絢の今とこれから――。
「昔は“まじめ”と言われるのがすごくイヤだったんです。“つまらない人”や“面白くない人”と思われているような気がして。実は今もその気持ちが若干残っていて。周りの人の若い頃の武勇伝を聞くとついつい思ってしまうんですよ。いいな、うらやましいなって」
仕事と真摯に向き合う彼女は心身を整えるため24時前に就寝。夜の街で遊び歩くどころか、今までクラブに行ったことすら一度もない。泥酔することもめったにないからこそ、友達と飲みに行くときはいつも介抱役に。大政絢という人を表現するときに多くの人が口にするのが“まじめ”というキーワードだ。しかし、当の本人から飛び出したのは冒頭のこの言葉だった。
「本当は面倒くさがりだしダラーンとするのも大好きなんです。でも、それをやらないのはゆるむとどこまでもゆるんでしまう自分を知っているから。ストイックな印象を持たれることも多いけど、それはあくまでも“好きだから”やっているだけで。興味のないことは全然続かないし、そもそもやろうという気持ちすら生まれない、“0か100か”の偏った性格なんです。料理をするのは大好きだけど、お菓子作りは苦手。分量を細かく計るのが無理!ってすぐにあきらめましたからね(笑)」
25歳、ひとつの節目を目前に進化や変化を求めていた
基本的にポジティブで心のモヤモヤはひと晩寝たら忘れるタイプ。だからこそ、撮影現場にはいつも明るい笑顔で登場。絢ちゃんのハッピーオーラにバイラスタッフは癒されていました。
「ポジティブな反面、物事をまじめにとらえてしまいがちなので、悩み迷うこともよくあるんです。それこそ、バイラに初めて登場した頃は自分の進む道を模索していたような気がします。それまでは、舞い込んだお仕事にガムシャラに取り組み、モデルや女優やバラエティ番組といろんなことをやらせていただけるように。それはとてもありがたいことでしたが、自分には何が向いているのか、このままでいいのか、悩むようにもなって。今思うと25歳という節目を目前に“変わりたい”“ステップアップしたい”気持ちが高まっていたんでしょうね。だからこそ、バイラという新しい場所で新しい自分に出会えたことがすごく嬉しかったんですよ」
同じ場所で停滞するのは苦手で「この日までに」と目標を立て自分を追い込むのが好き。その先に新しい自分が待っているのを知っているから。現状に満足せずに進化し続ける、絢ちゃんは“ステップアップの鬼”でもある。
「私の中には常に“もっと成長しなきゃ”っていうほどよい緊張感があって……。それはそうしないと求められない現実を知っているからなんだと思う。今まで数え切れないほどのオーディションを受けては落ちたり、なかには夢をかなえることなくやめていく仲間もいたりして。14歳でこの世界に飛び込み、仕事を続けるなかで私が痛感したのが“いくらでも代わりはいる”ということでした。用意された椅子に一度はラッキーで座れても、また座れるとは限らない。周りから求められる人だけが選ばれる世界で、求められ続けるためには自分自身もちゃんと進化していかなきゃいけないんですよね」
32歳、今は自分らしくさらに自由になれました
「バイラスタッフの皆さんは私のことを“ハッピーオーラの持ち主”と言ってくださるけど、実は、自分らしく自由になれたのは最近の話なんです。それこそ、昔は自分の大人びた顔がコンプレックスで。クールな顔をするとより大人びてしまうから、10代の頃は「もっと笑って! 可愛くして!」と言われ続けていたんですよね。でも、バイラでは等身大の自分でカメラの前に立てるようになった。嬉しかったな」
過去には“自分らしさ”より“周りと同じ”を大事にしてしまった時期も。
「たとえば、誰かが悪口や愚痴を言い始めると、自分も何か言わなきゃいけないのかなと。無理やりにでも探して言ってみたりして。でも、それを口にしたら最後、“なんて失礼なことを言ってしまったんだ!”と自己嫌悪。そんな自分がイヤで、周りに流されずに自分らしくいたくて、どんなときも自分が心地よく思えるハッピーな言葉を口にしようと心がけるようになったんです」
仕事のためだけでなく自分の人生もちゃんと生きたい
自分らしく自由になれたのはそんな過去の経験があってこそなのだが、実は彼女を変えたいちばんのきっかけは結婚。「彼との出会いはとても大きかった」と照れくさそうに笑う。
「振り返ると、結婚する前の私はすごく狭い世界で生きていたというか。それこそまじめになったのもこの世界に入ってからで。周りの大人たちが14歳だった私を心配して“あれはダメ”“これはダメ”と助言。それを私が素直に大人になっても守り続けてしまったからだと思うんです。結果、仕事ではいろんな経験ができたけど、プライベートは未経験だらけ。以前はそれがコンプレックスで、知らない世界に対しても、人に対しても壁を作りがちだったんです」
そんな絢ちゃんの壁をぶち壊してくれたのが旦那さんだった。
「私が当たり前だと思っていることに“どうして?”と疑問を投げかけ、“こういう考え方もあるんだよ”と新しい気づきを届けてくれる。彼と過ごす日々は私の価値観が覆るような出来事の連続で。それが狭かった私の世界をぐんと広げてくれたんです」
結婚後は仕事に対する考え方も大きく変わったそうだ。
「それまでは仕事のために生きていたと言っても過言ではないくらい、私の人生の優先順位の一位にずっと仕事があったんです。でも、ある日、彼から聞かれたんですよね。“なんのためにやっているの?”って。そんなことを聞かれたのは初めての経験で。その答えを探すなかでふと気づいたんです。私は不安だから走り続けてきたのかもしれないなって。私がいるのは、常に比べられるし、いくらでも代わりがいる世界。だからこそ、手をゆるめたり休んだりしたら自分の居場所がなくなってしまうんじゃないかって……。この仕事が好きだからこそ、私はそれを怖がっていたのかもしれないなって」
抱えていた不安を手放すことで「仕事のためだけでなく、自分の人生もちゃんと生きてあげたい」と思えるようになった。バイラの卒業を決意したのもそんな心境の変化があったから。
「最近はもっと自由に流れに身を任せてもいいのかなって、大好きな目標もあまり掲げなくなりました。まじめな性格だからこそ、ずっと失敗するのが怖かった。でも、今は転んでも支えてくれる人が隣にいるし、そこからはまたきっと違う景色が見えるはず……。これからは“仕事”だけでなく“人生”でもたくさんの経験を積んでいけたらいいなと思っています!」
ドレス¥680900/ザ・ロウ・ジャパン(ザ・ロウ)
撮影/生田昌士〈hannah〉 ヘア&メイク/河嶋 希〈io〉 スタイリスト/佐藤佳菜子 取材・原文/石井美輪 ※BAILA2023年12月号掲載